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特集

日本映画監督協会 会員名鑑

あなたの台本見せてください

山田洋次監督 『学校IV』

    『あなたの台本見せてください』

 

           <山田洋次監督篇>

 

 

山田洋次監督がこの企画のために持って来てくださったのは「学校Ⅳ」の台本。

 

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       2000年の作品 『十五才 学校Ⅳ』」として公開」

 

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山田『いや、「清兵衛」持って来ようと思ったら倉庫の方にしまっちゃってたんだよね』

 

...山田監督くらいになると、台本用の大きな倉庫でもお持ちなんだろうか...

でもやはり撮影台本が公開されるというのは気になるらしくさっそく台本を開いてご自分で添削を始めてしまう...あの、そのままがいいんですけど...

 

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         「台本を取り出して添削を始めてしまう...」

 

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          「今回の取材用の付箋が貼ってある」

 

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     「ほとんどの作品に監督自身が共同脚本として名を連ねている

      朝間さんとのコンビは有名だ」

 

 

山田『そうだね、なんか朝間さんと二人同じ部屋で、睨みあうようにしてシナリオつ

   くってきた...』

 

じゃ早速、シーン1から撮らせてください。

 

山田『ちょっと待って。汚い字だなぁ...こいつなんだって思われちゃうよ...

   まぁいいか』

 

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                 「トップシーン」

 

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         「シーン1に鉛筆で書き込まれてあるメモ...」

 

 

何を書かれてるんですか?

 

山田『何だろこれ...ああ、撮りながらナレーションを増やそうと思ったんですね

   で、現場でそれを考えながらぐちゃぐちゃとメモした。...恥ずかしいよこれ

   (笑)人に見せるもんじゃない。やっぱりね』

 

 

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    「人物やカメラの動きなどの細かな指定などはほとんどない」

 

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  「号外(貼り付けられている修正された稿)の上にも下にも、消しゴムと鉛筆で何度も書き直されたカット割りやセリフの直しが...」

 

 

山田『前の日にコンテを立てる、ある程度。勿論それだって現場で変わるし、あま

   り前もって決めない方がいいと思ったシーンはあらかじめ何も決めない。午

   前中はいつもリハーサルだからまず芝居をやってもらって現場で考える。そ

   れが基本じゃないかな。ワンカットでいこうと思ってても実際カメラでにらんで

   みるとそうはいかない場合もあるし、逆もある』

 

 

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山田『絵は基本的にリハーサルのときにキャメラマンに探させて僕は芝居が成立

   するかどうかを見てます。でも決まったアングルは面倒くさいけど必ず覗きま

   す。カメラにはパースペクティブとレンズってものがあるでしょ。自分の二つの

   目で見てるのと違う世界があるんだっていつも意識してないとね』

      

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山田『これくらいにしてもらおうかな(と、早くも台本をしまいかける)』

 

ちょ、ちょっと待ってください...

 

山田『混乱だからね、混乱の痕跡』

 

「山田洋次」ほどの監督でも「混乱」しますか?

 

山田『混乱しっぱなしですよね(笑)』

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     「この辺りも消しゴムの跡と繰り返されたセリフの書き直し」

 

 

山田『そうですよ、消しゴムは必要。しょっちゅうどのポケットにも消しゴムが入って

   る。大きい消しゴム切ったりしてね、現場に行くときにあっちこっちに入れとく

   (笑)消しゴムってたくさんあると嬉しいね。鉛筆も嬉しいけど。子どもの時の

   憧れがあるのかな、鉛筆一ダース貰ったりしたときの記憶とか...』

 

山田『現場でも変えていきますよ。リハーサル見てて特に語尾なんか何回も変え

   たり。文字であることと現場でその俳優が口にすることとは違う。生理みたい

   なものがあるよね。今の特に女の子は語尾を軽く言うことができないのね。

   語尾を強く発音しちゃう。言葉を重くするよね。ニュアンスが非常に少なくなっ

   てきてるでしょ。言葉のきれいな言い方ってあるわけだからさ、うん、きれい

   に話して欲しいな、みんな』

 

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だんだん台本どおりの「学校」みたいになってきました...

 

山田『演出とはどういうことかって木下順二さんの面白い言葉教えてあげようか...

   「何とも知れぬ雑用から芸術に至る様々な手続きを当たり前の前提としたう

   えで、役に生きている人間たちの総合を一つの自律自転する世界の創造に

   まで持っていくという至難の事業を演出と言う」...これは舞台の言葉だけど

   「役に生きている人間たち」の後に「と、創作に参加する大勢のスタッフの」っ

   て言い足すと映画のことになるだろ』

 

...はあ...

 

山田『雑用から芸術に至るまでの総合だよ、ほんと至難の業だよね。監督だって

   その辺掃除したりさ(笑)俳優のご機嫌とったり、そっから始まるじゃない

   (笑)』

 

「山田洋次」はご機嫌とったりしないでしょ?

 

山田『基本的にはガラス細工に触れるように扱うの。俳優は怒っちゃいけないとい

   うのが伊丹万作の言葉。誉めてやんなきゃ。何だって同じでしょ、子育てだっ

   て。...僕そこで失敗したって感じあるなぁ、文句ばっかり言って(笑)』

 

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          「台本の裏に書かれたサイン」

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シナリオってどういうものですか?

 

山田『シナリオというものの持つ意味...作品によって違うんじゃないかと思います。

   ある時期シナリオがない映画を撮りたくてね。七十年頃の「家族」とか「故郷」

   はショートストーリしかないんですよ。現場でセリフは考えようと。でもそれは

   ある「チーム」になってずーっと一ヵ月半も二ヶ月も一緒にいたから成立し

   た。そういう状況は必要でしょうね。「寅さん」みたいなものはそうはいかな

   い。「清兵衛」もそうですけど』

 

山田『若い人の書くものね、あまりにも細部に拘りすぎるシナリオが多すぎるね。ド

   ーンと柱を立ててガッチリ構造をつくるのがシナリオでしょ。柱がグラグラして

   るのに窓枠の素材に拘ってもね。大きな柱ができてれば後の部分はもうちょ

   っとアバウトじゃなきゃいけないはず。監督も役者も窮屈になっちゃうと思い

   ますよ。アバウトにしといて後はお前が考えろって監督に言えばいい』

 

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そいう若い人と組んでみたいっていうお考えはありませんか?

 

山田『若いライターと組んでみたいの、ほんとに。本当はそういう役割を担わなき

   ゃいけないし、そういう構造がなきゃいけない。撮影所という創造集団が今は

   消えちゃったからそういう場面が少ないのが問題でしょうね。若い人と組める

   機会を努力して作るようにします』

 

皆さん期待しましょう!

山田さん、ありがとうございました。

 

今回の山田さんも、DGJ(日本映画監督協会)のHPに皆さんが楽しく訪れて

くださるきっかけになれば、ということで快く台本を公開していただきました。

また、この企画をご理解くださいました『学校Ⅳ』の脚本家の朝間義隆さん、

平松恵美子さん、そして製作の松竹の皆様に感謝いたします。

 

         取材 / 石岡正人 日笠宣子 福岡芳穂  文責・福岡芳穂