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特集

日本映画監督協会 会員名鑑

にっぽん劇場(コヤ)めぐり

弐館目 青森シネマディクト編

2015年11月16日

この記事は、監督協会会報「映画監督」2015年8号からの転載です。

『青森 シネマディクト編』
                                                 高原秀和


 6月に『がむしゃら』で青森に行ってきた。青森での公開は一週間。主演の安川惡斗が青森出身なので、なんとしてもと思い、初日と日曜日に都合がつかなかったけど、最終日の金曜日、午後と夜の回で舞台挨拶をした。劇場は青森駅から歩いて10分。メインストリートから少し外れたところにあるシネマディクト。にっぽん劇場(コヤ)巡り第二弾は生まれた時から家が映画館の館長、谷田恵一さん(昭和36年生)にお話を伺いました。

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 「昭和29年にうちのじいさんが、蚊帳を売る商売をしていたんですけど、蚊帳が売れなくなって、現金商売で映画館がいい商売だぞというのが最初ですね。素人なんで、最初に映画館作ってしまって、さあ、どこの映画をやろうかなと思っていたら、青森市内だけで、22館も映画館があった時代で、どこも相手してもらえなくて。映画会社が相手してくれないんだったら、製造元に行けば何とかなるだろうと東映の大泉を訪ねていったら、当時の東撮の所長さんが旧制の弘前中学の出身で、青森からわざわざ来たのかとアポなしで会ってくれて。それじゃ、東映の二番、チャンバラやるかって。じいさんがやったのはそこまでで、親父に丸投げして、(前身の)奈良屋劇場を経営したっていうのがの始まりですね。小さい頃はお盆になると、新東宝の怪談映画とかの3本立てを必ずやるんですよ。住んでいるのが劇場で、劇場のトイレが共用でしたから、夜は懐中電灯持ってトイレに行くんだけど、怖くてそこまで行けなくて、窓開けて、オシッコとかしてました(笑)。東映の二番から始まったんですけど、五社全部の二番館でしたね。東北で一番はいる二番館と言われていたんですけど、だんだん斜陽になってきて、洋画のB級映画もやり出して、その後にピンクにいったというのが奈良屋劇場の歴史ですね」
 谷田さんが継ぐことになり、シネマディクトに名前を変えた。
 「長男の宿命と言いますか、(館長に)なろうと言うよりもなっちゃった(笑)。最初はUIPのメジャー映画の配給でしたね。全部メジャーというのも嫌だったんで、単館系の映画もやっていたんですが、現在のミニシアター系になったというのは、UIPが解散したのがきっかけですけど、もうメジャーはいいやって言うのが本音ですね」
 今の映画館の状況はどう捉えていますか?
 「今は昔と違って、なんか違う世界の商売。シネコンも映画で商売しているというのは同じなんでしょうけど、何よりも現場の人たちが映画を観てませんから」
 谷田さんにとって映画ってなんですか?
 「映画って言うのはスクリーンで観るものが映画であり、レンタルなどで観るのは映画みたいなものだと思うんですよね。あくまでもスクリーンで観るものが本物の映画という思いがあります。ビデオだと途中でやめたり、早送りできたりしますけど、そういう自由がきかないから楽しくなれる、面倒くさいものが映画になるっという感じですね」
 東京と地方の違いはどう感じてますか?
 「東京の人たち、大都市の人たちは、お金払って映画を観るというのが当たり前だと思うんですよ。だけど、地方に行けば行くほど、スクリーンで映画を観るって言うのがだんだん薄れてきちゃったっていうのがあるかもしれませんね」
 ウェブサイトを見たら、木曜日が定休日になってました。
 「動員も悪いし、夏は特に空調代もバカにならないので、経費削減で(笑)」
 普段の動員はどんな感じなんですか。
 「厳しいですよ。(各回)一桁一桁だもん。(興収)週30万いかなくなっちゃったような状態なので。消費税も上がって、震災以降は悪い方へ悪い方へ......」
 この時代にどういう形で映画を届けようと思っていますか?
 「映画館に来てもらっている人たちと話をしてると、何を観ていいかわからないという人が結構いるんですよね。それで映画教室というイベントを始めるんです。今回は『アリスのままで』をやりますけど、ジュリアン・ムーアという女優さんをきっかけにいろいろな作品を紹介できるじゃないですか。ただただ『アリスのままで』を紹介するのではなくて、話を脱線させながらも、広げて映画を紹介して、まずは興味を持ってもらうことが大切かなと思っています。今、どこの映画館でも宣伝をどうするか困っているんですよね。メディアで宣伝してもお客さんが来ない状況の中で、パーソナルにでも、一握りでいいから伝われば、変わるんじゃないかっていう思いで。7月から喫茶店も始めたのも同じなんですよ。街中そのものに人が歩いていない。みんな郊外のショッピングモールに行ってしまうので、個性豊かにいろいろなことをしていかないと興味はそそられないのかなって。今はお客さんがイベント慣れしているし、常設の、毎日映画やってますよでは、お客さん来なくなっちゃっているので、まずは足運ばせて、映画を観せていかないと、もう立ち行かないと思いますね」
 今の日本映画はどう感じていますか?
 「メジャーに関しては鼻くそみたいなものしかないので(笑)。インディペンデントの中でも、石井聰亙(岳龍)監督のような監督もまだがんばっているし、まだまだ捨てたもんじゃないのかなって。映画館は出口なんですね。入口は監督じゃないですか。出口としては、ホントお客さん来る映画作ってもらいたいという思いもあるんですけど、骨太な妥協しない作品を作ってもらいたいですよ。お互い、まあ、がんばりましょうって言うしかないですね。あははは!」
 平日だったことも多少あるかもしれないが、正直に言うと『がむしゃら』の舞台挨拶の動員は2回で34人だった。惡斗が青森出身ということで、もう少し入るかなと期待したが、現状の厳しさを実感した。舞台挨拶をしなければ、トータルの動員はもっと悪かったはずだ。青森の夜。谷田さんに新鮮な海鮮とお酒をご馳走になった。谷田さんは同世代。ピンク映画や共通項となる映画の話で盛り上がり、楽しい酒席だったけど、ご馳走になるような動員じゃなかった。
 映画を愛している劇場にはがんばってもらいたい。もちろん、我々もがんばっていかなければならない。次の作品で、またシネマディクトに行きたいと思った。お客が入る骨太な映画で。

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