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作品インタビュー

火火

高橋伴明監督 インタビュー 新作「火火」について聞く


監督作品70本以上のキャリアをお持ちの高橋伴明監督、今回は実在の人物をモデルとした新作「火火(ひび)」について色々なお話を聞かせて頂きました。映画は信楽(しがらき)を舞台に、陶芸家の母親とその息子との関わりを描いていく物語です。
(聞き手:福岡芳穂・坂本礼 DV撮影・採録:坂本礼)
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高橋伴明監督 プロフィール

1949年生 奈良県出身。1972年「婦女暴行脱走犯」で監督デビュー。監督作品は70本以上、「TATOO(刺青)あり(82)」でヨコハマ映画祭監督賞を受賞。以後、脚本・演出・プロデュースと幅広く活躍。代表作に「DOOR(88)」「獅子王たちの夏(91)」「愛の新世界(94)」「光の雨(01)」

福岡「この作品はいつ公開ですか?」
高橋「一月、第二弾」
福岡「劇場は?」
高橋「銀座シネスイッチ、新宿武蔵野館他。もうね、70館ぐらい決まりそうだ」
福岡「えっそんなに」
高橋「凄いんだよ。俺、初めてだけどこんなの」
福岡「光の雨より多い?」
高橋「多いと思う、東映系とかそういうの別にしたらね。単館系でスタートしたのに、なんか......」
福岡「70館かぁ。そんなに評判がいい」
高橋「小屋にはね(笑)小屋にはうけがいいみたい」

< 原作と現実と、映画 >

02.gif福岡「これって実話なんですか?」
高橋「まぁ、半分くらい実話」
福岡「原作あるんですよね」
高橋「原作?......あるけど原作はダメとか言っちゃ駄目なんだよね」
福岡「カット、カット(笑)」
高橋「最初、原作渡されたのよね。で嫌って言ったの、言えば中学生向きに書かれたとっても美しい良いお話になっちゃっているの。こういうのはちょっと撮れんと思って断ったんだけど、とりあえずモデルが生きているから1回会ってくれと言われて、会いに行ったんだよね。その神山さんていうのがなかなか面白かったのよ」
福岡「あの、お母さん」
高橋「そう、お母さん。原作に書かれている世界の部分もあるけど、こんなんよりも全然面白い人だと思って。それとうちの死んだお袋をたして2で割ると面白いお母ちゃんにできるなと思ったのよ。それでちょっとやる気になったの」
福岡「結構、取材って何回も行ってらっしゃいましたね、信楽まで」
高橋「まぁ、一応その担当医とか看護婦さんとか、周辺の人に」
福岡「色々取材したうえで、原作はあるけどほとんど監督のオリジナルで」
高橋「まぁ、ほぼね。ただ、まぁやっぱり作り物だから、結構抵抗はあったけどね本人から......そんなこと私はよう言わんみたいな(笑)」
福岡「よう言わん、していませんとか」
高橋「映画ってそんなものだからさ」
福岡「最終的には納得されて」
高橋「いや、こっちが折れた振りして、現場で変えちゃえば判らないじゃん(笑)。現場でやりたい方向に戻したというのは結構ある」
福岡「一番ご本人の意向とズレた部分って?」
高橋「やっぱり死んでいく息子に対して結構酷いこと言っているじゃん。お前もうあかんのちゃうかとか、最後の誕生日しようとか、あからさまにさぁ。こんなこと絶対言えないってんだよね」
福岡「でも、映画としてはそこが一番見せ場というか」
高橋「そうそう」
福岡「いい所ですよね。ああこう言うんだなって母として、女性として」
高橋「あとはね、最後まで駄目だったのは、(息子が)薬を捨てているって話をするんだよね。これ絶対やめてくれって言われていたのね。まぁそれは薬ちゃんと飲まなかったから死んだんや、みたいなこと言われたら困るからかもしれないけど。けどこれ看護婦情報なんだよ」
福岡「捨ててました、映画の中で」
高橋「それはホンには書いてなかったけど、現場で。けど見た後何も言わなかったから」
福岡「ご本人、見られたんですよね」
高橋「うん」
福岡「映画見られたら納得しますよね」
高橋「(笑)」

< 火火 >

05.gif福岡「題名は誰から?」
高橋「これね、田中裕子」(※田中裕子さんは「火火」の主演・母親の役です)
福岡「へぇ~」
高橋「色々タイトル困っていて、田中裕子側からこういうのどうでしょうかってね......いいやんって」
福岡「監督かなって」
高橋「いや違う、違う」
福岡「ぽいなって思って......でも、まんまな感じでいいですよねなんか。窯でもの凄い丁寧に丹念に撮っていますよね」
高橋「あれだけはちょっとね、自信あるんだよな。今までたぶん映画の中でちゃんと窯撮ったのないんじゃないかなって」
福岡「あれ凄いですよね。本当に窯のなかで」
高橋「焚いている途中で撮っているから」
福岡「一番撮影条件的にも厳しかったところなんじゃないですか、窯に入るなんて」
高橋「そうそう、えらい事になったのだけど実は......操演も入れて撮った所もあったんだけど、窯の中真っ黒になっちゃってそれ拭くのが大変でさぁ。でもなんのことない、もう一回普通にきちっと焚くと、黒いのがコトって取れちゃうんだよね。あのね、窯の中ってね、ビードロになってんだよ」
福岡「えっ、なになに」
高橋「ピカピカなってんの」
福岡「窯じたいが焼けるから」
高橋「焼けて光っているのツルツルで、そこにバーナーで火出すから煤がもう全部たまっちゃうわけ。けどもう一回焚くと全部溶けて落ちてしまう」
福岡「あれは実際のその」
高橋「本物の窯」
福岡「あの方の」
高橋「そう、窯に穴開けるわ。もう(笑)えらいことしちゃってるんだけど」
福岡「ダメじゃないですか(笑)」
高橋「かまへんかまへん言うんだもん。実際に穴開いて火が吹いたりした時も、ちゃんと埋めて何とかしたから開けてもええって」
福岡「窯があれだけ撮れてないとなんの説得力もなくなりますよね。窯の撮影は何日?」
高橋「窯の中だけ撮るのに4,5日、あとは操演がらみで撮ったの入れるとまた別にあるけど。けどやっぱり大変だよ、耐熱ガラス前に作って消防服着て、1000℃以上になると近所に行くと、もうえらいことなるねやっぱり」

< 「ヤバネタ」の映画 >

福岡
「骨髄バンクの話は最後まで出てくるじゃないですか、かなり明確にメッセージとして窪塚くんがみなさんってカメラに向かって語りかけたりして。一瞬、骨髄バンクの協会がスポンサーだったりするのかなと思ったりしたんですが、そうではないんですよね」
高橋「じゃないんだけど、それはこっちも危惧してたんだけど。う~んなんかね、そういうためのシーンに見られるんだろうなって、でもなんか死んだ後にね、テレビに出ているっていうのがちょっと悲しくていいのかなと思って、ああいう風にしたんだけどね......外そうかあれ(笑)」
福岡「外せへん今から(笑)...嫌な意味ではなく、あれは監督自身のメッセージというか」
高橋「そんな上等じゃないですよ」
福岡「でも、ある意味でそういう部分に対するなんていうか、監督自身の考え方みたいな」
高橋「いや、そんな難しいこと言ってないよ。死にたくないんや、骨髄くれ言っているだけやし......でも、今だに悩んでいるところ。悩んでもしょうがないんだけど。もともとのホンは骨髄移植に関するシーンが凄くあったのよ。そういう匂いが前面に出ちゃうと嫌だから、殆ど取っちゃったんだよね。シンポジウムのシーンとか、いっぱいあったの」
福岡「原作はもともとそういうのを押している感じで」
高橋「まぁ、半分でてるよね」
福岡「いえば、女性の一代記であり、母子ものであり、難病ものであり」
高橋「反則技いっぱい入ってますんで(笑)」
福岡「けど上手いですね、高橋伴明こんなに上手いの?!みたいな。いいのこんなに上手くて(笑)」
高橋「まぁ、ようけ撮っているからね」
福岡「下手したら見ていて、はいはい判った判ったみたいなものじゃないですか。成功した人の一代記や難病ものって、映画として丁寧にきちんとやらないと一番鼻につく」
高橋「やばねただよね」
福岡「やばねたですよ」
高橋「やる方からしたらね」
福岡「やっぱりやろうと思ったのは、あの原作のお母さんにお会いして」
高橋「やっぱお母さんに会ったことが、それがすべてじゃない。それとうちのさっき言った死んだお袋とだぶったものがあったので。俺は死ぬまで和解できてないのよ、お袋と......まぁ言ってみればいがみ合ってたからお互いに」
福岡「なんでですか?」
高橋「嫌だったんだ、お袋の生きざまが」
福岡「お母さん何をやられてたんでしたっけ」
高橋「お花の先生」
坂本「監督の映画は母親に対する思い入れが強いように感じるのですが」
高橋「反面教師としてね。俺はお袋みたいな人間にはならないというのが常にあったから」
福岡「たとえば」
高橋「俺が一番嫌いなところは、依怙贔屓とか、言葉とか態度で人を傷つける、あとは身内可愛い、そういうのは本当に嫌だったんだよね」
福岡「現実的にもわりといがみ合ったりとか」
高橋「お袋の所にいるのが嫌で、東京出てきたところもあるし。お袋遺言なんか書いてあったりしてそれなりに、その時も全部弟だもんね(笑)」
福岡「嫌われてるんや(笑)」
高橋「嫌われてまんねん(笑)けど嫁さんのことは好きなんだよね。嫁さんの方が奈良に帰るわけよ孫なんかと、俺は行かないけど。ただまぁ、死んでちょっと経ったのでそういう意味では反面教師とはいえ、お袋がおらんかったら今の俺が無いやろうなって思いもあったんで、感謝の意味も込めましてですね(笑)...生きていたらようやらんね」
福岡「なるほど」
高橋「面白かったのは、この映画を娘が見に行ったら、あっお婆ちゃんやって言ったね。やっぱり、知っているやつにはそう見えるだろうなって思った」
坂本「お母さんが火火を見ることが出来たら見てもらいたいですか」
高橋「見れるような状況だったら作らない......少なくても違う映画になっていると思う、やったとしても」
福岡「この映画は女性向きな感じじゃないですか、結果として。それは最初から意識されていたんですか」
高橋「意識というよりも、真面目な話すればね、今、親が子供にどう向き合っていいか判らん時代だっていう感じが凄くするんだよ。そういう意味で若いお母さんに見て欲しいとは思ってた」

< 伴明映画の「歌」 >

03.gif福岡「また、歌を使ってますね。今回の歌は何でしたっけ」
高橋「あれは、アメージンググレースのりりィ版。でもなんだかんだって多いじゃないアメージンググレース使っているの。なんかこないだ見たドラマでも使っていたし、CMでも使っていたし。あちゃって思ってたんだけど、でもアメージンググレースだって思わないで聞いているみたいだから」
福岡「よく歌使いますよね。普通監督として、歌の存在感って強いから歌詞も含めて嫌がる人もいるじゃないですか」
高橋「俺、好きだもん」
福岡「何で好きなんですか」
高橋「なんでかな。要するに自分では歌が一番感情移入できるんで。ピンクの時代から歌は結構使っていたよ」
福岡「そうですよね。見る方も歌によって感情移入させて」
高橋「くれればいいし、嫌だったら嫌でもかまわねえやと思うし、それが好きか嫌いかは勝手でしょって感じだから」
坂本「今回も歌を歌うシーンがありましたが、監督の映画は手毬唄だったり子守唄だったり、登場人物が唄を歌うシーンも多く撮られている印象があるのですが、そういったシーンも好きなんですか」
高橋「好きだね、たぶん好きだね」
福岡「自分でも歌、歌われましたっけ?」
高橋 「歌わへん、絶対うたわへん(笑)カラオケ大っ嫌い」
福岡「監督の中で、映画という表現を描く上で気を使うことは」
高橋「やっぱり、どういう人間かってこと。そういう予算にも恵まれないからあれなんだけど、そのCGだの特撮だのそういうのってあんまり興味ないんだよね。俺ってなるべくなら、アナログで人間撮りたいなと、いまだに思っているけど」
福岡「どんな人間」
高橋「そりゃ色々あると思うよ。自分にとって敵であってもいいし、味方であってもいいのだけど」

< 監督と権利 >

福岡
「今回の作品は御自分でも出資されているんですか」
高橋「ちょっとだけね」
福岡「権利は」
高橋「ちょっとだけ。やっぱりね、今監督に権利無いじゃん。今の著作権を監督の手にって一生懸命やってはいるけど、無い以上は少しでも出資して権利者に名を連ねておくことは大事だと思うんで。基本的には可能であればそうしている」
福岡「それは自分でやっていくしかないと」
高橋「今はね。でもやっぱり動きが分るからね。どういう風に進んでいるのかって。例えば、70館になりそうだとか、今の時点で分るんだから。ただ監督だったら分らないじゃない、そういうこと」

< これから...そして >

04.gif福岡「もう次の作品は進んでいるんですか」
高橋「常になにかはコロコロと転がってはいるのだろうけど決まりっていうのは無い。ただ今回みたいなの撮ったからって、この傾向のものが来ちゃうと困っちゃうよね」
福岡「こういうのも上手じゃないですか」
高橋「なんか、ベーシックなものは撮りたかったことは撮りたかったのだとは思うよ。ベーシックな映画、一本ぐらい撮ってもいいかなっていう」
福岡「ベーシックというか何ていうか、世話場もの監督になられるのは嫌だな、一応弟子としては(笑)それはご自分でも意識が」
高橋「それはいまだにというか最後まで頭の後ろにはあったよね。なんとか自分では納得させてさ、やっていたところあるよね。凄く恥ずかしいもんな(笑)どんな映画ですかって聞かれた時、母子もので難病もので(笑)」
福岡「次はまた全然違うような作品を」
高橋「違う方向をね、行きたいと思っているんだけど......こういう作品のオファーがきちゃうよね。ちょっと恐怖してるんだけど(笑)」
福岡「でも、高橋伴明としては面白いじゃないですか。光の雨がきて、次こういう全然パッケージ的には違う感じのものがきて」
高橋「言ってみたらとっ散らかってるんだけどね」
福岡「次なんだろうって気がしますよ」
高橋「やくざ映画みたいのがいいんじゃない次は」
福岡「ガリガリっとしたような」
高橋「そうね(笑)」


高橋監督、試写などでお忙しい中、御協力いただき本当にありがとうございました。
(文責 坂本礼)
『火火』オフィシャルサイト http://www.vap.co.jp/hibi/