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特集

日本映画監督協会 会員名鑑

にっぽん劇場(コヤ)めぐり

第一回 京都みなみ会館

2015年09月27日

この記事は、監督協会会報「映画監督」2015年7月号からの転載です。

 
『京都みなみ会館編』
髙原秀和

最初に自分の話で恐縮だが、監督作『がむしゃら』が公開中だ。女子プロレスラー・安川惡斗の壮絶な半生を描いたドキュメンタリー。イメージフォーラムが気に入ってくれて、モーニング&レイトショーで3月下旬から当初4週間の予定を組んでくれた。

公開前の宣伝期間に入った2月、惡斗がプロレスを逸脱した試合で顔面を三カ所骨折するという重傷を負い、大きなニュースになり、映画の公開時期に渡ってネットを中心に賑わすことになった。図らずも、大きく映画の宣伝にもなり、宣伝費換算したら、凄い額になるだけの宣伝効果はあったと思う。映画としても新聞各紙、キネマ旬報や映画サイト、周りなどでも高評価で、自分自身いけるのかなと期待をしていたし、会う人ごとにヒットしているでしょうと言われた。確かに映画の認知度は上がったけど、ヒットなんて言われるほどの動員には結びついていかない。イメージフォーラムは8週まで延ばしてくれた。その間、舞台挨拶やトークショーを13回組んだ。イベントを組んだ日はそこそこだけど、やらなければ、もっと動員は悪かったはずだ。

自分は今年でピンク映画で監督デビューして30年になる。長い間、発注仕事が多かったせいか、自分のギャラと制作費のことしか考えてこなかった。劇団を主宰して演劇活動を始めて、興行の成り立ちを数字で考えるようになった。監督でございなんて安穏としてはいられない。映画のありようも昔とは違う。これをきっかけに自分なりに映画の今をリアルに把握しようと思った。

これからの時代、メジャー作品じゃない映画を届けるために何をすればいいのか?

昨年、公開された日本映画は約550本。1万人を動員して、興行収入は1200~1300万、配給に入る額が約半分として、制作費と宣伝費合わせて600万でとんとんになる計算だ。どれだけのミニシアター系と言われる映画が1万人以上の動員があったのだろうか。おそらく9割以上の映画は一次使用である興行としては赤字だし、DVDも売れない時代に、レンタル、配信、放映などの二次使用でどれだけ回収できているのだろうか。

話は戻るが、できる限り『がむしゃら』で地方を回りたいと思った。映画を届けるにはマンパワーで伝えていくしかない。小さな作品の宣伝費からは交通費はなかなか出ない。主演と二人で回れば、一カ所につき、5~6万はかかる(全国どこでも北海道から九州まで、安いビジネスパックで探すと宿泊が付いて、一人大体25000~30000円です。往復の新幹線代より安い。ご参考に)。Tシャツを作って、その販売権利を自分にした。トークショーの度に、我々の活動費になるんですと言い続けると、まあまあな売り上げになった。宣伝費から出ない場合は、そこから交通費を捻出することにした。

今までに、名古屋・シネマスコーレ、大阪・第七藝術劇場、青森・シネマディクト、京都みなみ会館、神戸・元町映画館と回ってきた。

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前口上が長くなったが、シネコン全盛の時代に地方でがんばっている映画館の現状を取材する『にっぽん劇場(コヤ)巡り』という新しい企画が決まり、劇場を回っているならよろしくとのことで、自分が担当することになった。

ということで、第一弾は京都みなみ会館。東寺の五重塔を目の前にした、京都駅から徒歩15分の劇場です。

館長は吉田由利香さん。京都出身。1988年生まれの27歳。最初に紹介された時に、館長だと思わずに、え、こんなに若くて可愛い女性がと驚きました。
美術系の高校で映画研究部に誘われ、高一の時に部活で最初に観せられた寺山修司監督の『田園に死す』に衝撃を受け、映画に興味を持つようになった吉田さんは、高校卒業後、京都造形大学に入学。造形大といえば、高橋伴明監督、林海象監督、福岡芳穂監督、山本起也監督など協会でおなじみの面々が教授陣。吉田さんは映画監督、もしくは美術スタッフ志望。だけど、本人曰く、大学で友達を作ることをさぼり、一人で手書きアニメーションの制作に就職活動もせずに精を出していたそうです。卒業一週間前、社員を募集しているからと勧められ、みなみ会館に就職。
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「私が入るちょうど一月前まで、ある企画会社がプログラム、企画を全て考えて、みなみ会館を運営していたんですけど、倒産したことでみなみ会館から撤退してしまった。その当時から働いていたスタッフはみんな若かったんですが、これからはみんなで企画も考えていかないといけないからがんばろうねって」

2年間は受付と映写スタッフ。そして、24歳の時に館長に就任。

「前任の館長は元々配給会社に行きたくて、夢適って晴れて退任されて。後任どうするってなった時に、みんながやりたがらない中、一番意欲的で若い吉田に一度任せてみようってなって。その頃、いろいろ諦めていて、このままだらだら流されて、作品も作るわけじゃなく、何してんのやろと思っていたので、私、館長やってみたいですって。これは自分が変われるチャンスなのかななんて思って」

どんな映画館を目指しているんですか?

「私が通っていた頃のみなみ会館はオールナイトも頻繁に行われていて、ライヴやダンスとか劇場内でイベントなんかもやっていたり、映画だけに捕らわれない、魅力的でオシャレな空間だったんですよ。前任の館長が一番厳しい時期だったと思うんですけど、企画会社が撤退したことによって、それまで築き上げてきたお客さんが一気に離れていったんですね。だけど、信頼を取り戻すためにがんばってくれたおかげで、私が館長になった時は凄くいいタイミングだったんです。だから、私はいい時代を復興したいという思いが強いんです。もう一度、若い人が集う場所に戻したいという思いでやってますね。シネコンもミニシアターも凄く若者離れを感じていて、圧倒的にシニアの人が多かったんですけど、私が館長になってからは毎月一回はオールナイト上映を復活させて、徐々に若い人たちが戻ってきてくれていると実感があります。若い人たちに映画を観てもらわないと、圧倒的に映画人口はなくなってしまうし、みなみ会館の立ち位置としては偉そうな言い方になるかもしれませんが、若い人たちへの映画教育施設みたいな、少しでも映画を好きになってもらうためのステップアップの場所になれればと考えていますね」

どうすれば若い世代に映画を観てもらえるようになると考えていますか?

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「ビジュアル重視の時代になってきていると思います。チラシが可愛いくてスタイリッシュだと割と若い世代の集客が見込めたりします。それはみなみ会館の特徴なのかなとは思います。配給会社も主にシニア向けがターゲットだったりするので、わかりやすいチラシの作り方をするんですよ。観るとおもしろいのに、若い人たちはなんか退屈そうな映画だと感じて、宣伝で人が絞られている気はしますね。できれば、シニア向け、若者向けのチラシを作るとか、違うビジュアルがあったらいいのになとは思いますね」

ミニシアターでの映画の宣伝はどのように考えていますか?

「監督の顔って、よっぽど有名ではない限り、観客にはわからないと思うんです。いくら、こういう監督がこういう作品を作りましたというところで、ふーんと言う感じだと思うんです。ミニシアターに回ってくる作品って、誰が出てるって作品よりも誰が撮りましたっていう作品が多くて、じゃあ、どうしたら、伝えることができるかというと、劇場の人間がキャラクター化していかないといけないと思っています。あの館長が、あのスタッフが面白いって言うならというところまで持って行かないといけない。幸いなことに関西の劇場の館主は女性が多いんですけど、それに注目してくださる方もいらっしゃって、トークライヴなどで、女性館主だけのイベントを組んだり、もっともっと前に出て行きたいなという思いはありますね。この映画は、この監督は、こういうところがおもしろいんですよって」

監督も映画館もタレント化しないといけない?

「発信する場が多いのは恵まれた時代だとは思いますので、ネットなどでも、自分はこういう人間ですと顔を出して、さらけ出していく方がいいのかなと思ったりしていますね」

東京と地方の違いって何だと思いますか?

「インディーズの作品をやったとしても、東京は関係者含め、制作者たちが観に行くじゃないですが、だから、東京でヒットしたんですって作品を持ってくる監督たちが、京都に来て絶望して帰っていくんです、毎回。でも、それは甘やかされた世界だと思うので、東京は。届け切れてない劇場の問題もあるとは思うんですけど、届きにくい映画を撮っているっていうところもあるんじゃないかと思います。『クソガキの告白』という映画の時は、監督がサンドイッチマンになって、胸にiPadをぶら下げて、予告編を流しながら、宣伝をしてくれて、劇場にずいぶんとお客さんが来てくれました。映画を作りました、お願いしますというような東京とは違うので、熱意が必要かなとは思いますね。 本当に観てもらいたいと思っているの?と感じる監督も結構いらっしゃいますし。配給会社じゃなくて、作っている人たちの熱意が伝わると劇場もがんばろうと思いますしね」

どういう映画を観せていきたいと思っていますか?

「自分がおもしろいと感じる作品を基本的にはやりたいと思っているんですけど。最近の監督の作品って、とにかく視野が狭い。こんな若い奴に言われたくないだろうけど、それ、映画じゃなくていいんじゃない?大画面じゃなくていいんじゃない?という作品が凄く多くて。そういうのはあまりやりたくないと思ってやってますね。大画面に栄える作品を観て欲しい。映画館で観るっていいなって思ってもらえるように。映画って夢が叶う場なので。ファンタジー、冒険ものとかそういう意味ではなくて、いろいろな意味でファンタジー。小さな予算でも作れる時代だけど、中身は小さくならずに突拍子もない発想の映画を観たいと思いますね」



映画が映画として成立しづらい時代なんだと思う。だけど、昔はよかったなんていっていたら取り残される。映画の価値観は人それぞれだけど、映画が好きなことは一緒だ。時代を作るのは若い世代。吉田さんを始め、京都みなみ会館がこれからもっともっと映画を届けることのできる、顔のある映画館になることを期待しています!