
東京都青少年の健全な育成に関する条例改定案に反対するアピール
東京都議会が現在、審議中の「東京都青少年の健全な育成に関する条例改正案」は、多くの表現者や市民から、改正ではなく改悪であると、問題点を指摘され、6月までの継続審議となりました。
2003年に国会で審議され、廃案になった「青少年有害社会環境対策基本法案」の際にも、私たちは反対アピールで指摘しましたが、性にしても暴力にしても、時代や地域、宗教、風習の違い及び、表現行為の目的や性格によって、その表現の許容範囲は千差万別です。性と暴力に関する表現について、「何が有害か」を国や自治体などの公権力が規定し、表現行為に直接または、間接的に介入できるあらゆる法律・規定は、大きな危険を孕んでいます。戦前の日本において、公権力が様々な道徳観を押しつけ、隣組的な市民監視を推奨し、徐々に言論全体の統制や弾圧が拡大されたことへの反省からも、近代法制では「法と道徳の分離」が大原則です。
都の改定案では、図書類又は映画等で「年齢又は服装、所持品、学年、背景その他の人の年齢を想起させる事項の表示又は音声による描写から十八歳未満として表現されていると認識されるもの」を「非実在青少年」と定義し、性表現の規制条項を新設しています。こうした曖昧かつ恣意的判断の可能な条項は削除すべきです。「表示図書類に関する勧告等」の条項における、知事の権限拡大及び規制強化に対しても容認することはできません。
また、国会審議でも問題にされている現行の児童ポルノの定義の曖昧さと広範囲性(3号ポルノの定義では「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」とあり、写真集『Santa Fe(サンタフェ)』や映画『転校生』など様々な作品が該当すると指摘されています)が改められないまま、都が同様の曖昧な定義の条例で、児童ポルノ根絶のための様々な施策を行なうことは、拡大解釈を許し、大きな混乱を招くでしょう。
更に、インターネット利用の条項では「青少年がインターネットを利用して自己若しくは他人の尊厳を傷つけ、違法若しくは有害な行為を行ない、又は犯罪若しくは被害を誘発することを容易にする情報」という、定義のはなはだ曖昧な文言で、事業者や保護者に自粛や取り締まりの責務を負わせていますが、これは、表現規制のみならず、市民全体に対する規制と言わざるを得ません。
2004年の条例改定後、東京都は、青少年の問題を福祉的対応から、取締りを基本にした対応に変化させた(担当部署を生活文化局から新設の青少年・治安対策本部に移管した)との指摘もあり、今回の条例改定のもととなった協議会では、市民の傍聴を許さない会議や議事録の非公開、公開文書のスミ塗りなどの密室性も問題視されています。
現行の「不健全」図書指定の審議会に対しても、市民への全面公開や、指定の取り消し、異議申し立て手続きの整備を求める声があり、国連・子どもの権利条約に基づく「子どもの意見表明権の尊重」が、いまだ条例などに反映されていないとの指摘もあります。
以上の理由から、私たちは、審議中の「東京都青少年の健全な育成に関する条例改正案」に反対します。
そして、現行の条例の問題点も含めた抜本的な議論を強く求めます。
2010年6月4日
一般社団法人日本劇作家協会 社団法人日本劇団協議会 日本新劇製作者協会
協同組合日本脚本家連盟 社団法人日本照明家協会 日本舞台音響家協会
協同組合日本シナリオ作家協会 パシフィッククリエイターズ・PaCPA
日本舞台美術家協会 日本演劇教育連盟 協同組合日本映画監督協会
※引き続き、表現や言論の各団体にこのアピールへの賛同を広く呼びかけています。
2010年06月23日(水曜日)
|
||
|