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ゴジラ×モスラ×メカゴジラ

今年のゴジラは一味違う! 手塚昌明監督インタビュー


goji01.jpgゴジラ。映画業界に身を置く以上、必ず出会うこの言葉。しかし僕、広報委員の福島拓哉は、思いっきりゴジラを観なかった世代です。だからぶっちゃけよく知りません。
そもそも何でゴジラは日本を破壊しに来るのかも知りませんでした。 そんな僕が、12月13日より全国東宝系で公開される『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』の監督・手塚昌明さんにお話を伺うチャンスをもらえたのです。

これは渡りに船、猫に小判、馬の耳に念仏・・あれ?とにかく長年のゴジラコンプレックスを解消してしまおうと、ドキドキしながら東宝撮影所におジャマしました。

でも一人だと心細いので、思いっきりゴジラ世代の監督・高原秀和さんにもついてきてもらいました。 撮影所までの道中ですでにゴジラ話。

語られる少年時代の思い出。 さすがは高原アニキ、ゴジラに詳しい。頼りになるぜ。

ということで、ゴジラ新時代の旗手・手塚昌明さんにたっぷりとお話をお聞きしました。今年のゴジラはどうなる?

高原「手塚さんは学生の頃からゴジラが撮りたいって言ってたと聞いたんですが?」

手塚「特撮とかスター・ウォーズとかが大好きだったんで、そういうのが撮れたらいいな、とは思ってましたね。でも大体そういうの撮りたいって言うとバカにされるんで内緒にしてたんですよ。だから一本目の話をくれた東宝映画の方も、『まさか手塚がそんなにゴジラが好きだとは』って言ってました(笑)」

福島「じゃゴジラが好きだという事を知られてないのに仕事が来た、と?」

手塚「ええ(笑)東宝でやっててよかったなあと思いました」

高原「僕は同じ監督として思うんですが、デビュー作がゴジラ、というのはどうなんですか?やっぱりゴジラだと作家性とかそういうところで評価されにくい微妙な作品だと思うんですよね」

手塚「そうですね。作家性だとかは認められないだろうと思ってました。でも当時45歳で、もう監督にはなれないかな、と思った時期だったんです。だから撮ってみないかと話が来た時は、一応考えたフリをしてから返事をしました(笑)。やはり歳を取ってからだったので、これを逃すともう監督になれないな、と思ったんですね。ゴジラだとオリジナリティとかメッセージ性っていうのはなかなか難しい題材だけれども、その中で自分のやりたいことがやれればいいかと思って、今回で三本目になります」

福島「ゴジラを撮るという点で、今のような作家性の面もあれば単純に現場的な面でもいろいろ大変なところはあると思うんですが、そのへんの苦労話など聞かせていただけますか?」

手塚「今までのゴジラも全部観てますんで、良いところ悪いところある中で、どうなんだこのへんは、というのを自分の作品で解消したい、というのが一番やりたいことでした。東宝が50年近く続けてきた、非常に大切にしてるゴジラってのがあって、こうでなきゃいけないとかそういう線がありますんで、その中でどう自分のやりたいことをやるか、が苦労した点ですね」

福島「スター・ウォーズが好きだっていうお話がありましたが、僕こないだエピソード2を観たんです。そしたらあれってほとんど絵じゃないですか、描いてあるっていうか。やっぱり僕自身は昔の何とかして模型を撮ってるっていうスター・ウォーズの方が好きなんですね。それで、ゴジラって逆に延々アナログなやり方で撮ってますよね。あの撮り続けてきた伝統が、今は新しいのかな、とも思うんです」

手塚「ああ、それはあると思いますね。実はエピソード1を観た時に、もうこれは俺のスター・ウォーズじゃない、って気持ちになったので2は観てないんです。でも例えば最近サンダーバードの再放送とかやってて、ウチの小学生の息子なんかが夢中になって観てるんですよね。ああ、今の子でも楽しいんだなって、改めて思いましたね。だから今回のゴジラにはそのテイストもわざと出してるんです。アナログ的な、自分が子供の時観て楽しかったものは、きっと今の子も楽しいだろうと思って」

福島「ゴジラの物語通りの日本の歴史だとえらいことになってるじゃないですか、東京壊滅したり。そういうゴジラがいる世界とか背景を考える上での苦労とかありますか?」

手塚「それは苦労と言うより面白いんです。プロデューサー含めみんなで世界観を考えるんですけど、面白いですね」

goji02.jpg高原「デビュー作(『ゴジラ対メガギラス G消滅作戦』)ではそれまでのゴジラの歴史とか踏まえてやってますよね。でも制約が多いじゃないですか。ゴジラ殺しちゃいけないし。難しいんだろうなと思うんです」

手塚「そうですね。ゴジラ殺してもいいんですけど、次で復活させなきゃいけない(笑)」

高原「手塚さんは一番好きなゴジラってどれなんですか?」

手塚「初めて観たのが『キングコング対ゴジラ』だったんです。面白かったですね。それが原点です。未曾有の大ヒット作で、映画館をずうっと人が囲むくらい並んでて、立ち見で観ました。それでも面白かった」

福島「狙っている客層として、ゴジラファンの期待を裏切らないというのもあるし子供にも見せなきゃというのもあると思うんですが、主にどこを狙っているんですか?」

手塚「他の監督さんは知らないんですけど、私は子供から大人まで楽しめるものにしようと思ってます。映画館に子供を連れて来た大人も楽しめる、という認識を持ってもらえればいいな、と。日本だとどうしても怪獣で着ぐるみでというエンターテイメントは敬遠されがちなんですが、騙されたと思って映画館来て下さい、思ってるゴジラとはちょっと違いますよ、という気持ちで作ってます。正月映画なのでいろいろ制約があって難しいんですが。去年なんかは主役殺していいですかって聞いたらやめてくださいって言われましたけど(笑)。でもそういう中で、爽快感のあるエンターテイメントにしようと思って作ってます」

福島「たぶん子供から大人まで、ってのが一番難しいとは思うんですけど、ゴジラ映画の中で、ゴジラという脅威に対する人間のドラマという部分を大人が楽しんで、ゴジラと怪獣の対決シーンとかを子供が単純に楽しむみたいな、そういう魅力の分散ができてるのかな、と思います」

手塚「そうですね。助監督の頃、怪獣がが出てればいいんだっていう方もいましたね。やっぱり、そんなことでいいんですかって反抗したことはあります」

福島「ドラマの部分が大人も引きつけるんでしょうね。怪獣シーンは迫力があるから話わかんなくても子供はそれで喜ぶだろうし」

手塚「ええ。それはそれで楽しいでしょうね。でも子供も思ってるほどバカじゃなくて。大人も期待するほど賢くないときもあるんですけど(笑)」

高原「じゃ俺バカだったのかな。子供の頃映画観てて、怪獣出てないとこは映画じゃないと思ってましたから(笑)」

福島「ゴジラ世代と子供たち、どちらも楽しめるように作るということは、新しいゴジラ世代というのが生まれていくことだと思うんです」

手塚「そうなって欲しいと思いますね。今20代30代の人はちょうどゴジラを観ないで育った世代で、そういう人はずっと観ないと思うんです。だから逆に今の子供たちが、大きくなってもずっと観られる作品を作り続けたいと思います。そしてまた新しい子供たちが楽しめる、その繰り返しができればいいなあと思いますね」

高原「こないだのゴジラ(『ゴジラ×メカゴジラ』)もそうだしここ最近のヒーローものとか見てると思うんですけど、女性が主役の作品が増えてきましたよね、あれはどうしてなんですか?」

手塚「今年は男性が主役なんですが、女性を主役にしたほうが『どうして戦うのか』が描けると思うんです。男は戦うのが当たり前に感じるんですが、女性を主役にしてそのモチベーションを描ければ、観てる人も一緒にゴジラに立ち向かってもらえるんじゃないかなと思います。ゴジラで主役を女性にしたのは私が初めてだと自負してるんですが、それまでの男性の主役たちは、途中で戦うことをあきらめちゃうんですよね。かっこいいセリフだけ言って。それが嫌で、最後まで戦うのは女性かなと思ったんです」

高原「時代性を感じるんですよね。男が弱くなっちゃってて」

福島「ここ10年か20年、強くて逞しい男を描くとリアルにならないって風潮があると思います。コメディにしかならないっていうか。だからキャラクターにリアリティを持たせようとすると、僕の映画もそうなんですが、ここ何年も日本映画の男性像ってなんかナヨナヨしてますよね。いつも悩んでるっていうか」

手塚「今年のゴジラの主人公は男なんですけどね、悩んでるんですよ(笑)」

福島「それが今のリアリティなんだと思います。だから女性主役のほうが前に出て戦えるんじゃないかなあ」

手塚「その通りだと思いますね。今回の主人公は悩んでばっかりいて、戦うんだかどうだかハッキリしろよって感じです(笑)。去年まではイケイケだったんですけど(笑)」

高原「そういう風に考えると、絶対的な男ってもしかしたらゴジラなんですかね」

手塚「ああ、なるほど。そうかもしれませんね」

福島「結局ゴジラは何者か、というのを掘り下げてお聞きしたいんですが?」

手塚「ゴジラは神なんだ、というのをよく言ってます。人知の及ばないところで天災みたいに人間の世界に現れる、人間の負の部分に対する怒りの象徴、人間の悪の具現化の象徴だと思ってやってます。」

福島「となるとゴジラの破壊は神の裁き、ですか?」

手塚「そうですね。宗教とか関係なく、もっと大きな神様だと思ってもらえれば」

福島「すると映画の中で人間は神に抵抗しようとしている、ということですね」

goji03.jpg手塚「ええ。それは本当は愚かしいことなんだけど、破壊されちゃ困るから人間が協力して抵抗する。人間がいなくなればゴジラは来なくなるんです。でも人間はいて、生活を守らなければいけない。人間は、命が大事だと思っているのに、戦争や核兵器が悪いことだと頭でわかっていながらも続けている。それが一番愚かなことです。だから目先のことじゃなくて、もっと大きく考えて、自分は非力かもしれないけど守るために戦っていかなきゃいけないんだよ、ということを恥ずかしげもなく何万人もの人が観てくださるゴジラの中で言い続けようとは思ってますね。そのために具現化されたゴジラが現れるんだと思います。ですから自分の子供たちにも観せたいし、命は大事なんだということをちょっとでもわかってもらえたら、と思ってゴジラを作ってます」

福島「みんなが団結して前向きに生きていれば、ゴジラは現れないんですね」

手塚「そう思ってます」

福島「逆に考えると、負の脅威として現れたゴジラを倒そうと、人間がプラスの気持ちで団結した時に、ゴジラは帰っていくんでしょうね」

手塚「そうですね。そうだと思います」

福島「で、その気持ちがいい加減になってくるとまた来ちゃう、と。年に一回(笑)」

手塚「年に一回は困りものですけどね(笑)」

高原「次のゴジラの見所をお聞かせください」

手塚「今回は悩める男性主人公で(笑)、彼がどうして悩んでいるのか、それがモスラと絡んで展開します。平和の象徴であるモスラの巫女としている小美人からのメッセージを聞いちゃったおかげで彼は作品中ずっと悩み続けるんですけど、ちょっと今年のゴジラは違う、という気がしてます。特撮も期待以上の画が出来てますし、見所満載のつもりです(笑)」


・・・取材時間があっと言う間に終了してしまうほど、初心者の僕にゴジラについて優しく、そして熱く語ってくださった手塚さん。その想いを確かめるためにも、年末年始はぜひ劇場へ足をお運びください!