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日本映画監督協会 会員名鑑

山形国際ドキュメタリー映画祭 日本映画監督協会賞レポート

シンポジウムレポート

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シンポジウムレポート第1弾

『Cut! 映画監督って何だ!』vs『RiP! リミックス宣言』

成田 裕介 

narita.JPG いつのころからか判らないが、映画祭というものに興味がなくなっていた。おそらく、助監督のころに関わった某監督の影響かもしれない。
 某監督は、映画祭に出品することを映画作りの目的としていた感があった。
 それもひとつの選択肢なのだろうが、何か違う気がしていた。

 ご存知の通り、山形国際ドキュメンタリー映画祭は隔年の開催で、今年で11回目をむかえる。今や、国際的に名の通った権威のある映画祭に成長した。ヴィジョンのないどこかの名前ばかりの国際映画祭とは一線を画している。そして今年の開催から、我が日本映画監督協会賞が正式に創設された。国際委員会が主体となって映画祭事務局・監督協会理事会双方と折衝を重ね実現したことだ。映画人との国際的な交流がテーマである。
 監督協会賞は審査委員長が恩地日出夫さん。他に審査員として根岸吉太郎国際委員長、金子修介さん、山崎博子さん、ジャン・ユンカーマンさんらで審査される。それに世話人ともいうべき斉藤信幸さんといった面々で行われる。
 そして今回は70周年記念映画『映画監督って何だ!』の字幕版『Cut!』の上映も企画されている。

 2か月ほど前の理事会。映画上映の終了後、シンポジウムの企画が国際委員会から提案され、了承された。ついてはパネリストとして主演俳優?である自分に御鉢が回ってきたというのが、ことの始まりである。今回の映画祭でコンペにエントリーしている作品に『RiP! リミックス宣言』ブレット・ゲイラー監督作品があった。著作権をテーマに扱った作品とのこと。ついては、シンポでゲイラー監督とバトルトークをというのが狙いらしい。題して「著作権とは、オリジナリティとは何か」。いつも通り渋っていた自分を、有無を言わせぬ説得力で根岸委員長が後押しした。「成田、お前でいいんだ!」。かくして、監督協会からは自分と梶間著作権委員長、司会者にジャン・ユンカーマンさんという陣容である。事前に『RiP! リミックス宣言』の字幕版DVDを渡され、お勉強と相成った。

 『RiP! リミックス宣言』は非常にラジカルな映画である。
 導入こそ音楽をサンプリング・アレンジして出来た音楽?は新しい音楽であるとの主張?らしいが、次第にそれはエスカレートし著作権や知的財産権が新しい文化創造の妨害となっている、ということらしい。ともかく、聞き慣れない言葉が多過ぎる。Mash Up・Remix・Culture Jamming・Copy Left・Digital Rights Management・Creative Commons ETC。要はあらゆるコンテンツ(もちろん映画も含む)をパブリックドメインとして開放せよとの主張?なのだ。とんでもない野郎である。敵としては申し分ないが、果たしてどこまで突っ込めるのだろうか、時間も限られている。

 ということで、当日。
  『RiP! リミックス宣言』のスクリーニングがスタートした。入りは若い観客を中心で満席に近い。壇上のゲイラー監督は、盛んに悪ガキ風に観客を挑発する。まるでライブ会場。観客の反応は上々である。やはり、若い観客はノリに弱い。観客を味方につけるとは、なかなかである。
 上映終了後、顔合わせ。ゲイラー監督、思ったよりも下手に出てくる。曲者である。梶間さん、さながらゲートイン前の競走馬の如くである。
 入れ込む我々に向い、同時通訳の女史が一言。
 「早口はダメ、難しい言葉・専門用語もダメです!」とのこと。
 かくして我が『映画監督って何だ!(Cut!)』のスクリーニングが始まった。何しろ、キャパが1200名の大ホール。入りは250名といったところ。着席状況が分散しているので、数字よりは入っている印象。上映後の反応はマァマァといったところか。シンポで挽回せねばなるまい。
 そしていよいよ本番のゲートイン。各々、ユンカーマンさんの紹介で登壇。冒頭はゲイラー監督自身による『RiP! リミックス宣言』の紹介と挨拶。ここまで、10分ほど。
 次いで、梶間さんの自己紹介と思いきや、いきなりの本題突入である。予想していたこととは言え、まるでフルスロットル全開のロケットスタート。観客はいきなりの怒涛の展開にしばし呆然の状態。話の内容についていけてない様子。
 それでも意に解さず梶間さんは語る。
「あなたの映画のパブリックドメインというとらえ方はね・・・・・」
(ここは著作権委員会でも監督協会理事会でもないのだが・・・)
梶間さん、身振り手振りで熱く語る。
「そもそも、著作権というのは財産権とね・・・・・・・・」
(通訳さんの言葉はどこ吹く風。もう止められないだろう)
梶間さん、ひたすら語る。
「僕が気になった点はね、つまりコピーレフトの思想はね・・・・」
(会場内で困惑気味の表情の根岸委員長、恩地さんらの顔が見える)
梶間さん、またまた語る。
「それでね、ゲイラーさん。あなたの言うC・Cという考え方はね・・・」
(会場内は水を打ったように静まりかえっている)
梶間さん、とにかく語る。
「それでね、次に訊きたいのは・・・・・・・」
「梶間さん、あの・・・・」
「成田クン、まだ終わってない」

 こんな問答があってようやく自分に御鉢が回ってきたのが、予定時間も半分を過ぎたころであった。本質論のバトルは大事だが、会場も大事。主役?として『映画監督って何だ!』の紹介をひとくさり。一応、ゲストであるゲイラー監督を少し持ち上げたりもして(何せアウェイである)ようやく本題と思いきや、司会のユンカーマンさん、「ここで、時間なので、会場からの質問」とのこと。いきなり、手を挙げた会場奥に座っていた金子修介さん。「RiPは観るに値しない作品である。ディズニー批判は賛成だが、作品を切り刻まれる立場になってみろ!」。俄然、空気は緊迫度を増したのは言うまでもない。ゲイラー監督、うろたえながら反論しながらも、生憎時間切れで、後ほど、会場を移しての議論にとなった次第である。
 最後に崔理事長、困惑しながらも「新しい時代に入ったことを実感した」と双方噛み合わない議論に終止符を打ったのである。うまくまとめたものである。

 タクシーで行くほどの距離ではないのだが、理事長主催の飲み会を「ふくろ」という店で行うとのこと。なかなか現れないメンバーを待っていると、学生引率と応援で駆けつけた山本起也さんから電話が入った。「そちらにはいけないかも」とのことである。受話器の向こうで理事長の怒鳴り声が聞こえる。誰かと揉めているようである。急遽、タクシーをそちらへ回し、おっとり刀で駆けつけるも時既に遅し、騒動は収まっていた。どうも、若い観客が金子さんに議論を吹っ掛け、それを見かねた理事長が参入し、キレたらしい。騒動は観客たちの見守る中だった。監督協会は道を極めた人たちの集団と誤解を受けなければ良いものだが・・・

 場所を移しての「ふくろ」では何と、大変和気あいあいの雰囲気。何てこったい。シンポが始まる入れ込みようは何だったのだろう。
 そもそも、前提になるものが北米と日本ではかなり違うのではないだろうか。映画そのものに言及すると話が長くなるので割愛させていただくが、ゲイラー監督自身、この映画の著作権は保有してないそうだ。そして、Fare Use(公正使用)という名目で使用された音楽・映像以外は、過激な内容とは裏腹に全て使用許可を取っているそうだ。語り口は過激だが、どうもその辺が内容とかけ離れている気がする。5年ほど前に、『華氏911』で話題になったマイケル・ムーアのような突撃取材があるわけでもない。マイケル・ムーアはいくつかの訴訟を抱えながら問題提起の映画を製作していると聞いているが、ゲイラー監督はどうなんだろう。彼にそのことを訊くのを失念した。
 かくして、北国山形の夜は熱く静かに更けていった。

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(「日本映画監督協会会報 2009.11. No.634号)より転載)