特集

日本映画監督協会 会員名鑑

作品インタビュー

かまち

多量の情報を発信しつづける若者への熱い共感
新作『かまち』について 望月六郎監督にインタビュー



moti-01.jpg 広報委員会のロートル山際永三が、福島拓哉編集長の指名により『かまち』の2003年12月11日イマジカ試写を見て、望月六郎監督にインタビュー。立会人・高原秀和監督。

山際「今日はまったく予備知識なしに『かまち』を見せてもらいました。恥ずかしながら、私は望月さんの作品を一度も見たことがないのです(大笑い)。非常に面白かった。世代をこえて"青春"ということが、いろいろと出てきて、それがうまくミックスされていました。若い人たちの、"いのち"の問題ということでは、深作欣二さんの『バトルロワイアル』にも通ずるものがあるし、この前の監督協会WEBでの「人殺し大放談」で出た話にも通ずるものがあるように思いました」

望月「ぼくは青春映画は初めてなんです。高原さんなんかとピンクの助監督やってるときは、青春ものやヤクザものの脚本を書いていたんですけど、45歳にして子どもたちの映画を撮った・・・・・・みたいなところがあるんです」

山際「雰囲気で見せようっていうんじゃなくて、意味とリズムでお客さんに、ぶつけて行くっていうような感じを受けたんですが、それはなんか狙いありますか」

moti-02.jpg山田かまちの映画とは・


望月「この映画のシナハンで高崎に行ったとき、かつての山田かまち君の友達に会ったら、皆んなけっこういいとしなんですよ、当たり前なんですけど、もう20年以上たってるんだな彼が死んでからっていうのが素直にあって、最終的に、檀ふみがやった女性のモデルにさせてもらった女性にも会ったんですけど、塾の先生をやっていて、子どもたちのことで悩んでいるっていうことだったんですよ。いまから10年前に山田かまち君の映画を撮るなら別だけど、今撮るということは、経過した時間がテーマになるんじゃないかなということで、そこらへんロジカルな映画になっちゃうかもしれないけど、ちゃんとわかり易く、当時の世代が親になっていて、子どもたちがいろいろな問題を抱えているということ、これを映画にするしかないと、シナリオライターとも話し合ったんです。たまたま自分が映画学校の先生をやって若い人とつきあったりしたこともあって、20年前に死んだ山田かまちという人は、こういう人でしたという研究だけの映画にしたくなかったんです」

山際「なるほど。そこらへんは、ちょっと難しいかなっていうところはあったけど、決して混乱しているわけではなく、望月さんの表現として一貫してましたよ。スクリーンに表れたときの効果っていうことがまずあって、前半の軽快なタッチで非常にテクニシャンぶりを感じさせて、かまち君が感電死することをにおわせて青空にパンするまでね......」

望月「かまち君については知っている人はものすごく知っているんですよ。出版物も沢山出てるし、17歳で死んだという事実は出ているから、とにかくある程度どんどん引っ張って行っちゃって、結果、時間をうまいぐあいに超えられるかっていう、檀ふみたちが出てくるところで失速するじゃないですか、えっ、これ何ぁに?ってなるから、失敗したらこの映画そこで終わるだろうって思ってました」

山際「そこらへんは、他にうまい方法はないと思うくらいうまくいってましたよ」

優等生の映画か


望月「たしかに、例えば"不良"や落ちこぼれの偏差値5%、この話だと上の5%、それは引っ繰り返してみれば同じことで、下の5%は、けっこう映画で救われたりしてるけど、今実際に犯罪を犯したり悩みを抱えている子って、けっこう成績はいいしパソコンを使いこなしてコミュニケーションしているのかしていないのかわからないみたいな、そういう子たちをターゲットにしてもいいと思うわけ。山田かまち君が、高崎のエリートの高校に入るということが彼にとってどういう理由があったんだろうとか、そういう視点も含めて、「大人も子どもも」どっちもどっちみたいな視点を重視したつもりなんだ。だから、「大人は分かってくれない!」と大人を批判したり、逆に、わけのわからない気持ちの悪い子どもを糾弾したり大人がオロオロする映画って沢山あったけど、どっちも苦しんでいるって映画にしたかった」

山際「だから、あの文字を画面にどんどんスーパーインポーズして重ねるじゃない、あの文字は、かまち君が作った詩なんでしょ。ああいう文字に敏感な子もいるだろうしね、パソコンやってる子は文字をバーと書くわけだし、ああいう感覚にぴったりついていける子は必ずいると、私は見ながら確信しましたよ。別にそんなに難しい日本語が出てくるわけじゃないしね」

望月「ぼくの中にすごくあって、それは大人が考える理想なんじゃないのと言われるかもしれないけど、子どもっていうと、15~16歳で幼児退行したみたいな子、もしくは爬虫類みたいに何を考えているのか訳がわかんないみたいな、気がついてみると映画に出てくる子どもが、その2つになってるのかなっていう思いがあったんです。だから、俺は「こういう子どもたちがいてほしい」みたいなことで撮るんでいいと思ったんです」

檀ふみがよかった


山際「思いつくままに言うと、檀ふみがよかったですねぇ」

望月「そうですね」

山際「あの女性の役は、いろいろあったのは分かるし、彼女が教え子の女の子を抱きしめて長いセリフのあるシーン、ほとんど100%いい芝居でしたね。また、あの檀ふみで完結しないで、渋谷に行ってしまう男の子を彼女が追っ掛けて行くじゃない、あそこの転換が実によかった」

望月「こういう2つの時代をまたぐ映画って、編集によってまた、全然違ってくるんですよ。最初オールラッシュを見たとき、みんな頭を抱えちゃいまして、それからシーンを前にもっていったり後ろにもっていったりして試行錯誤して、やっと今の状態に落ちついたんです。頭だけでは計算できなかった」

山際「木下恵介さんの岸恵子主役の『風花』っていう映画を思い出しましたよ。あれが時代をごちゃまぜにする作りなんです」

望月「和太鼓じゃないけど、最初は「どん」「どん」とゆっくりで、だんだん早くなって「ドンドンドンドン」となるような、そういう作りになりました」

山際「かまち君が鏡の前でナイフを持って自画像を描いて、カットバックで現代の中学生の子が渋谷でヤクザに脅かされてナイフを出すんだけど、たちまちぼかぼかに殴られて金を奪われる、あのナイフに引っかけての時代をまたにかけた表現はピークで、興奮して見ましたよ」

 
かまちの情報発信量



望月「かまち君たちの世代は、偏差値の最初の頃なんですよ。それこそ宮崎勤くんとかオウムの信者たちとか新潟の女の子を監禁した人とか、引きこもりとか"おたく"と呼ばれた最初の世代なんですね。かまち君を撮ることになって、この20数年間は何だったのかというのがあって、今大人になった人にも、若い人にも、見て元気が出るという映画にしたかったんです。実際「かまち」のファンって、ぼくらよりずっと若い連中で10年くらい前に「かまち回顧展」っていうのやって、そのときに10代の子たちが、ぼくたちのことを分かってくれている死んだ人がいるっていうんで騒いだわけです。今になって、かまち君のことを調べると、驚くのはその"量"なんです。詩とか絵とか、うまいとか好きとかいうよりも、この子はなんでこんなにまで外に情報を発信することに情熱をそそげたんだろうかと、びっくりするんです。イコール時間じゃない。彼の自分の表現に費やした時間は半端じゃない。彼の美術館に行くと、バーって展示してあって、本もいろいろあって、彼の詩の草稿だけで上下巻『かまちのノート』ってぶ厚いのが出てるし、エネルギーがすごいんですよ。いま、パソコンでやっている子たちが、紙の形では残していなくても、かまちがやっていたことに通ずるものを持っているような気がした。ぼくのなかでは、『かまち』という映画は、かまち君にいろいろな意味で、関わった人々の群像というつもりがあるんです」

山際「この映画に出てくるかまち君は、ものすごい勢いでいろいろ動いてて、恋にしても率直すぎてほほえましいくらいで、まあどこにでもいる若者という一面が描かれていて、いやらしい"天才"なんてものじゃないから、好感がもてましたよ。問題の普遍性という意味で賢明な作りかただったと思う。あの「1日が24時間じゃ足りないよ!」って言葉は、かまち君が自分で言ってたの?」

望月「ええ、自分で言ってたんです」

山際「あのナイフを持った自画像っていうのも、実際に?」

望月「彼が死んだあと、ベットの下からゴソッと出てきたらしいです。その中の1枚だったそうです。今度、映画の上映(日本ヘラルド映画配給/3月13日封切)に合わせて、池袋のサンシャイン美術館で、また「かまち回顧展」が開かれるそうです」

 

皆んなが悩んでいるんだよ


山際「いま思い出したけど、檀ふみがパチンコやってるシーンがあったけど、あれも面白かったね」

望月「群馬県って、いちばんパチンコが盛んな県なんですよ」

山際「彼女は最高でした。誰がつかってもいい女優なんだよね」

望月「檀さんにも、面白かったって言ってもらいました」

山際「大人たちが、なかなか皆んな主役級の人が出ていたよね。奥田瑛二、風吹ジュンも出てたし」

高原「最後に、監督から一言」

望月「ぼくは単純に、皆んなが悩んでるんだよ......今回の映画の人物たちは何んで悩んでるかの原因はなくて、トラウマがあるとか、いじめられたからとか特別に表の理由は出してなくて......そういう人たちが、とりあえず手を握るというか、手を握ることだけでも違うでしょっていう思いで、映画を見て元気が出てくれればいいなっていうのが、若い人にも若くない人にものメッセージですね」