このページの先頭です


特集

日本映画監督協会 会員名鑑

特集

映画を学ぶ/映画を教える・後篇 座談会

【「映画を学ぶ/映画を教える」座談会・後篇】

前回に引き続いて、『映画を学ぶ/映画を教える』というテーマでの座談をお送りします。後編は『映画を教える』をテーマに、映画学校、大学の映画学科等で実際映画を教える立場にある3名の監督、高橋伴明さん、細野辰興さん、篠崎誠さんをゲストに迎え、それぞれの立場から『映画を教える』について自由に語っていただきます。司会はやはり、映画学校で映画を教える立場にある緒方明さんです。(構成/山本起也、緒方明 撮影/檀雄二)


緒方:この中で講師歴が一番古いのは細野さんですね。どれくらいやってます?
細野:えーとね、監督になる前からやってるわな(笑)。
高橋:あっそう?
細野:90年の4月からかな?だからもう、ほら、鬼や蛇のような酷い監督にばっかり就いてて(笑)、助監督やーめたっていう(笑)もうヤダって言って、で、相米さんの「東京上空いらっしゃいませ」のチ manabuko01.jpgーフを最後に自分の企画を立ち上げようと思って一生懸命やってたんだけどうまく行かなくて半年ぐらい経っちゃって。で、その頃、今村プロに居た武重(邦夫)さんね。俺の恩師でもあるわけだから、横浜放送映画専門学院の時の。なんかで偶然遇って「お、何やってんだ?」って、いや、そういう事なんですなんて云ったら、一年ぐらい前にゴジさんの仲介で講師やったこともあったから、「じゃあ、来る?」みたいな話になったんだよね。おうおう。渡りに船みたいなね。それがきっかけですよ。
緒方:それは何が「渡りに船」だったんですか?
細野:まあ、これがね(指でお金のサイン)、「助監督、辞~めたッ」て言って収入の道を閉ざしちゃったから。
緒方:篠崎さんはどういう風に講師、始めたんですか?
篠崎:僕は学校の立教の文学部に心理学科っていう所があって、そこを出て映画館で働いたりしてたんですね。で、フラフラしながら金貯めて、最初の映画を撮った後に、たまたまその当時の立教大学の総長になった人が自分の卒業指導の先生だったんですよ。ロクに授業も出てないで書いたレポートで卒業を認めてくれた先生だったので。で、どういう経路か分かんないです manabuko02.jpgけどやってみないかという事になりまして。まあ自分としても一年ぐらいのつもりでこれでいいのかなと思いつつ、とりあえずじゃあやってみようかって言ったのがたぶん99年ですかね。で、もう今年こそ辞めるって思いながらズルズルやってったところ、去年新しい学科が出来て結局そこでやる事になったって言うのが実情ですね。
緒方:最初に講師やった時はもう監督になってました?
篠崎:最初の一本目、『おかえり』を金貯めて借金して作り終わって、2、3年経ってましたかね。
緒方:細野さんみたいに多少は、渡りに船みたいな感覚も少しは?
篠崎:あー、いやーでもね、全然金にならないですね(笑)
細野:そうなんだよね(笑)ホントにね。大して金にはなんないんだもん。
篠崎:だって授業の時間の中で何にもやりようがないじゃないですか、1時間半くらいじゃ。結局終わってから飲み連れて行くとか。学生たちは金がないじゃないですか、だから出る事の方が大きくて。面倒くさいなと思いながらっていう感じですね
緒方:伴明さんは今年からですか?
高橋:今年の4月から
緒方:どうしてまたやる事に?
高橋:いや、ほら、監督協会で『映画監督って何だ!』撮った時にやっぱり林海象に苦労かけたじゃん?で、海象からちょっと手伝ってくれないかって言われるとやっぱしなあ。義理だよな(笑)。
緒方:じゃあ海象さんのことは考えても若者の事はあんまり考えていない?
高橋:おれ元々嫌いだもん(笑)。学生のほら、チャカチャカフィルム manabuko03.jpgとか言ってたもん、チカチカフィルムとか。貶しまくってたんだからさ。
緒方:行ってどうでした、まず、思った事は?
高橋:いや、大学のなんていうの、システム覚えるのがまず大変だよね。人間関係とかさそういうのを押さえとかないと...、
細野:「白い巨塔」になっちゃう(笑)。
緒方:今何人ぐらい担当していらっしゃるんですか?
高橋:今、1年と2年でそれぞれ30人ずつ。
緒方:それはゼミみたいな形式ですか?
高橋:2年はゼミです。
緒方:実際それで、海象さんへの義理で行って、若者と出会ってどうでした?
高橋:なんか、機械遊びは出来るけど、基本を知らないよなって言うのがまずあったよな。だって映画ってどうやって作られるのかって事、知らない奴がほとんどだよ。
緒方:まあ、そりゃあそうでしょ、18,9で
高橋:だからその、スクリプターなんていう仕事が例えばあるって知らないよ。
緒方:細野さんは最初どうでしたか?講師になったばかりのころを思い出してもらいたいんですけど。
細野:ぼくは前身の横浜の二期生だから、講師になった当時で言えばまだ学生の方の気分に近かったかな。助監督やって8年とかの時代だからね。そういう意味では別に何の抵抗もなくスルッと行ったかな。年が学生とそんなに離れていないわけだからね、まだ。それに当時は今と比べればほんとに日本映画好きとかって奴が結構いたわけだから。それはある意味で抵抗感なかった。
篠崎:やっぱり学生は変わった気がしますよね。この数年特に。みんなまず映画も観なくなっちゃったし。なんで観ないのかな。やっぱりなんか観て、気持ちが動いて、映画って面白そうだなとかそういう出会いの1本があったり。なんでもいいんですよ、エキストラでたまたま行って現場面白そうだったとか。そういう事が全然無くって、でもなんか監督になりたいとかプロモーションビデオ撮りたいとかって言うんだけど、じゃあどんな映画好きなのって言うと、別にないんですよね。
一同:うん、うん。
篠崎:学生がどの程度映画観てるのか分からないから最近映画館で観た映画何だ?ってアンケート絶対やるんですよ最初に。そうすると堂々と『ドラエもん』って書いてあるんですよ(笑)。それは色んな映画を観た挙句に、『ドラエもん』まで観てるんじゃなくて、つまり子供の頃に、親父とかお袋さんと一緒に映画を観に行って以来映画館行ってない。でも、それでも映画がやりたいって言うのが、ちょっとよく分からない。数はどうでも良いんですよ、数を観てるとか観ていないとかじゃなくて、なんか出会いの1本なりなんなりで、映画で人生狂ってるっていう感じの人が少なくなったなって思って。で、さっき高橋さんがおっしゃったみたいにカメラの事はある程度っ分かったり、コマゴマと何か色々やるお兄ちゃんは居るんだけど本当に映画が好きなのかなんだか良くわかんないですね。うん。
緒方:うーん。まあここから段々本題に入っていくわけですが...。そんな学生を前にして皆さん、これ manabuko04.jpgからどうしましょう(笑)?映画観てない学生が増えてるわりには映像の学校は急速に増えていて、なおかつ学生のとりあいになったりしてる状況があって...。
細野:うちも受験者数は減ってるね。今村監督が『うなぎ』で二度目のカンヌ・パルムドール獲った時は4倍とか5倍とかっていう時期ありましたよ。その時は落とすのが大変だった。それは辛かった。だからその時今村さんがカンヌで獲ったから来るっていうコマーシャルリズムではあるけど、でもそういう事は映画が好きだから来るっていう事でもある訳だ。関心がある訳だから。だからそういった意味じゃ、おう、コイツと一緒に仕事やりたいなみたいな奴は、結構いた。そういう感じはあったなあ。
高橋:あのねえ、俺の知ってる時代性から言うと俺らが学生時代のころって、映画を好きとか映画の仕事をしたいなんつー奴はホンッと一握りも居なかったと思うんだよ(笑)。やっぱりね、普通の良い大学入ってさ、まあ、一流企業入るなり大臣なろうと思ってるとか、医者だの弁護士だのそういう所に、行き着くために大学に入ってた奴が殆んどだと思うんだよね。で、その後さ、横浜を筆頭にさ、なんか、映画好きで、ひょっとしたら、その、監督なり技術者に成れるかも知れないみたいな希望を抱いて学生がそういうとこ集まった時代があったと思うんだよね。で、今ってさ、そんなに映画好きでもない、で、いわゆる世にいういい大学に入れなかった、けど、手軽にまあビデオを筆頭に、目の前に物はある。だから来てみましたみたいな感じはある。で、たぶんこれね、ゆとり教育の功罪かもしれない。
一同:(笑)
緒方:専門学校と大学では方針も違うんですかね。日本映画学校は割りとプロを育てるという事を一義的にやってきましたよね。伴明さんの助監督にも日本映画学校出身が沢山いるでしょ。
高橋:8割がた。占めてたよね。一時ね
緒方:大学の方針としてはどうなんですか?
高橋:いや、大学の方針とこっちが思ってる方針とは違うかもしれない(笑)。先生一人ひとり感覚違うかもしれない。俺はやっぱりプロの人間を育てたいと思ってるよね、今は。
緒方:そのプロっていう事は、作家ではないという事ですかね?
高橋:いや、作家でも良いんだけど要するに、現場で使える奴を育てるという意識は強いかな。
細野:日本映画学校の場合、かつて今村さんと俺と一緒に並んで、受験の面接なんかした事ある訳よ。で、どうやって合格基準を決めるかみたいな時に、今村さん一言だもんね。「一緒に仕事をしたいかどうかだ」って。それだけ。つまり現場行って役に立つかどうか分かんないけど一緒に仕事して楽しそうな奴とかね、才能、人間性もひっくるめて。だからプロっていうか現場人間養成と言うか。
緒方:まあ、要するにダマして今村プロに入れようとしてると(笑)。
高橋:猫の手に使おうとしたのかも
細野:いや、その頃は今村プロにはあんま皆入りたがらない時期じゃなかったかな(笑)。だって知ってるからさ。厳しさとか、経済状態とか(笑)。俺の当時は、何も知らなかったし、今村監督の映画の創り方を知りたかったから、俺は卒業して行っちゃったけど。
緒方:篠崎さんは自分が教える側に回った時にどういうスタンスでやってるんですか?
篠崎:なんかノウハウがある訳じゃないし教科書とかそういうのがある訳でも全然ない。だからとりあえず映画観てないから、ま、色んなジャンルの色んな映画ですよね、ドキュメンタリーだろうが、無声映画だろうが、時代劇だろうが。だからそういうのを見せつつ、あとまあ、 manabuko05.jpg学校にビデオカメラがあったんで、じゃあ、それ使ってなんかとりあえず撮ってみようつって。であの、『映画監督って何だ!』のシーンじゃないですけど、短いセリフを学生に書かせて、同じセリフ、登場人物2,3人で数秒でも良いから、そういうのを手探りでやってる感じですよね。だから結局大きな命題になっちゃうんですけど、映画って教えられるのか?って言ったら、やっぱ教える方法はないんですよ。勝手に感じれば良いんで、僕自身もそうだったんですけど。例えば僕が立教に行った時には、82年に入学したんですけれど、当時は、蓮實重彦さんがまあ映画の授業やってたんですけど、でもやっぱそれが取っ掛かりで、最初の授業か2回目の授業の時に、周防正行さんが丁度、高橋さんの『TATOO(刺青)あり』の前売り券を売りに来たんですよ。
高橋:偉い(笑)。
篠崎:君らの卒業生から一言なんかあるって蓮實さんが紹介して、周防さんが教壇に乗っかって。ぼくは生まれて初めてクレーンを動かしましたみたいな話をしてですね...
緒方・細野:おー。
篠崎:で、凄い盛り上がったんだっていう話をしたんですね。雨を降らしてクレーンをこうやって動かしたって言って。それで、前売り券、俺買いに行きましたもんね、自分の。なんか結局そういう事が大きい様な気がするんですね。で、あとは丁度ディレクターズカンパニーの立ち上げの時だったんですかね。根岸さんの『探偵物語』を立教大学で撮影して...。
細野:ああ、俺行ってる行ってる、助監督で。
篠崎:ホントですか?僕もなんか汚いプロレス団体かなんかをやったり、薬師丸さんが来るって言うんで行きましたよ。ギャラはなかったけど。前売り券くれるって言って。結局くれなかったですけどね(笑)自分で買って行きましたけど。
細野:やばいな(笑)
緒方:立教の場合は映画の授業は映画人を育てるという事ではなくて、大学のアカデミズムの一環としてあるっていう感じですか?
篠崎:一般表現てのがあって文学部だったら誰でも取れて。で単位になるからこっちとりゃ楽勝だと思うわけですね、まあ、映画観て単位くれるならいいやって思って行ったら蓮實さんがまあ、面白いおっさんだったんですよね。話自体が落語の講座聞いてるみたいな感じで。とにかくその、知識の量じゃなくて、あ、この人本気で映画に対して怒ったり惚れこんだりしてるっていうのが見える訳ですよ。それが一番大きかった様な気がするんですよ。
緒方:何人ぐらい受講するんですか、その授業って言うのは?
篠崎:ええっと、最初の授業はね、2,300人居るんですよ。
細野:あ、大講堂でやるんだ
篠崎:デッカイ所でやるんですよ。で、授業始まってどんどん減っていくんですよね。
緒方:へえー。
篠崎:半期過ぎるともう大体もう2,30人に減って、小さな教室に移って。で、その頃はビデオなんて出始める前ぐらいだったもんですから、来週までにこれ観て来いって言う訳ですよ。それがまあ色んな映画ですよね、ある時は『カリフォルニアドールズ』っていう女子プロレスの映画を観て、もうこれを観て興奮して俺は2,3日眠れないんだっていうのを蓮實さんがなんか言いながら。授業なんかもうこのまんますぐ辞めて行っても良いからすぐ観に行きなさい見たいな事言ってて。で、観てホントに面白かったんですよ。で、あっ大学の先生ってもっと、ヴィスコンティとかフェリーニとか、なんかそういうのを褒める人かと思ったら、なんかそうじゃなくて、そういうアクション物だろうがなんだろうが、映画として面白い物を見ようって言うのが凄く伝わってきて、それで結構その、色々観るようになったんですよね。例えば当時は黒澤明さんの映画を、蓮實さんがちょっと貶し気味だったりするんですけど、でも学生には言う訳です、「俺は少なくとも全部付き合って観た上で文句言ってんだから、俺がつまんないって言ったから、見なきゃいいとか、貶しゃいいって訳じゃないから」とかね、あるいは「お前ら映画好きだって言うけど、一回嫌いになるぐらい観てみろ」とか言われるんです。
緒方:煽るわけですね。
篠崎:だからそういう挑発はやっぱり、今考えると上手いんだろうなという事は思いまし
たよ。
緒方:面白いと思うのは立教って言うのは当時日芸とか横浜みたいに、実習中心ではなくて座学ですよね、基本的に。
篠崎:ええ、そうですね
緒方:にも関わらず、今、映画界に立教出身、篠崎さん、黒沢清さんとか青山真治さんとか結果として映画人が育っていっちゃった訳ですよね?実習無いのに。
篠崎:なかったですよね、逆にその撮り方とか教えようがなかった、って言うか教えられないから自分達でやっぱやるしかないじゃないですか?それがかえって却って良かったのかもしれないですよね。だから要するに、映画と付き合うんだったらもうちょっと本気で付き合えって言ってる事を言ってただけなんで。
緒方:なるほどね。
篠崎:だからそういう意味では凄くなんか良かったですね。僕凄く印象に残ってるのは学生が作った8mmを観るんですよ。最後の授業とかに。で、その時にこう映写機用意して、で、まあ蓮實さん結構背高いんですけど、一生懸命背伸びしながら、こう、カーテンのスキマから光が漏れないように、背伸びしながらガムテをこう貼って、一生懸命背椅子の上に伸びしながら貼ってたりするのを見たときに、あ、やっぱりこの人本気だなって思ったんですよね。
緒方:なるほど(笑)
篠崎:うん、あの学生の8mmだからチャラチャラ見ようじゃなくて、で、見た上で、ち
ゃんとこうなんて言うんですかね、思ったことを言うとかね。うん、そういう意味
ではやっぱり面白かったですね。うん。
緒方:先月「映画を学ぶ」をテーマに座談会を水谷俊之さんとガイラ(小水一男)さんと僕でやって、自分たちはどう映画を学んできたのかを話したんですよ。それこそ僕らは現場が学校だった、現場で一緒に同じ釜の飯を食うことや酒を飲むことこそが「学ぶ場所」だったと。我々はそういう風に70年代から80年代にやってきた訳じゃないですか、そうするとどう考えても映画を学ぼうと思ったらプロとして現場に入るのが一番早道なんじゃないかって思えちゃうんですよ。
高橋:まあそうだよね
緒方:そういう時に、学校で何を教えればいいのか?
高橋:いや、俺の助監督何人かねえ監督になってるけど、結局あいつらは俺を反面教師として映画を覚えたと思うのね。で、俺は今学生にとっては反面教師になり様がないのよ。この、俺の駄目さ加減を見せようが無いんだよ。
緒方:現場じゃないから?(笑)
高橋:うん。映画的な駄目さ加減を。だとすれば、まともになろうと思った。だから manabuko06.jpg結局どんな映画撮ろうが、どんな撮り方しても良いんだけども、一応、その映画の文法みたいなものはあるんだぞと。その基本というかね。で、それを知ってから、自分達の撮り方なり、方法論なり、まあ、映像なりを作れば良いと思ってるんで。俺なんか漢字から教えるんだ。
一同:(笑)
緒方:何?「撮影」とかいう字から教えるんですか?(笑)
高橋:いや、俺使ってるのはね、あの、中学入試の問題。小学生が受けるやつな。それやらせるんだよ。それでいかに自分達が字と言葉を知らないかっていう事をまず分からせる。
緒方:それ自分で考えたんですか?
高橋:やりたかったんだよ、最近の奴らの書いたもん見ると腹立つのよ(笑)。字は無茶苦茶、もう日本語になってないみたいなね。それはずっと思ってたんで、先生になったついでに絶対漢字と言葉の授業やってやろうと思ってた。
細野:そろばんもやればいいのに。
高橋:いやいや、それは別の先生がやれば良い(笑)
緒方:今は1年2年どういう事をやってるんですか?
高橋:1年は、えー、まあ漢字のテストだな(笑)漢字のテストと、それと映画ってどうやって出来るのかと。企画から公開まで。で、その流れの中で、どういう人達がどういう風に関わっていくのか。それ一年生。
緒方:それは座学が中心になっている?
高橋:そうなっちゃう。それでまあシナリオの書き方みたいなの、基本を、こうシーンナンバーがあって、柱があってしゃべる奴はその名前を書いて、鍵カッコで、みたいなね。5分間ぐらいの書かせたばっかりだね。後半は全員書かせたから皆に読ませて。それをまあ、映像にしてみようというのを、5本選ぼうとか、4本選ぼうとか。それは企画会議だよ。で、もう、どういう意図だとか、けなしたり質問させたりするんだ、お互い。それでちょうど4本選ばれたのね。、今度からは、ちょっと小さいスタジオがあるんだよ。そこで実際に班分けして5分の作品を撮らせる。で、撮らせる中でなんかまた基本的な事をね、あの、教えられると思うので。
緒方:その流れは伴明さんが自分で考えたんですか?
高橋:そう。
緒方:学生との意識のズレはありませんか?
高橋:それはね。ズレは覚悟してたよ、もう最初から。だってもう別の人種でしょ?いい大学入れなかった奴ばっかりだと思ってるからさ(笑)。
緒方:映画を観せたりとかはしないんですか?
高橋:いや、俺もっとしたかったんだけどもったいないと思ってさ。観せたら終わっちゃうもん、授業が。
細野:そうなんだよね。
高橋:本来はね、そら、専門学校だったらまず観せてその後また時間取って、その映画についてみたいな事できるんだろうけど。もう観とけって言うしかないよね。まあ観せた事もあるんだけど。2回生にはね。それで時間がほぼ潰れちゃうんで、勿体無いなって感じがしたんだ。だから、映画は自分で観てもらう。
緒方:2年は?
高橋:やっぱり2年も漢字をやって(笑)。あとはもうちょっと長いの書かせる。それと2年生にやったのは例えば目線の取り方とかね。実際にカメラ持ってきて生徒置いて、で、こいつとこいつが話してると。キーライトどう考えるかとかね。
緒方:ああ、そういうこともやるわけですね。
高橋:やっぱり。窓がこっちにあって、ここにから光源が来るとすると、切りかえした時
に、同じ様にこの光がこういう風に当たってるのはおかしいだろうとか、まあ、そういう事やってるよね。
緒方:どうですか、2年になると意識がやっぱり変わってきてますか?
高橋:いや、なんか知らなかった事ばっかりみたいで、それはそれなりにある発見をして
行ってるんじゃないかと思うよね。20分モノ2本撮らした訳。で、今編集中なんだけど、それがねどう反映されてるか。それをこれから観るんでね、今何とも言えないんだけど。
緒方:その20分の作品については基本的には口出しはあんまりしないわけですか、内容
については?
高橋:現場行ってあまりにもてこずってるときは、ちょっとこうした方がいいよっては言ったけどね。
緒方:ホンに関してはどうですか?伴明さんの意見は大体通るでしょ?そりゃ大体正しいもん。ここのシーンちょっとこうした方が良いんじゃないのみたいな事言うんですか?
高橋:俺は質問しながら否定するから。質問の仕方で否定されてるなってあいつらだって分かってる。それをこう直してきたりする様にさせる。
緒方:なるほど。細野さんは今、2年、3年と持ち上がりでやってらっしゃいますよね?どういうことからやって行くんですか?
細野:17年前にね、講師として戻った時に、とにかく実習をやると。今の伴明さんのスタイルじゃないけど、例えば学生達が出したホンを何本か選ばせて書いた奴が監督やるって言うね、そういう事になってくるわけだけれども。で、それだけしかやっていないと、限界が見えてきた。限界って言うと偉そうなんだけど。だから今日の命題でもある映画を教えることが出来るのか? というか、映画を教えるという事はどういう事なのかと言った時に、結局さっき、伴明さんは反面教師だって言い方してましたよね。
高橋:うん。
細野:反面教師としての自分を見て助監督だった奴が映画撮っていったみたいな。そういう事だと僕たちも思っていた訳ですよね、その時に。じゃあ、自分が曲がりなりにも、5分でも10分でも15分モノでも...、要するにその、ものすごい短編でも真剣にちゃんと映画と対峙している所を学生達とやった方が良いだろうなって。そういうカリキュラム、授業作ろうよっていうって言う様な事で4年ほど前から始めたのが15分エチュードです。講師が撮るという授業を始めたんですよね。 manabuko07.jpgこれを2年次、演出コースの最初にやります。だから、やっぱり、映画を教えるっていうのは、凄く難しいし、恥ずかしい事だって感じがしないでもないんだけれども、でも、駄目なホンでも何でも、誰かが書いた奴で、まあここなら何とか、この一点だけなんとかやりゃ、何とか映画になるだろうっていう。俳優も学生使ってやるみたいな。で、助監督も、制作部も全部学生なんですよ。
緒方:カメラマンだけプロを連れてくる。
細野:そう、カメラマンだけね。これが七転八倒な訳ですよね。僕が初めてやった時はもうショックで(笑)。今までどんだけ助監督や制作の人に助けられてたんだみたいなね。「本番、よーい、はい」って言うと、学生が「あっ、あれがありません。すいません」とかいう話になって。足元バーンってすくわれるみたいな感じの繰り返しですからね。
緒方:細野さん怒って帰ったりしてましたもんね(笑)「お前らとはやりたくねえ!」とか言って。
細野:温厚な僕がね、怒って帰るわけですよ(笑)。監督になって十何年経って始めての経験ぐらいにショックだったですね。そうだったのか、みたいなね。でもそれが結局フックになり、ジャブになるか知らないですけど。それをやっていくみたいな事が一番良いんじゃないかと思って、まず、2年の初めにそれをやるっていう事を持ってきて、で、それを見本と見るのか、反面教師としてみるのか、なんだか分からない感じで右往左往してね。で、その後に学生達で本を書かせて学生監督実習に入って行くわけですけどもね。
緒方:これは日本映画学校の伝統なのかちょっとよく分からないんだけれどホンは相当、細野さん叩きますよね?
細野:叩くね。叩き甲斐が在りますね。
緒方:あの、もう凄いんですよ。読んで、「これ駄目、はい1時間で直して来い」って言って。何回も叩きますよね?
細野:脚本家じゃないけれども、要するにこのホンが気に食わないか、気に食うかとか、ドラマが成立しているかどうかは分かるじゃないですか? 感性と経験値で(笑)。ここんとこ駄目だみたいな、もちろん、どう駄目だとかは言うんですけども。
緒方:現場に関しては基本的に任せるという感じですか?
細野:僕は学生の現場に1時間いると胃が痛くなるから(笑)。
高橋:そうだよな、俺も一緒だよ。
細野:でしょ?で、1時間以上いないんですよ。でも今年はちょっと地方ロケがあって1泊で行ったからどうしてもいなきゃいけなかったからいましたけど。でも、具体は言わないようにしてるんですよね、とにかく。
緒方:言えないですよね。
細野:うん、具体を言っちゃったら、特に芝居の付け方とかで具体を言っちゃったら、
もうそれは彼らの作品じゃなくなる訳ですから。
一同:うんうん。
細野:だから具体を言わずに挑発する。それがまた苦しいわけですよね。それ違うだろ、それ段取り芝居だろお前、みたいな。でも、答えは言わない。だから苦しいですよ。
緒方:分かります。
細野:だからその事をずっと十何年かぐらい繰り返してきたから余計、じゃあその苦しみみたいな物を自分達が撮っているサマを、みっともなくても良いから見せよう。...という所でやったのは良いんだけれどもっていう所はありますよね。まあ結果ねえ、まだ分かんないけど。彼らがどう思ってるのかとか。
高橋:俺なんかね、2年生で撮らせてる意味って言うのはね、作品作るって言うよりも、その...社会を覚えるんだよな。人間関係って言ってもいいかな。それで、結果、やっぱりアイツとは2度と付き合いたくないとかさ、そういう関係性が常に生じてる訳だよな。だから勉強できてさ。もう、いかに人って信用出来ないかとか。
篠崎:そうですよね。
高橋:自分の駄目さ加減も見えて来るんだよな人から批判されて。だから、まあ、うん、2年ぐらいまでの作品作りっていうのは、社会勉強じゃないの?
緒方:だからもう作品ではないのかも知れませんね、学生に撮らせるのは。篠崎さんも最近、学生をスタッフに使った新作を作りましたね。
篠崎:うん、やりましたね。やっぱり当たり前なんですけど現場しかないですもんね。細野さんがおっしゃっていた様に同じ事をやっぱりやってて、それは立教ではなくて映画美学校はそういう授業もやってて。やっぱり同じです。で、カメラマンと録音の一番上だけがプロの人で。
緒方:あとは学生ですか?
篠崎:あとはもちろん。演出部にしろ、全部。
緒方:それで作って、僕がフランクフルトの映画祭で見たのが『殺しのはらわた』。
篠崎:そうです。やたら人が死にまくるっていう映画を(笑)。どうせ学校の映画でやるんだったら、なんかチマチマした話にしてもつまらないと思ったんですよだからアクションやろうって言って弾着とか。スタントマンを雇う金なんてなかったから僕も階段を自分で転がってたりしたんですよ。とりあえず自分の身を張るってね(笑)
緒方:これが面白いんですよ。(笑)
細野:いいタイトルじゃない、『殺しのはらわた』(笑)
manabuko08.jpg篠崎:ホントにあの、立体歩道橋から転がるシーンを、ちょっとクッションとかしながら
ですね、やったんですけど。いや、でもホントにね、毎日笑ってるか怒ってるかど
っちかでしたよね。
細野:あーわかるなあ。
篠崎:さっきの話じゃないけど撮影部が機材を下ろすのに1時間ぐらいかかったりする訳ですよね(笑)。で毎日朝5時ぐらいに現場行って、機材下ろしてシュートするまでに2時間3時間かかる訳ですよ。
細野:やっぱり同じだな。
篠崎:で、酷いと次のロケ場所に行って、で、僕とカメラマンが最初について待ってると全然始まる気配がないんですよ。で、何やってるのかなって見に行くと「いや、カメラを積んだまま人を迎えに行きましたと」(笑)
緒方:よくありますね(笑)
細野:それ、予算はどうなるの?
篠崎:予算は、80万ぐらいで30分の物をっていう感じですね。
細野:どっから出るの?
篠崎:映画美学校の方から。
緒方・細野:ほーう。
篠崎:でも結局自腹きりました。どうせやるんだったら、普段体験できない方がいいからアクションもやるし、じゃあ役者もプロを連れてこようっていうんで、まあ、嶋田久作さんだとか。黒沢清さんは足を切られて死ぬ役になって貰いましたけれど(笑)だからそうやって、何人か知り合いの監督に、殺し屋として出てもらって血まみれになったり、自分も撃たれて転がるとかね。やっぱり最終的に見せられるのってそれしかない。いい年こいたおっさんが、こういうもので本気になってる。
緒方:それは撮ってる時から自分の監督作品として公開しようとは思ってたんですか?
篠崎:やるからにはそうですよね。やっぱり学校の授業で終わっちゃいけないだろうし。自分達が関わったもんがデカいスクリーンでかかって、助監督の名前も全部クレジットに出てるし。で、自分がやった事がちゃんと画面の上に出るわけですよ。それはちゃんと見て欲しいと思うんで。
緒方:そうすると講師という立場と監督という立場を二つ抱えて現場でやっていかないといけないっていう苦労が出てきますよね?
篠崎:でもやってる最中は馬鹿になってるから講師という立場がどこか消えてるんじゃないですかね。本気になってイライラしたりしてる事も多いしね。だからやっぱり面白がらないと。
緒方:作る側としてのプロでありながら自主映画的なとこも当然、入ってきてますよね?それこそ自分たちで作り物やったりしてる(笑)
篠崎:そうですね。新聞紙丸めて人形作ったりとか。だけどむしろ贅沢な感じがするんですよ。粘れるし。腹立つ事は多いんだけどそのワンカットの為に延々やるとか。上手く撮れなかったら学生のほうから「これでいいんすか?」って。やっぱり悔しそうな顔してるわけですよ。上手くいってないけど、まあこれはこれでありかって思って俺がOK出したりすると、やっぱり悔しそうにしてるスタッフいるわけですよ。そうするとやっぱり明日撮りなおしって言って、もう一回始める。
緒方:そういう事が出来るわけですね、学生は成長しますか?
篠崎:両方いますね。でもまあ多分、現場終わってからも皆でまた話し合いしたりね、フラフラになりながら、演出部は演出部でケンカして殺気立ってやってる時に、俺がそれ言ったら止まっちゃうから、しょうがないから、安い宿泊所の玄関先を暗い中ウロウロしていると、美術を作りかけた女の子に見つかってビックリされたりとかしながらですね(笑)。
緒方:撮影は何日ぐらいですか?
篠崎:5日ですね。
緒方:5日!?5日で撮ってんの!
篠崎:僕もよく撮り終わったなって。
緒方:凄い、あれ全篇アクションですよ。弾着も自分らで全部やってるわけですか?
篠崎:弾着はね、ちゃんと火薬免許を取ったセミプロみたいなのがいて。自分で実験してるわけですよ。この程度だったら上半身だけ吹っ飛ぶとかやりたくて(笑)。そういうのを川原で実験したりするのに、そういうのを見たりですね、立ち会って、面白かったですよ。
緒方:それを海外の映画祭でプレミア上映するっていうのが manabuko09.jpg凄いって思ったんですけどね。最終的に学生が卒業した後どういう風になってもらいたいですか。
篠崎:映画と色んな付き合い方をすればいいと思うんですよね。監督になるだけじゃなくて。やり始めて7、8年経つんですけど最初の子がもう助監督バリバリやってる奴もいれば、つい最近脚本家で4日とかで70分を撮んなくちゃいけないとかそんな感じでデビューした、若いお兄ちゃんもいますし。あと、美術やりたいって言って装飾とかやって、今もう塚本晋也さんとかの現場手伝ってるんじゃないですかね。そういう子もいれば、キャスティングの会社に入ってる人もいたり、だからなんかどういう形でもいいから、なんか映画とかに関ってくれたら嬉しいなあと思いますよ。あと5年、6年経ってから実は映画撮ったんですよ、見てくださいって持って来られたら、それはやっぱり観ますよね。
緒方:まあ全員が全員監督になれるわけじゃないですしね。
細野:いや、全員なってたら凄い数だ、本当に。今村学校は30年間やってるんだからねえ、そりゃ凄い数になっちゃう。まあ、2割ぐらいなんじゃないかしらねえ。10年経ちいなくなる人もいるし、
緒方:細野さん教えてると「あ、こいつもう無理だな」みたいな奴はいませんか。
細野:いや、それがね、監督は無理だけれども、今彼が言ったみたく小道具の一人としてやってるって子もいれば、照明の一人としてやってる子、「おお、お前どこかで見たことあるなあ」なんて言ったら、「いやいや、僕一回細野さんとあの実習でご一緒しましたよ」なんていう子もいるわけだし。無理だなと思ってても、意外と粘ってやってる子がいたりなんかする。その辺はやっぱり面白いなっていうか、楽しいかなって。それからさっきの話じゃないけど、立教で蓮實さんっていう話をしてたけど、俺なんか横浜だったからそれが、あの淀川長治さんと佐藤忠男さんだったのね。で、このお二人が毎週映画を見せて講義やってたっていうね。
緒方:おー。
細野:凄い、凄かったのね、今から思うとねえ。淀川長治さんなんてね、テレビでしか見てない人、俺は「ララミー牧場」の「サヨナラ、サヨナラ」から見てるわけだけど。その人がホントに口角泡を飛ばすっていうのはこういう事だなっていう感じの(笑)泡の飛ばし方で喋ってくれちゃうわけでしょ。そうかと思えば、その時公開された日本映画の監督の事をテレビじゃ褒めていたけど「この監督のバカバカバカ」とかなんか言い始めたりするみたいなね。でもそれが淀川さんの面白さで映画に対しての面白さっていうことみたいなものを全面的に、自分が本当に映画を楽しんだ、好きなんだっていうことを、こっち側に分からせてくれる。そこがやっぱり面白かった。かと思えば佐藤忠男さんは日本映画史的に、映画ってものを、系統立ててこれはこういう映画だという話をしてくれる、みたいなね。僕はガキの頃映画しかなかったから映画をたくさん観てたわけれだけれども、その俺なんかでも観てない映画はもちろんあったわけでその面白さを教えちゃうっていうか、一緒になって面白がってその映画の面白さを若い子が覚えていけば、これは繋がって行くなって思う。横浜時代、今村さんが一見無責任な事言ったわけですよ。横浜始めて一年で600人入ったんですけど。1年、2年で合わせて千人いた時があるわけですよ、元ボーリング場の校舎に。それで全員が映画界行くか行かないか、監督になれるのか、なれないのか? みたいな話、当然学生たちもなるわけじゃないですか。で、飲み席で今村さんにぶつけた事があったんですね。そしたら「いや、良いのである」って言うんですよ。「脚本が読める魚屋さんがいても良いのである」ってね。
一同:(笑)
manabuko10.jpg細野:「脚本の読めるサラリーマンがいても良いのである」っていう(笑)。なるほど、なるほどっていう。それしか言わないんだけれども今考えると深みのある言葉だなあって思えるよね。
緒方:その言葉は講師やっててすごい励みになります(笑)。
細野:それから変な話だけれども日本映画学校の卒業制作っていうのは映画祭とかで色んな賞獲ったりして、この間も一本、どこかの映画祭でなんか賞を獲った作品があるんですね、2年前の作品だけどもね。成長物として誉められ易い作品なんだけど、明らかに演出に幾つか欠陥を持った作品なんですよ。たまたま俺のゼミの学生だったこともあって再三再四、言ったけどさ、「これはないだろ」と。「脚本は優れてたけれども、この演出は無い」と。「こんなリアリティのないファーストシーンはない。ありえないんだこれは」って。で、本人は分かったんですよそれは。ちやほやされてたけども、的確に批判していた人も他にもいましたし。「そうですね、分かりました」って言って。でそれが賞獲ったりするわけ。俺はこれは困るなと思うわけ。かたっぽで、変な話だけれども、本が読める、演出が分かる審査の眼が育っていないなと(笑)さっきの今村さんの言い方で行くとね。脚本の読める八百屋さん、脚本の読める魚屋さんはまあ、育っているのかも知れないけど、脚本の読める審査員、演出が分かる審査員が育ってないのかなと。
高橋:脚本の読めない監督も一杯いるもんな(笑)。
細野:いや、まあね(笑)そうなのかも知れないですけど。だからそういう意味で言うと脚本が読める魚屋さん育てると言っちゃ変だけど、その人達が魚屋になっても審査員やっても良いんだって所ってのはそうなんだなって思いますよね。
緒方:僕は講師やって5年目ですけど、最近思うようになったのは...、これだけ映画学校、映画の大学が沢山出来て、果たしてそんなに映画界は需要あるのかと言ったら...ないですよね。出口としては。
細野:うーん。
緒方:就職の事だけ考えると決して有利な学部ではないですよね。その辺は若者も何となく気づいてると思うんです。で、昨日ちょっと資料調べたら、映像系の学校の志願者数は2005年がピークで、そこからは受験者数、減ってるんですよ。少子化ってこともあるんでしょうけど。そもそもこんなに映画の学校が増えたのは学校側が学生をキープするためだったと思うんだけど実際はそんなに人気はないらしい。ということは、学校で映画を教えるという事は、映画人を養成するというよりもその人の人生にとって、プラスになっていくことを教える、人間教育の場なんじゃないかと最近思うようになりましたね。映画作りということを通して共同作業であったり他者への礼儀であったり、まあディスカッションや、あるいは物の見方、考え方も含めてその後の人生に有意義なことを学んでいく。それこそ八百屋さんになろうがサラリーマンになろうが、生きていく事のプラスになっていくことを学ぶんじゃないかなという。
細野:例えばさっき伴明さんが言ってたんだけど漢字のテストやるっていうね。それもだから俺、近いもんだって気がするのね。確かに脚本書かせたらワープロでも間違ってくるし執筆だったらもっと大変な事になるじゃないですか。おい、ここ漢字で書けよって所漢字で書いてこないわけだし。「てにおは」から始まって句読点の打ち方も全然分かってない。それをまあ、伴明さんがやってる事って今村さんが横浜作った時とつながってるって思った。
高橋:要するに俺は現場に携わる奴が一杯出てきて欲しいんだけれども。やっぱりあの映画の勉強するというのは人間関係全般の事学べるし、あと何するにしても字とか言葉とか知らないとね。自分の考えてる事って相手に伝わらないだろうと。
細野:そうですよね。そりゃそうですよ(笑)
高橋:で、知らないと、相手の考えてる事も分からんだろうと。いう風に思うんでね。これからまあ継続してやっていかないと駄目だなって思って。だって50点取れないんだよ(笑)。
緒方:あとはまあ、単純にいろんな映画を観る客を増やしたいなって言うのはありますけどね。ヒット作ばっかりじゃなくて。学生は実習ですごく忙しいじゃないですか。で、たまの休みの前になると、「お前ら休みの時に寝てるんじゃなくてちゃんと映画観て来いよ」って言う。で、昨日映画観てきた?って訊いたら、「いや、あの『舞妓haan!!!』観てきました」だって。「馬鹿じゃねえのかお前は!!」って私は激怒しました(笑)。
細野:いや、でも見ないよりは良いじゃない
緒方:いや、駄目。その頃トリュフォーも川島雄三も特集上映やってたし。映画学校の学生のくせに適当に近所のシネコン行って、時間があうやつを観るという姿勢がもう俺は許せない(笑)。そしたら「なんで観た映画でこれだけ怒られないといけないんですか?」と学生に言われた(笑)。そんなこと言ってたら別の学生がおずおずと「ぼくは昨日スピルバーグの『ミュンヘン』観たんですけどこれは良かったのでしょうか?」と。「うん、それはマル」とか言って(笑)。自分の好みははっきり言うようにしてます。以前香川照之くんを「演出論」という授業のゲスト講師で呼んだんですけれども、香川君は「緒方さんに頼まれたから行きますけど、ホントはこういう演出論とかあんまり話したくない」と、演技なんて言葉で話したって無駄だと言うわけですよ。で、何を話せば良いんですかねみたいな事悩んでたから、いや、別にあなたが来るだけで良いんですと。あなたが来て、この現場はどうだった、あるいは、家でセリフこうやって覚えてるって話すだけでも全然いいと。ただただ香川照之そのものを見せてくれればいいんですと言いました。、これはなんか基本ですよね。要するに緒方明とか高橋伴明を見せればいいのかなと。
高橋:そうそう。
緒方:で、自分の愛した映画の面白さ、豊かさをを一生懸命しゃべって、ふざけんなって怒って時々帰って。細野さんなんか途中で授業やめるじゃない(笑)。あれは驚きましたよ、最初。
細野:最近あんまりやりませんよ、最近あんまり(笑)。
緒方:細野さん教室で授業やってて学生がコソコソ話してると「お前、失礼だ!下品だ!」とか言って帰っちゃうんですよ。
細野:実は今日の座談会、映画を教えるってことがテーマだって2週間ぐらい前に言われて「ええー、そんな事語り合うの?」って思ってさ。そんな事っていうのはさ、難しいじゃない、ものすごく。映画を教えるってさ。
一同:(深くうなずく)
manabuko11.jpg細野:で、映画を教えるってさ、じゃ映画って何だ? って話になんないと本当は駄目なわけですよね。で、俺の思ってる映画、伴明さんの思ってる映画、みんなが思ってる映画って違うかもしれないし、でもどこかこう共通項があるんだろうなと思ってやってるわけじゃない。そうするとさ、学生の時に講師から散々「映画を教える事は出来ない」って、よく言われたのはそこだと思うのね。だとすると映画を一緒に観たり、映画を彼らに見せたりね、という事で、映画って何だって事をこう感じ取ってもらうしかねえなって感じもするわけですよ。だからそこに応えてくれる子達だったら良いよね、まだね。応えてくれる子じゃないと、やっぱり嫌だなあ。映画観ろって言って観ないとか、一緒に観てても居眠りしてるとか、私語するとか。と、僕は駄目なんですよ。そうすると、パッとはっきり怒っちゃうんですよね。もう後先関係なく。自分が怒った事と楽しい事だけは、はっきり態度に出しましょうと。そうすると恥ずかしいですけれども、でも、怒っちゃうって事は一番強いんですよね。だって本当に気に食わないで怒ってるんだから。片手間で怒れないもんね。これは。だからパッて怒っちゃうんだよね。で、それが一番学生に通じるのかなと。
高橋:まあ今のとこ通じるね、怒るとね(笑)。
細野:殴っちゃ駄目ですよ(笑)。
高橋:それは絶対にしないんだけどね。俺はものすごく温厚だもん。けど一発ね、ガツンっつったらね、まあ急に態度変わったね、アイツらは。あとさ、一生懸命とかさ、死に物狂いとかさ、そういうのって死語になってない?かっこ悪いって事になっってんのかな?
細野:かも知れないですね。
高橋:うん。やりたきゃ寝るなよっていうぐらいに思うんだけどもね、俺ね。
緒方:皆さんは講師なんだけれども、同時に現役の監督でいらっしゃるわけじゃないですか。その狭間みたいなのってどういう風に埋めてるのかなって、それはどうですか?
高橋:うちの学校自体が現役の監督が講師であるって言う事が一つの売り物になってるし。それと現場入ったときはそっちを優先して下さいっていう、まあ、条件での事なんで。
細野:そうじゃなきゃやっていけないですよね。
高橋:うん。そういう事だったので出来てるんで、先生と監督の間の揺れ動きみたいな物は俺そんなに無いよ。
緒方:あ、ないですか、それはご自分の中で一致してますか?割と?
高橋:うん、まだそんなに経験積んでないんで。今の所そう思ってるだけかも知れない。
緒方:細野さんなんかはね、一昨年(2005年)撮った『燃ゆるとき』はオーストラリアまでロケ行って、準備期間中忙しいのに学生の本読んだり電話してたりしてましたよね?しんどくなかったですか?(笑)
細野:いえ、しんどいって言うか、さっき言ったように、俺、助監督の時に講師になってるから(笑)、だからデビューした時からずっとゼミを持ちながら撮ってたんだよ。だから、しんどいけど、当たり前って言うか。
緒方:ああ、なるほど(笑)篠崎さんどうですか?
篠崎:やっぱ、んー、天に唾し続けてる感じはしますけれどね。違和感はやっぱり消えないですけどね。でも、しょうがないですよね、言う事によって自分にも気合を入れている所がきっとあるので。
緒方:本音を聞きたいんですけどね。どうですか、伴明さん?
高橋:本音で言えばやりたくないけどねえ。ただね、妙にね、責任感じゃなくてその情みたいなものがね湧いてくんのよ若い奴らに。
緒方:ああ。
高橋:で、そうすると、一年で出会うとさ、4年までは見届けたいよねっていう気分には、なることはあるね。
細野:美意識って云う言い方とか、美学で言えば、ホントはやりたくないって云う所があったのかもしれない、最初はね。だから助監督からなっちゃったから、最初も糞もなくて、ただなんか映画だけで、食う、生きていくなんていうのは、恐らく出来ないであろうという所は、ハッキリ言ってあったわけでしょう。だからさっき渡りに船っていう言葉が出ちゃったんだけれども。
高橋:だってさ、この話来るまでね、先生なんてのになったらもう終わりだろうって(笑)。
緒方:そうなんですよね。普通は。
細野:でもほかの事例えばやるんだったらば、っていう言い方も変なんですけどね、映画に夢と希望を持ってる若い子たちと付き合ってやっていく方が良いな。それはだから今村さんがやってきた事だって言う、一つもうレールが敷かれているって事はあったかもしれないけど。
高橋:ものすごく美しい意見だね。俺なんか飲み屋でもやった方が良いと思ってたけれどもね。
篠崎:うーん、やっぱり、いつも矛盾した思いを抱える気がしますね。でも、なんか例えば、あの、やっぱ劇場で映画観てもらいたくて、レポートにすると観たりするじゃないですか。普段観ろって言うと多分観ないんですよ。最近はもう開き直ってですね、劇場で見てチケットの半券貼ってこないと取らない、レポートを。そうすると、嫌でも何十人か観て、映画館で観てくるんで、そういうやり方にして。
緒方:映画界に貢献してますね(笑)
篠崎:この間の三隅研次さんの『座頭市』と、勝新さんの監督した『座頭市』2本やって。で、終わったら、居合い切りの真似をやってる馬鹿な連中がいてやってよかったなってちょっと嬉しい気持ちになったんですけど(笑)。
細野:それは良いなぁ
篠崎:ちょっと嬉しくなりましたね。「勝新つええよ」って言いながらなんかこうやりながら。でもそういうのって、自分は取っ掛かりって、スティーヴ・マックイーンとかブルース・リーとかクリント・イーストウッドとか、そういうの役者さんで見て真似事をしたりそういうのが一番最初に映画に惹かれる取っ掛かりとしてあるんで見せて良かったなあと思いますね。
高橋:その半券っていうのいいなあ(笑)。造形でも入学が決まるじゃない。そうすると、実際に学校に来るまでに映画観てそういう風に課題として書かせるんだよ。けどもう、大抵さビデオで見てるからね。
篠崎:で、一回川島雄三さんの特集をやっている時に、川島雄三さん最低でも3本以上は見て来いと言ったわけですよ。そしたら、後で聞いたら、観れなかったのか分からないんだけど、回数券だけ買いに来た馬鹿がいたらしくて(笑)そこまでして単位欲しいんだったらやるわっちゅう感じでやるじゃないですか。
緒方:じゃ最後にこれから何を教えるかを一言ずつ聞いてみようかな。
高橋:学年によって違うんだけどね。3年以上は、やっぱり、酒の飲みかたかな。
緒方:なるほど(笑)細野さんどうですか?
細野:うーん、酒の飲み方っていわれちゃうとなあ(笑)うーん、なんて言ったら良いんだろう。うーん。
緒方:あ、じゃあ俺先に言いますね。俺はね他者の存在だと思う。 manabuko12.jpgお前と全く違う存在の人がいるんだよ、と。で、その人がスタッフの中にいて、お客さんの中にもいるんだよという。自分を中心に考えるのやめてくれない?っていうことかな。結局映画というのは何かと思った時、他者とのコミュニケーションツールだろうということに行き着く。表現という事はね。
細野:いや、まあ、そういう事なんじゃないかなやっぱり。だからこの間、卒制の指導を一緒にやってもらった平山(秀幸)さんが学生たちに言ってたんだけどさ、要するに「完成しなくてもね、俺は良いと思ってる」っていうね。段々長い事やってると、こっちも勘違いしてきちゃう所があるんですけどね。やっぱり作品だったら完成させなきゃいけない、そこに向かって行かなきゃいけないみたいな事を。で、担任とかゼミの講師とかって言うのは実習やると、完成責任みたいな所になってくるんですよね。そうじゃなくて、やっぱり僕は学習責任、学習成果責任だっていう気がするんですよ。その実習を通して人間関係も完成度もメチャクチャになったっていい、それこそ憎しみ合えってね(笑)殺しさえしなければ良いんだみたいなね。またどうせ修復する場があるだろうという所で、じゃあ何が憎しみを生んで何がどうなのかという所までやっちゃえば良いんじゃないかと。結局、映画作りを通して何を学習したのか、と云うことが重要な訳で、それもひっくるめて、フィルムに写るもんなら写るだろうし。ここまでしか撮影出来ませんでした、脚本はこの後続きますみたいな終わり方でもいいからとにかく修羅場というか、見せ方というか、教え方っていうか、うん、漢字の習い方みたいな物をもう一回やった方が良いかな、と感じはしてますね。だから出口求めて、卒業作品撮って、作品がどこかで認められれば、学校の宣伝になるとかもなきゃいけないかも知れないけど、でもそれだけではやっぱ駄目だってなんか感じはするなあ。
緒方:うん。篠崎さんは?
篠崎:うーん、難しいですねえ。いや、なんか結局映画って身にしみた事しかやれないな
っていう実感があるんですよね。で、俺なんかそういう意味じゃ映画に対する思いは、きっと強くって。で、ある時に自分が撮ってる映画、今まで観てきた映画のモノマネでしかないって言うかね、自分が作る映画つまらないのはつまらない生き方してきたからだっていうコンプレックスがずーっとあったんですけど。でも今は多分、どんな題材の物をどういう事をやってても、その人が出るんだと思えるんですよ。難しいテーマだとか分かりやすい何かだっていう事と関係なく、やっぱりその人の身に染みたものがしか出せないなと思うから、だから、難しいですよね。それをこう言葉で、本当に言葉尻だけでこうすりゃあ良いじゃねえかとか、ああすればいいじゃねえかって言うのは出来るんですけど、やっぱり自分が気がついて、こういう風にしたいと思わない限り、人って変わりようがないんですよね。
緒方:そうですよね。
篠崎:だからそういうのの、きっかけが、まあキャッチボールの相手じゃないけど、ちょっと強めの壁になって、いい加減な所に投げると、思いっきり投げ返してやるけど、そういう事として居るしかないのかなっていう気はするんですよね。でもまあ、もうちょっと人とか、映画に敬意は持って欲しいなと思うんですよね。崇め奉る必要は無いけど。あの、簡単にこれはおもろいとか、つまらないとか。だって初めて会った人間、1時間かそこら話しただけで、コイツは良い奴だとか悪い奴だとか分かるわけないじゃないですか?あるいはいい奴、悪いだけの奴だなんているわけないじゃないですか。だから映画も同じで、一回観てこんなもんだとか思わないで、そういう意味ではとことん付き合った方が面白いし、きっと何か一個の事に本気になれば、ホントに魚屋さんだろうが(笑)何屋さんになっても良い様な気がするんですよね。
細野:あとはさ。映画を嫌いな人間は俺はいないと思ってるんだけど。でも映画がそんなに好きでもなくもて来てる人間が多くなっているでしょ。そうすると、この子達をホントに映画を好きにさせたいって感じはするよね、やっぱりね。
緒方:ああ。それはいいですねえ。
細野:なんかね。だから、いや、さっきの蓮實さんのね、立教時代の話もそうだけど、俺
は、やっぱり淀長さんを思い出したね。あの熱き語り(笑)凄かったですね。
だから、自分の好きな映画しか語れなくても良いのかも知れないですよね。それはね。そこの所って言うのをやっぱり、もう一回、我々先に居る人間達がやって行った方が良いのかなって気がしたけどね。この映画面白いよって言うねえ。貶すよりはやっぱり褒める方だっていう。
高橋:俺も映画始めてから、映画好きになったんだよな。
細野:そうなんですか?
高橋:俺映画少年でも何でも無かったからさ。映画で「愛憎」を覚えたよね。今好きかって言われたら、好きですって言えそうな気がするけどね。やって2、3年の頃は言えなかったもんね。
細野:あ、ホントですか(笑)
緒方:やっぱ凄いですね。映画でいろいろ覚えていくんだなあ。

 




manabuko13.jpg