
表現の「不」自由を語っちゃおう! 【1】
第一回 スポンサーとの珍プレー?!
井坂:じゃあ、今日は宜しくお願いします。
一同:宜しくお願いします。
井坂:ま、『表現の不自由』と言ってもあまり堅苦しい話じゃなくて。ちょっと広報委員会の中で雑談してて、現場でこう馬鹿馬鹿しい色んな出来事もあるし、でも一見して馬鹿馬鹿しいなんて思ってると実は段々「誰が制約してんの?」って分からずに、知らない間に勝手に自主規制してたりとかって、本当に馬鹿なことにも繋がりかねないんで。まあ、面白おかしく話しながら色々な不自由とかを喋れればなと思ってますんで。えーと、どっから入りますかね。
舞原:手近なとこからいきますか。
井坂:手近なとこからね。
舞原:あの、例えばオンエア物。民放は必ずスポンサーがいるじゃないですか。ある企業がつくとその宣材使わなきゃいけない。で、他社は使っちゃいけない。これ、まあテレビだからしょうがないなって思ってんですけど、最近拡大解釈がされてきて、例えば、まあ、あんまり具体的に言っちゃ駄目なんで「チューリップの花社」ってのがあったとするじゃないですか。
井坂:(笑)
舞原:で、こっちに「桜の花社」ってのがあって、これ競合なわけですね。で、「チューリップ」がスポンサーなわけです。学校の話です。撮ってて入学式だったんで花吹雪の下くるわけですよ。それで終わりました。で、スポンサー試写の時にその「チューリップ社」の方がきて、見て「すいません。撮り直しお願いします」「なんでですか?!」って言ったら「桜の花が映っています」
一同:(笑)
井坂:自然の物で季節の物だけれども、他社を想像させると。
舞原:そうそう。桜の花という物は「桜の花社」を想像させるでしょ。うちは「チューリップの花社」なんです。撮り直しになりました。
井坂:テレビ?
舞原:テレビです。余裕のあった頃は撮り直しできたんですけど、今のスパンじゃ撮り直しできないですね。
内藤:はあ、なるほど。
舞原:試写でアウトですから。
内藤:逆に俺ねNHKの、NHKはフィルムで撮った時、助監督やってくれって言われてやった時に、あの、NHKはビールのラベルなんか美術さんが持ってるんですね。もうオリジナルのラベルを。だけど、どうしたってロケいくと、特にあのスーパーのシーンとかいくと商品映ってるわけでしょ。これはもういい、しょうがないと。これはもうあるもんだからしょうがない。逆にスポンサーがいない分いいんですよ。
一同:ほお。
内藤:何が映ったって。
舞原:なるほど。
内藤:うん。これはもうしょうがないんですと。その時、山城新伍さんが出演されてたんですけど、カメラマンが「ちょっと新伍さんの前にどん兵衛、手前ナメるから積んで」って(笑) (注:『ナメる』-撮影用語。手前に置いた物や人物を大きく入れ込んで撮る時に使う。)
一同:はははは(笑)
内藤:ええんかいなと(笑) でもね、プロデューサーが始末書一枚書けばOKですよ。それを放送しましたからね。
井坂:へえー。
内藤:だから意外とNHKは自由なんだなという。スポンサーがいない分。
三島:ああー、そうですか。それはなんかすごく古き良き時代だったんじゃないかな(笑)
内藤:今どうですかね?
三島:今は私もちょっと六年前までしかNHK知らないんですけど、まあやっぱり少なくとも自動販売機とかは隠してましたし。
井坂:あっ、隠しましたか。やっぱり。
内藤:余談ですけど、ロマンポルノの役者さんを最初に使ったのがNHKなんですよ。片桐夕子が時代劇のゲストで、僕リアルタイムで見て、片桐夕子がテレビのブラウン管に出てきたことで、えらい興奮した。だけどNHKなんですよ。つまりスポンサーの制約がないんで、逆にNHKでロマンポルノ見てるディレクターが「あっ、この人いいね」っていうことで使ってるんですよ。で、風間杜夫もだから朝ドラのレギュラー、『雲のじゅうたん』のレギュラーで、やっぱりそれもロマンポルノで売れてたんで、で、もう本名だとNHK出られなくなるっていうことで風間杜夫っていう芸名つけたのにNHKからレギュラーがきた。それは何故かっていうとスポンサーの制約がつかない。民放だと絶対スポンサーからポルノの役者使うなっていうのがきたのが、NHKはそれがないっていうの。
舞原:なるほど。昔だったらそういうこともテレビで本当にあったんですね。
内藤:だからテレビ史上初のキスシーンっていうのはNHKなんですよ。
舞原:ははあ。
内藤:あの、日本のドラマで。それも俺リアルタイムで小学校の時見たけどびっくり。杉浦直樹と里見京子でしたけど。夫婦の話で、本当に日本人がブラウン管でキスするっていうのを初めて、それまで外国のドラマでは見てるのに、日本人で見てびっくりした! だから、たまたまそれを撮った監督についたんですよ、NHKで。都成潔さんっていう方で「そうなんだよ。俺が初めてなんだよ。日本初なんだよ」って。「それはやっぱりすごい話題になったんだよ」って。「だけどNHKだからできたんだ」って。当時、民放だと絶対スポンサーがOK出なかった。
舞原:本当にそれは世間的な評判としては、オンエアした頃はどうだったんですかね?
内藤:どうでしょうね。その当時の評判は知らない。やっぱり色々それは意見はあったらしい。だけどそれが突破口になって、もう放送しちゃったからっていうことで、そっからキスシーンが日本のドラマでもやれるようになったんですよ。意外とNHKってのはね、スポンサー絡みがない分。他にね、もちろん民放でない色んな規制はあるんだろうけど、意外と自由な部分もあるんだなっていうのが。
見せたらダメよ。隠してね!
井坂:助監督の時に、火サスのマニュアルってのがあったんです。マル秘だったんですけどね。
内藤:俺も助監督やった時見せられたことありますよ。
井坂:ありますよね!
内藤:スポンサー、家電が出てくる場合にはこれのこととか、何に関してはこれと割と具体的な指示が。
舞原:×××の室外機! 滅茶苦茶うるさくて、他社、室外機でも映すと駄目だっていうんですよ。だからそれ用の箱持ってって(笑)
内藤:へえー。
井坂:もう火サスなくなったから言っちゃってもいいけど。例えば今の×××だと、事例としてこういうのが。団地の情景をずうっとパンして、そしたらベランダに全部××××の室外機が入ってるっつって。それで、室外機のとこでカットして、こうやって飛ばして。
ヤマサキ:えっ、でもガタるじゃないですか。
井坂:いや、でもそれでもしょうがないっつって。
ヤマサキ:あっ、そこがすごいですね! そこの割り切り方がすごい(笑)
舞原:車もうるさいですよ。その前の『太陽にほえろ!』僕やってたんですけど、悪人の車に関しては外車でしたね。必ず。
内藤:あっ、それは聞きました。悪人は他メーカーってのは聞きました。
井坂:昔決まって、だから、ちょっと知ってるとね(笑)
舞原:ええ、ええ。必ずひっくり返ると、ガラガラガラガラ(笑)
井坂:で、誰が乗ってると。あっ、この人悪い人って分かっちゃうっていうかね。
ヤマサキ:今はでもそうなんすか? 今はでもねえ、外国っつってもBMWだとか、そういうところってやっぱり日本にメーカーとしてあるじゃないですか。
舞原:ええ。
井坂:今はだからね、笑っちゃうのは、例えば車を映すじゃないですか。全部エンブレム隠すんですよ。
ヤマサキ:ああ、なるほど。
井坂:そう。どの車、例えば車のスポンサーついててもですね、とにかく目立たないように目立たないようにって。
ヤマサキ:それはガムテープかなんか張っちゃってそのボディー色に塗るんですか?
井坂:それとか、もう要するにそこにペタッと張れるような物を、それこそラベルじゃないけど用意しておいてベンツのマーク隠しちゃったりとか。
ヤマサキ:ああなるほど。
内藤:車のファンはもう型だけで......。
井坂:ええ。まあ、それこそね。車なんて形見りゃ誰だって分かっちゃうし、そんなもんなんで隠す必要があるのかなと? 昔、それこそ『特捜最前線』やってた時って、車のシート持ち歩いてたでしょ。
舞原:はいはいはい。ありました。
井坂:駐車場にいって他社の車があると、それに全部シートを被せてく。
舞原:やってましたよ。
ヤマサキ:へえ、あっ、そう。
内藤:自動車のメーカーがあれだと交通事故は駄目だとかね。
舞原:駄目ですね。
内藤:だから石原プロとかが強かった。石原プロの『大都会』、日産がスポンサーだった時、もうカーチェイスがんがんやって、あれは石原プロだからできたっていう。
井坂:そういうんで困るのはさっきも出たけどスーパーマーケット。民放ではもうとにかくスーパーマーケットのシーンになると全部こう物を裏返しにして(笑)
舞原:名前見えないように(笑)
内藤:やりました。やりました。
井坂:それで結局面倒くさいから、もう野菜売り場にしようとかって(笑)
舞原:はいはいはい(笑) 魚か野菜か肉かっていう(笑)
井坂:もうとりあえず手っ取り早いですからね。それにスポンサーの商品でも積極的に映さないでくれって今言われてきてるんですよ。昔はスポンサーの商品だったら、例えば洗剤でも、台所洗剤でもね、ちゃんとラベルがある程度見えるように置くっていう。今はちょっと捻って露骨にしないでくれっていう。
内藤:そういえば昔、(高倉)健さんの映画『駅-STATION-』かなんか放送された時にビールのラベルにモザイクが。
舞原:入ってましたねえ。
内藤:ねえ。なんかあれ。
井坂:もう、でもそうなっちゃうとね、何を見せたいんだって話になっちゃって、そんなことに気がいくのかいっていう。
内藤:まあそうですよね。
舞原:みっともないっすよね。あの、こうボヤボヤボヤって入ってるのが。
内藤:もうなんかねえ。
舞原:そっちに目がいっちゃう時がある(笑)
井坂:競合してるスポンサーの物をアップで、わざと撮ったとかいうんだったらそれは問題だけど、街の情景撮ってたり、例えば街で車走ってんの撮って他社が映っちゃいかんって、じゃ、その社で日本の車全部作れよっていう話に(笑)
ヤマサキ:ははは。そうですよ。
映画はどうなの?
舞原:でも、テレビってもうスポンサーしょうがないじゃないっすか。映画ってどうなんですかね?
井坂:いや、映画でも最近はありますよ。やっぱりその、極端に言ったら例えば主人公、主人公がコマーシャル出てるじゃないですか。そうするとその製品しか使えないんですよ。
舞原:それはそっからお金が出ているというわけではなくて。
井坂:まったく。
内藤:えっ、そうなんですか?
舞原:単純に役者の事務所に気をつかってるということですよね。
井坂:まっ、契約があるので。auのコマーシャルに出てる俳優だったら、当然au持たなきゃいけない。周りもやっぱり使う物は全部auになってくる。
ヤマサキ:まあ、SMAPだとSoftBankじゃなきゃいけない(笑)
井坂:今、SoftBank。で、ちょっと前までdocomoだったじゃないですか。
ヤマサキ:docomoですよね。
井坂:どうすんだっていうね(笑)。あとはやっぱり飲み物なんかも全部、その映画のスポンサーじゃないけれども、役者さんそのものがタレント扱いになってるんで、そうすると競合メーカーを例えば飲むってことは絶対できないとか。
内藤:逆の場合ありますよ。ある映画で主人公が新聞広告でジュースの宣伝を見て「ああ、喉が渇いたな」っていうシーンが、それはシナリオにあったんですよ。そしたらもう、あっとこれはっつって某清涼飲料水メーカーから宣伝のロゴをもらってきて「はい。これ使ってください」。それは必要だからアップで撮って、いくらか出てるはずなんですよ。
舞原:なるほど。
内藤:逆にそれはうまくいったなという。それから昔の日活映画でよくありますよね。
舞原:あっ、そうですか?
内藤:あの、もうそれこそ『東京流れ者』でありますよ。渡(哲也)さんと二谷(英明)さんが「これは何とかの何々シェーバーですか。いやー、これは使いやすくていいですね!」って言う(笑)
一同:(笑)
内藤:日活映画って必ずあるんですよ。
舞原:石原プロもなんかありましたよ。聞き込みで「×××の×××。これは、美味しいなあ!」って食ってる(笑)。あれのシーンがありましたね。
内藤:でも映画でやってたんですよね。日活映画なんか、アクション物でそうやって商品名を口にして、こう持ってるっていう。そこはもらってるんでしょうね、お金を。だから。
舞原:あれも上手い監督と下手な監督がいて、モロ言う人と、例えば旅支度をしてるとパッと見ると外にライオンハミガキっていうネオンがパチパチッ、パチパチッってなってるっていう情景でちゃんと使える監督と。
内藤:『王将』で、それこそ坂田三吉が通天閣通ってるでしょ? あれの広告のメーカーが作品によって違うんですよ(笑) ライオンハミガキだったり。
舞原:あっ、そうですか?!
ヤマサキ:確かになんかね、違ってるんですよ。
内藤:そうそう、三田佳子さんが出た時に酒樽、これはスポンサーから持ってきましたのね。映してよっつって。
舞原:なんか、どうせならそういう風に持って来てくれるならまだあれですけどねえ。
内藤:ただ中身がなかったんでね。そこに気が回ると。だったら中身入りで持ってこいみたいな(笑)
舞原:「あれ?」みたいな(笑)
ドラマが先か、CMが先か?!
舞原:まあ、でもスポンサーの話はかなりちょっとやばくなってきてですね、結局、今ハードディスクにみんな録画しちゃってまとめて見るわけですよね。ドラマでも何でも。そうすると必ずCM飛ばしちゃうと。で、スポンサー自体がCMやっても効果ないっていうことになってきて、ドラマの中で使う物に自分のを使ってくれっていう話になってて、まあ具体的にちょっと言えないですけど、主人公が着てる服をリアルタイムでインターネットで買える。
ヤマサキ:ああ! そうですね。×チャンネルの方でね(笑)
舞原:ええ。売りになってきたんですよ。で、そうするとどうなるかっていうとですね、「うちのこの服のデザインは襟が売りですので、襟のアップは必ず撮ってください」っていうのが入ってきます。
内藤:ええー。
舞原:で、もっとそれだったら、今はそこまでなんですけど、多分今後その服が良く見えるようなドラマにしてくださいっていう、内容に関して多分入ってくるんです。
ヤマサキ:なんかアニメっぽいですね。それね(笑) アニメってそうなんです(笑)
舞原:ドラマの内容まで口出されるのはとっても嫌ですね。うちの服が、例えば引き立つようなドラマにしてくださいって。今後多分なってきますね。
内藤:ありますねえ。きっとねえ。
井坂:うん。確かに今リアルタイムってね、その、双方向になってきて。
ヤマサキ:基本的に実写ってCMスポンサーってあくまでCMでそこに提供だけしてるって感じでしょうけど、アニメーションってアニメの番組自体が広告なので、だから玩具メーカーさんがスポンサーだと玩具を売るために、販売ローテーションで「そのロボットは発売の何週間前には出してくれ」と全部決まってるんですよ。で、販売スケジュールに合わせて登場予定が全部決まって、シナリオも書くんです。『サザエさん』なんかも、家電の新商品が出るとさりげなく居間や台所の家電が入れ替えられてます。(笑)
井坂:そうですね。確かに。
ヤマサキ:なんかアニメだけじゃなく実写も番組自体がCMになるんですかね?これから。
井坂:でも、そう......。でも、そこまで......。
舞原:今、そろそろなって、今年、今季のドラマはそろそろなってます。
井坂:じゃあ、着崩して着るなんてありえないんだ。
舞原:駄目です。それを例えば破いちゃうとか、ありえない。
内藤:はははは、そっか(笑) なるほど。
井坂:そうすると破く服は全然別のユニクロとか着て(笑)
内藤:ユニクロ(笑)
ヤマサキ:それはユニクロから問題が(笑)
舞原:破くシーンはなくなるんじゃないですか。
井坂:ああー。
内藤:そうすると悪人が着てても駄目?
舞原:悪人はもうジャンパーとか作業着が(笑)
内藤:主人公がじゃあ犯罪犯すドラマが作れなくなったりとか。
舞原:ですねえ......。
ヤマサキ:でもカッコ良く着てれば。
舞原:そう。分かんないですよ。主人公が赤いコートを着た女の殺人者とか。だったらアリじゃないですかね。
井坂:ああ。
内藤:シナリオの融通も効かなくなるよね。
舞原:いや、本当に怖いですね。今後。みんなビデオで見るようになって怖くなりましたね。
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