
『映画監督って何だ!』バトルロイヤルトーク
『映画監督って何だ!』バトルロイヤルトーク
1月27日(土)から大阪の第七芸術劇場で『映画監督って何だ!』の公開が始まります。
第七芸術劇場でもトークショーが予定されていることもあり、今回の特集では昨年、渋谷ユーロスペースで連日上映終了後におこなわれたトークショーの中から、公開最終日の模様をお伝えします。
緒方明監督司会のもと、ゲストに伊藤俊也監督、黒沢清監督、茅場和興監督、日笠宣子監督、北川篤也監督、矢野トモ子さん、福岡芳穂監督、高原秀和監督、青野暉監督、神野太監督、高橋伴明監督の総勢12名によるバトルロイヤルトークをおこないました。
緒方:まずは皆さんに一言づつお願いいたします。
伊藤:今日は座席じゃないところに座っていただいている方もおりまして、本当に恐縮です。この二週間あっという間に過ぎまして、今回は東京と名古屋での同時の公開ではありましたけれども、この後、大阪、京都と公開が決まっております。そちらの方面にご友人、ご親戚などお知り合いの方がいらっしゃる場合には是非、宣伝員のお一人となっていただければと思います。今日は本当にありがとうございました。
黒沢:今日はこんなに沢山入っていらっしゃるとは思わなくて、驚きました。僕はインタービューを受けただけで、出来がどうなのかまったく知らなくて、脚本は読んで、おもしろいなと思っていたのですが、「これ監督が演じるんでしょ?それ、やばいよね?」って、正直思っていたんですよ。たぶん皆さんも同じ感想だと思うのですが、監督ってこんなにも良い役者なのかってことがよく分かりました。国会のやりとりのシーンは、演出も素晴らしかったのでしょうけど、凄かったですね。緒方さんもいいのですけど、石井聰亙さんはかっこよすぎましたね。本当に石井聰亙さん凄かったですね。小水一男さんとかは俳優でもあるから、当然上手いのは分かっていたのですけど、皆さん凄くて、じゃあ僕も出とけばよかったなと思いつつ、楽しんで見てしまいました。それが感想です。
茅場:本当に皆さん、本日はありがとうございました。私はですね、助監督をやりまして、出演もしているのですが、まず、これだけの人数をキャスティングするというのは、すさまじく苦しい作業でした。実際に準備が整って撮影に入って、現場で僕が伊藤俊也さんのことを監督と呼ぶと、スタッフも監督協会員、それから俳優も監督協会員なので一斉に皆さんが僕のことを振り返るというすさまじく怖い現場で、その中で私一人だけが助監督という。やっている時は、2度とやらないと思いましたが、こうしてお客さんの顔を見るとやってよかったなと思っています。ほんとにありがとうございました。
日笠:制作のおせい婆さん役をやりました日笠宣子です。とっても楽しい現場だったので、はじけていました。阪本順治に後で言わせれば、「あんまり楽しそうで、僕は花魁のかつらが苦しくて吐きそうになっていたのに、日笠さんはあんなに楽しそうで、殺してやろうかと思った」って言われるぐらいでした。この撮影の後、この映画の怪演によりまして探偵事務所5シリーズの探偵524という銚子のおばさん探偵役に抜擢されました。主役です。(笑)
北川:大、大先輩の、伊丹万作監督役をやりました北川です。キャスティングのオファーが茅場さんから電話できまして、電話を受けたときは、簡単なエキストラ程度だと思って気楽な気持ちで聴いていたのですが、最初は「はい」と一応返事はしたんですけれども、伊丹万作さんの役なので、後から本当に僕が出来るのかという緊張感に襲われてしまいました。実は一言だけ台詞があって、一生懸命覚えて、現場で一生懸命しゃべったつもりなのですが、ものの見事にサイレント映画にされてしまい、やはり僕の演技力を信頼されてなかったと、さすが伊藤監督というのは名監督だと感じた次第であります。本日は本当にありがとうございました。
矢野:『煙突の見える場所』の東仙子役を演じました矢野トモ子です。伊藤監督には、五所監督の『煙突の見える場所』は見なくていいと言われたのですが、でもそのときには見てしまっていました。衣装合わせのときに何故か清順組ではカスタネットが用意されていたりして、3人の監督が同じシーンを別々に撮るということだったのですが、現場はどうなるのだろうと思いました。撮影は1日で行ったのですが、同じ役を演じたという感じは全くなく、演出も監督によって全く違いました。とにかく撮影の前日は睡眠をいっぱいとって、瞬発力だけは持っていこうと思って臨みました。監督達の現場での発想、その奇人変人ぶりの証人になったということを光栄に思っています。今日は本当に遅い時間ありがとうございました。
福岡:新米監督の望月六郎さんをいじめる、いやらしいプロデューサーをやりまして、全然僕のキャラクターと違うので凄く戸惑ったんですけど(笑)、こうやって本当に自分の映画はもとより、自分の関係した映画でこれほどのお客さんが入っているのを経験したことがないので、非常に、それでも戸惑いつつ感動しております。本当にありがとうございます。
高原:ちょうどこの撮影中、自分の現場が入っていまして、その現場のヨーイハイをかける姿でしか出演していません。みなさんが役者苦労話をされているのをいっぱい聞いて、今度こういう機会があれば役者として出たいなと思っています。
青野:青野でございます。最初、茅場さんから、役者さんで出ろと言われまして、随分断ったんです。どうしても勘弁してくれなくて、やれということなので、じゃあしょうがないから引き受けようと、台本をもらいました。そしたら、2ページも台詞があるんです。しかも、台詞というよりも、議事録ですから、発言なんですよ。やっぱり一字一句間違えちゃいけないんですね。もう、言いにくいんです。例えばですね、「私の聞いたところによりますと言うと」など「私の聞いたところでは」でいいのですけれども、やっぱりきちっと言わなきゃいけないと思って、一字一句間違えずに覚えるのが大変で、苦労いたしました。伊藤さんの名監督ぶりで素晴らしい映画が出来上がって、こうして皆さんに来ていただいて、本当にありがとうございます。
神野:神野と申します。初めて知ったんですが、長屋のでんさんという名前があったんだなと。脚本には書いていなかったので。脚本には台詞も一行もなくて、軽い気持ちで日光の江戸村まで行って、参加させていただいたのですが、伊藤監督に長屋の壁をぶち抜けと、一言言ってくれと頼まれて、ビビリました。そうそうたる監督達の中で、自分のようなものがいていいのかと、反省ばかりして過ごした一日だったのですが、凄く楽しく過ごせたのは本当です。今日はこれだけ皆さん集まっていただいて、感謝しています。ありがとうございました。
高橋:高橋です、こんばんは。今日は皆さん、これだけ集まっていただいて、さっき見える限り顔を見渡しましたが、関係者と親戚がどれくらい入っているのだろうと思っていたのですが、そうでもない方が結構いらっしゃるので、本当に良かったなあと思っています。この映画、最初は船頭がいっぱいいますんで、たぶん船が山に登ってしまうのだろうなと思っていたのですが、実際、山にちょっと登りかけたのですけども、うまいこと地崩れがおきまして、また川に戻ることができまして、なんとか最後までこぎつけました。映画ができて思うことは、監督協会員で俳優事務所を作って、どんどん出演していったほうが潤うんじゃないかと思っています。あとで皆に提案してみようと思っていますが、もしそうなりましたら、また色々な演技を皆さんにお目にかけることができるかもしれませんので、楽しみにしておいてください。今日はありがとうございました。
伊藤:今日は、監督達によるバトルロイヤルという風にチラシにも書いてもありましたし、それを見においでになった方もいらっしゃると思いますので、やっぱりあんまり期待に反してもいけないと思いますので、皆さんから一言ずつ私に対する罵詈雑言をお願いしたいのですが。今回、シナリオを映像にするこれこそが監督の著作なのだという風に男弁士が言っているわけですけれども、これは甚だ脚本家の皆さんにとっては、かなり顰蹙ものでして、『煙突の見える場所』のくだりは、監督による演出の三通りというものではなく、あれはシナリオの改竄であると。勝手にオリジナルのシナリオをあそこまで変えていいのかという、お叱りを受けたりもしているわけですけども、今日ここに並んでいるのは監督達だけなので、そういう意味で本当はプロデューサーや脚本家にそれぞれに登壇していただいて、トークをやった回も何度かあるんですが、今日はまあ、内内のメンバーなので、伊藤に対する罵詈雑言、例ば、小栗康平でなく私に菅徳右衛門をやらせてほしかった、もっと上手くやれたはずだなど、そういう話を披露してほしいと思います。
黒沢:僕は何もないですけれども、もちろん伊藤監督へなんかの罵詈雑言なんてあるわけないのですが、一言、たぶん誰でもこれは思っていることだと思うのですが・・・言っちゃいますと、言っちゃっていいのかな?この映画、凄く面白いですけども、この映画を撮っている暇があったら、他の映画をちゃんと撮って欲しい、というのがまず一番ですね。『犬神の悪霊』という伊藤監督の70年代の映画が僕は大好きで、最近再び見まして、やっぱり大傑作でした。ああいうのを是非また撮っていただきたいと。この映画も素晴らしいですけれども、それが一番の不満ですね。
伊藤:皆に叱られています。安い予算で、今回は撮ったのだから、そのノウハウは判ったのだろうと言われています。
黒沢:ビデオだって、全然大丈夫なのですから、この期間とこの予算で、是非やってもらいたいですね、むちゃくちゃのやつを。
茅場:立場的にこういうことを言うのを辛いポジションにいたのが私でして、キャスティングをやっていて、通常は制作予算というのがあって、その中で配役にかけられる予算というのは決まっているわけです。その枠からはみ出さないように、人数というのもおのずと決まるわけです。その範囲内で割り振りを決めるんですが、ところが今回監督協会の映画ということで、出演者は全員協会員のボランティアということで、最初からそんな予算という枠はないわけです。ということは、枠がないわけですから、どんどん増えるわけですよ。キャスティングしなければいけない人が。最初、3、40人からスタートしていたのが、気が付いたら180人とかになっているんですよ。毎日、僕は、とにかく電話をしてキャスティングを、決めていくんですけれども、毎日決まった人数よりも、新しくキャスティングしなきゃいけない人数の方が多いんですよ。次やるときは、総数を決めてから撮影に入るようにしてください。よろしくお願いします。
日笠:伊藤俊也さんに対しては、この映画に入る前は広報委員をやっておりますので、webや会報などで原稿を書いてもらって、素晴らしいなと、お年の割には若くて情熱の持ち主だと思っていたのですが、今回の映画の現場でも、俊也さんがどんどんのってくるんですよね。立ち回りをやっていると。「日笠さん、ついでのことで投げちゃいましょう」なんて言うんだけれども、男の人を投げ飛ばすのは大変で、少し躊躇したけれども、日光江戸村の人が子分役で手伝ってくれて、その人がうまいことやってくれたので、さも私が投げ飛ばしたように見えて、ホッとしましたが、突然あんな風に難問を突きつけないで欲しいです。
北川:僕は冒頭の監督協会の創立メンバーの五人が集まるというシーンの出演だったんですけれども、撮影がクランクインの初日だったんですよ。撮影の2シーン目のシーンで、我ら出演者五人、かなり緊張した面持ちで現場にいまして、キャメラも決まって、ライティングも決まって、監督の声で「用意スタート」ってかかって、皆一言ずつ台詞を喋って、伊藤さんがカットと言われて、どうだったのだろう自分達の芝居はと思ったら、伊藤さんが、「雪の降りかたがちょっと」と仰って、僕達の芝居見えてくれてなかったのかなと思っていると、また直ぐに「テストいきます」、「用意スタート」と言われて、また一言ずつ一生懸命台詞を喋って、それで、カットがかかって、今度はなんか言ってくれるだろうなと思ったら、やっぱり「ちょっと雪の降り方がね」って言われて、どうしたらいいのだろかと思っていたら、隣にいた今岡信二監督が一言ぽつりと、「これは放置プレイだな」と。そういう気分を味あわせてもらったことが、ありがたいのやら、恥ずかしいのやら、恨みかたがたというか、ちょっと意味が違いますが、そんなことを伊藤さんに言いたかったと。
矢野:今回は本当に面白い現場で、3監督で撮りながら、それを伊藤さんが撮るという二重構造になっていたのですが、いつか直接、伊藤監督の作品に出演できたらいいなと思いました。
福岡:伊藤さんも皆に対して罵詈雑言をなんて、良い人みたいなこと仰ってますが、わがままなガキ大将みたいな方なんですよ。今日のトークも、本当は司会の緒方さんが、綿密に考えた段取りがあったんですが、だけどそれを伊藤さんが「駄目だよそれじゃ、全然駄目だよ」と言って直前で全部ひっくり返しました。今、全く段取りもなんにもなく進行していて、皆さんすみません。みたいなことなんですが、ただ、映画監督というのは、多かれ少なかれ、そういうガキ大将みたいなところを皆持っているわけで、だから映画っていうものを引っぱっていけるのかもしれません。そんな伊藤さんの「なんちゅう監督なんや」というのが収められている、メイキングが特典映像で付いた『映画監督ってなんだ!』DVDが紀伊国屋書店から1月27日に発売されますので、一つ皆様、DVDの方もよろしくお願いします。
高原:役者として出演できなかった疎外感が・・。次こそは絶対に役者としてお願いします。
青野:僕も伊藤さんに対しては何も言うことないです。よく、台詞をしゃべるだけで精一杯の僕に対してNGを出さずに、ちゃんとOKしてもらったなと、むしろ感謝している方が僕は大きいのです。
神野:自分も別になにもございません。伊藤さんのこと、尊敬しています。以上です。
高橋:今度自分が低予算で映画を作るときに、絶対、伊藤俊也さんにプロデューサーをやってもらいたいと思っています。断ったら許しません。もし、断るようなことがあったら、現場であった様々なことを方々にその時はバラします。
緒方:伊藤さん、最後に一言お願いします。
伊藤:我々皆そうなのですけれども、映画というのは監督一人で撮れないといのは、皆、承知しております。本当にスタッフ、キャストの力によって、成り立つ職業というか、仕事であるということは間違いないわけです。しかし、この著作権法は元々、書くということと、書かれたということから著作権の理念が始まったもので、例えば小説家が原稿用紙をペンで埋めていく、今の時代ですから、キーボードで活字を打ち込んでいくというような作業は分かりいいわけです。それは、音楽家が五線譜に書くにしろ、作詞家が書くにしろ、あるいは、絵描きさんが描くにしろ、この映画でも言っていますように一筆のスケッチであろうと、一年がかりの大作であろうと非常にわかりやすいわけです。それが、後発のというか、二次元のものに留まらない三次元あるいは四次元と言ってもいいような一つの芸術が登場したときにやっぱり正確にその著作、ないしは、その著作権の問題が認識されなかったという問題があるわけです。小説などの作家達の活動に比べて映画というのは、先程申しましたように、ほんとに大勢の人がまるでお祭り騒ぎのようにやっている、その中で実際の著作、著作作業というのが分からないところがあるわけです。それが、実は、そうじゃないのだと、小説家が一つの文章を作っていくように、作曲家が五線譜に一小節、何小節と書き加えていく風に、映画というものも、この映画で言っておりますように、監督が全スタッフ、全キャストを統合する形の中で「用意スタート」、「用意ハイ」という人もおりますが、そういう風にして仕事を進め、「カット」という形で終わりを宣言し、そして、それを「OK」、あるいは、「もう一回、NG」と見極め、NGの場合はもう一回やるという形で進めていくわけですね。この映画でも、説明しておりますように、一つの著作行為には、そうした一つの自立的な行為、始まりと終わりがある行為というものをするその積み重ねで、著作行為というのは行われているわけですけれども、映画においても、またしかり。そのことにおいては全くかわりがない。しかも、その進めていく著作行為、自立した行為として、唯一の人間として監督がいるんです。私達は、カメラマンにしろ、美術デザイナーにしろ、俳優さんにしろ、皆さんの創造行為、著作行為というのを認めているわけですけれども、それは私の言い方によると、監督の著作行為に協力する著作行為という風に区別させているわけです。ですから、そういう仕組みの中で、唯一、自立した行為をしているのが、つまり監督でしかない。つまり監督がいなければ、そこに素敵なキャスト、素敵な芸術家達がいても、作業は全く進行しない、皆そこに屯しているだけ。という構図がありますので、その辺をやっぱり、きっちり言うことによって、映画の第一次的な著作者は監督であると。本来の著作者の権利を守るために著作権法というのがあるのですから、この著作権法の唯一の例外を、正すべきだと。今の著作権法、特に29条というのは欠陥商品であるというのが私の見解なのです。ということで、ちょっと理屈を申しましたけれども、我々の主張をご理解いただきまして、是非今後の我々の運動に皆さんの声を合わせていただければと、私の切なる願いです。本日はどうもありがとうございました。
お知らせ!1月27日(土)に紀伊國屋書店から『映画監督って何だ!』のDVDが発売されます。特典映像にはメイキング・予告編・渋谷ユーロスペースでのトークショーの模様など、盛りだくさんの内容です。[定価:¥5040]
構成:坂本礼
【2007年1月20日】
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