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作品インタビュー

g@me.

「g@me.」井坂 聡監督インタビュー


g01-02.jpg文・構成/山内 大輔
えー、遅ればせながら、阪神ファンの皆さま、おめでとうございました!
実に18年ぶりの優勝! いやぁ~長かったですねぇ。
あの頃私は中学生でした。
しかし今回のこの快挙、実は二人の"監督"による功績といっても過言じゃないんです。
一人はもちろん、闘将・星野仙一監督。
そしてもう一人は......映画監督の井坂聡監督なんですね。
なぜか?
では、井坂監督からお聞きした、映画と野球にまつわるちょっとしたトリビアを......

『野球映画のモデルとなった球団は............
映画公開の翌年、優勝する』


へえー
そうなんです。
これまで、「メジャーリーグ」でインディアンズが、「ヒーローインタビュー」でスワローズが、
そして、井坂監督の「ミスター・ルーキー」公開(2002年)の翌年......ご存じの通りタイガース優勝!
ね? すごいでしょ?
そんな猛虎復活の陰の功労者(!?)井坂監督が「マナに抱かれて」に続き、またまた新作を撮り上げました。
タイトルは、「g@me.」(11/8.sat.全国東宝系でロードショー)。
東野圭吾原作の異色サスペンス『ゲームの名は誘拐』を、藤木直人さんと仲間由紀恵さんという、まさに今が旬のお二人が演じる、この秋一番の話題作です。
井坂監督には、8/4に東宝撮影所のセットにお邪魔してのインタビューと、クランクアップ直後の9/11に追加インタビューをさせていただきました。

g03-03.jpg《井坂組、現場の雰囲気いいですね。監督らしいジェントルな空気の中にも静かな熱気が満ちてました》


井坂監督(以下、井坂)「今回の井坂組は初めて組むスタッフばかりなんですけどね。でも僕の現場はいつもこんな感じですよ。やっぱり現場の雰囲気って画に出るもんですから」

《製作発表では「もう一回原点に戻って暴れる」とおっしゃってましたが、やはりサスペンス映画が監督の原点ですか?》


井坂「いや、特にこのジャンルがってワケじゃないんだけど。映画デビューが『[Focus]』だったこともあって......」

《僕、あの映画大好きです!》


井坂「ここのところ『ミスタールーキー』、『マナに抱かれて』と和み系の映画が続いてたんで、緊張感のあるハラハラドキドキのエンターテイメントをやってみたいという思いはありました」

《井坂監督のサスペンス映画というと、ベストセラー小説の映画化『破線のマリス』も話題になりました。今回も人気作家の東野圭吾さんが原作ということですが、原作モノを映画化する際心掛けている事はありますか?》


井坂「原作ものは原作のテイストを最大限に生かすのがいいと僕は思ってます。ただ映画はそのままやってもしょうがないんで、ある程度はしぼりますけど。今回の場合、原作は誘拐劇を中心に置いてましたが、映画は藤木君と由紀恵ちゃんが主演ということでラブストーリーの要素を強くしています。ただ原作の魅力である"犯人側からの視点のみで描く"という部分は変えずに守ってます」

《主役のお二人はいかがですか?》


井坂「最初は二人とも緊張してたけど、この映画はセットで二人っていうシチュエーションが多いから落ち着いて出来て。すぐに役柄を掴めたみたいですね。最初の三、四日くらいキャラクターの説明をしながら演出したら、あとは何も言わなくても大丈夫でした」

g04-05.jpg《意外な事に35mmでの撮影は初めてとの事ですが?》


井坂「そうですね。7本目にして初めてのサンゴー。今までスーパー16と24P(ビデオ)の作品でしたけど、撮ってて特別感覚の違いはないですね。これがデビュー作だったらガチガチになってたんだろうけど。撮影のペース的にはちょっとだけ24Pが速いかな。元々フィルムで育って来たからフィルムでやっていきたいというのは根っこにあるけど、これからは映画の題材によって使い分けるのがベストだと思います。『ミスタールーキー』は野球ものだから24Pだといくらでも回せて都合よかったし、逆に『マナに抱かれて』の時は自然が相手だからやっぱりフィルムの方がよかったかなと」

《井坂監督はいわゆる発注仕事というか、依頼の仕事が多いという事なんですが、どの辺りが一番難しいですか? 僕みたいな低予算のマイナー監督にはちょっと想像つかない部分もあるんですが......》


井坂「やはり東宝の邦画系くらいになると、いろんな人の意向があるのはしょうがないですよね。構えが大きくなればなるほどいろんな注文が増えて来て、自分で思っていない事にも従わざるを得ないところはあります。ただ逆に、自分だったら決してそういう風にはしないっていうのをやってみて、あがったものはどうなるのかな、という逆の楽しみ方もありますね。あがりが良ければ、なるほどと。抽き出しのひとつが増えたと思うわけです。」

《作品選びの基準は?》


井坂「今を生きている人間に一番興味があるんで、単純なSFとかホラーっていうものはあまりやりたいと思いません。原作やプロットの中に、現実に自分が生きている社会と何かしら関わっているテーマがあって、尚且つそこに自分の思いが盛り込めて、聞き入れてもらえるかがポイントですね」

《井坂監督というと僕の中ではウェルメイドな監督というイメージがあるんですが、演出される上で一番大切にしている事はなんですか?》


井坂「自分が観客だったらどう思うか、が基本です。こちらの言いたい事が伝わらなかったら意味がないし、どうやったら伝わるかをいつも考えて撮ってます。そのためにはあえてオーソドックスな撮り方も大事にしています」

《観客にとっての"分かりやすさ"って微妙ですよね。最近ヒットしてる映画って、一様にストーリーやキャラクター設定をとことん単純化・記号化する事で「ほら、分かりやすいでしょ?」っていう安易な方向に走っている気がするんですが......》


井坂「観客があまり考えなくなってきているというのはありますね。だからと言ってそこに合わせて作ろうとは思ってないです。目の肥えたお客さんも確実にいますから。ただ、あまりハイブロウな作りにしても、っていうのはあって。だから大事なのは映像で語る事ですね。伏線なんかもなるべく画で印象づけたい。脚本の段階では細かく説明のセリフが入っていても、現場でいかに減らしてゆくかを考えてます」

《今回はどういった観客をターゲットに?》

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井坂「もう、完全にデートムービーです。20代の女性をターゲットにしたファンタジーですね。リアリティよりカッコ良さ、ハラハラドキドキ笑って泣いてと。軽い気分で観られる娯楽映画の王道をやってます」

《では最後に『g@me.』の見どころを......》


井坂「今回は特機をわりと自由自在に使えたので、芝居場になればなるほど長回しをやりました。藤木君と由紀恵ちゃんの切ないシーンを3ページワンカットとか。これ見よがしじゃなく、いつの間にかワンカットになっているっていうさりげない使い方でやってます」

私も台本を読ませていただきましたが、近年の日本映画にはない本格的なラブ・サスペンスとなっている『g@me.』。
この秋、スタイリッシュな井坂演出に多くの観客が酔いしれる事必至!
ぜひ皆さんも劇場に足を運んでみて下さい。


(取材写真:高原秀和 取材協力:日笠宣子)
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