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日本映画監督協会 会員名鑑

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横浜聡子監督と語る

時 2008 年5月22日
於 日本映画監督協会
                       

2007年度日本映画監督協会新人賞を受賞されました横浜聡子監督を迎えての座談会です。受賞対象作『ジャーマン+雨』についてのお話はもちろん、横浜監督への個人的興味や子供時代の記憶等々、他のメディアではありえないような質問も含め、たっぷりとお話を聞かせて頂きました。参加者も言いたい放題です。どうぞ、お楽しみください。
                            
座談会聞き手/阪本順治
参加者/小林聖太郎、緒方明
撮影/高原秀和


<プロフィール>
横浜聡子
1978年青森県生まれ。横浜市立大卒業後、東京でOL生活。が、一年も経たぬ内、やっぱり映画を撮りたい!と会社を辞め、2002年映画美学校に入学。同高等科卒業。卒業制作の『ちえみちゃんとこっくんぱっちょ』が2006年第2回CO2オープンコンペ部門最優秀賞を受賞、と同時に次回作への助成金を得る。そして、翌年、その助成金を元手に制作した『ジャーマン+雨』が、第3回CO2シネアスト大阪市長賞を受賞。初めての劇場公開作となる。 

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阪本 「まず最初に、新人賞おめでとうございます」
横浜 「どうもありがとうございます」
阪本 「贈呈式で控えめなコメントをされつつ、強気というか、決意みたいなもの見えたんですけど、贈呈式、終わってどうですか」
横浜 「そうですね。実際あの場で、審査員の方とか監督さん達にお会いして、いろんな意見を頂いたんですけども...いい意見があの場では主(おも)だったので、まだちょっと半信半疑というか...他にもいっぱい...反省すべきところがあるはず...なので、ほんとかなぁみたいな...あの映画についていいとこだけじゃなくて、いろんなことをホントは聞きたいなぁと思ったのと...はい、思いました、はい」
阪本 「監督としての実感とかは?」
横浜 「授賞式を終えて実感が湧いたっていうのはまだなくて...作品を撮らないと、これから作品を撮って行かないと、なかなか...実感っていうのも感じる事は難しいのかなぁとは思いました」
阪本 「この映画が出来上がるまでの、いきさつと、作ってる時に、作った後の展開とか、そういうところまで考えていたのか、まずそこを聞かせてください」
横浜 「はい。私の一作目に『ちえみちゃんとこっくんぱっちょ』ていう長いタイトルの作品があるんですけども、それは当時在籍していた映画美学校の卒業制作で作った映画で、通常、卒業制作を作ると学校の映画祭で上映されるっていう決まりがあるんですけど、学校だけで上映されてもちょっとしょうがないんじゃないの、みたいな話をスタッフとしていて、じゃあ外にいっぱい出そうということで、大阪のシネアストオーガニゼーションエキシビションていう映画祭(CO2映画祭)に出品して、その他にもゆうばり映画祭とか色々出したんですけど、引っかかったのがそのCO2映画祭だけで、それでその年のグランプリを頂いて、グランプリを取ると次の作品に助成金をあげるので撮影して下さいという権利を頂けるので、その流れで『ジャーマン+雨』を、作ったというのが制作的な話なんですけど...」
緒方 「助成金はいくらだったんですか?」
横浜 「助成金は50万円で」
緒方 「微妙な金額ですね」
横浜 「金額的にはちょっと、映画作るには厳しいという」
緒方 「確かに厳しいよねぇ(笑)」
阪本 「『ジャーマン+雨』を撮影しつつ、その先の上映について、監督としての計算あるいはスタッフと話してた事ってあるんですか」
横浜 「CO2映画祭をやってた人が今回『ジャーマン+雨』のプロデューサーをやってくれたんですけど、その人もその映画祭にちょっと疑問を持ってたみたいで、上映のバックアップの面についてですが...せっかく作るんだったら劇場公開まで考えなきゃっていうのを、早い段階から言っていて...それともう一人、大阪のプラネットっていう劇場に富岡さんっていう方がいらっしゃるんですが、その方も、自主映画をいかにして多くの人に観させるかっていう熱意を持った方で...このお二人に出会ったことで、人に観てもらうというか、劇場で公開するっていうことについて初めて考えるようになって...」
小林 「ちなみにそれは、『かぞくのひけつ』のスタッフでもあるんですけど」
横浜 「あっ、そうです」
阪本 「映画を作っても上映されない人がたくさんいるんで、そういう意味でちょっと聞いてみたんですが、で、どういう風に売り込むって言ったら変だけど、どういうアピールをして、今回配給を担当したリトルモアの孫さんが観ることになって、上映にこぎつけたの」
横浜 「孫さんはCO2のその年の審査員でいらっしゃって」
阪本 「なるほど。では、劇場公開を意識して、制作段階でなにか考えたことは、ありますか?」
横浜 「まぁ、役者さんも有名な方は出てないし、ひさうちみちおさんに出て頂いたのは、やっぱりその劇場公開のことをちょっとでも考えたら皆が知ってる人がいいんじゃないかという」
緒方 「ええっ?最初はひさうちさんがキーパーソンだったの(笑)。笑っちゃいかんか」
横浜 「笑っちゃいけないです」
阪本 「まぁ正直な...話だね」
横浜 「ええ、富岡さんが提案して下さったんです。関西と言えばひさうちさん」
一同 「(笑っちゃいけないけど、爆笑)」

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阪本 「まず僕が興味持ったのは、脚本を書いて、映画を作る時に、何かあるポイントっていうか、例えばこのシーンを先に思いついたとか、こっから始まったみたいな事ってあります?」
横浜 「もう、一つのことじゃなくて色んなちっちゃいテーマというか、小ネタというか、それがバーッとズラーッとあって、その一個一個をふくらまして、物語を作っていくみたいなやり方をやっていたんですけど...あとは自分のテーマというか映画のテーマが、まぁ外に大きくポンとなんとなくあって、全体を段々とそこに近づけていくみたいな」
小林 「最初何ですかねぇ、最初は」
横浜 「最初は、そのホントにゴリラーマン...と呼ばれていることとか、歌手志望とか、ボットン便所とか、ホントにちっちゃいこと、ばっかりがバーっとあって。最初にテーマというか、考えてたのが、いろんな自主映画を観てて、CO2映画祭とかで、他の人の作品を観てて、どうしてもなんか...自分の傷ついた過去に対して、いかにも陰鬱な面持ちで、主人公がいて、それでもその穴をいかに埋めていくかまでの、ちょっとした成長過程みたいな、流れが、あるなってのを感じて...そんなの観ててもあんま面白くないなぁと...そうじゃないのをやりたいという事がまぁ、一番、おっきな動機ではあったと思うんですけど...はい」
阪本 「抽象的な質問だけど、強烈な登場人物っていうのがいて、この映画が成り立っているんだと思うんだけど、その、あなたと主人公の林よし子さんの関係は?...まぁパンフレットにトラウマとかね、いくつか書いてあったけど」
横浜 「やっぱり自分自身だと思うんですけど...全然私の事を知らない人があの映画を観て、その人に私が、よし子は私なんですって言ってもなかなか、えーっみたいな事をいつも言われるんですけど、昔から私のことを知ってる人があの映画を観ると、あ、これはお前だねっていつも決まったように言われるんです」
緒方 「横浜さんのどういうトコがよし子なの?」
横浜 「なんですかねぇ、まぁ昔歌手志望だったとか(笑)そういうトコから始まって、ゴリラーマンて呼ばれてたとか」
緒方 「ゴリラーマンて呼ばれてたんですか?」
横浜 「はい(笑)。呼ばれてました。あんまり人に執着しない所とか、冷たいと言えば冷たいとも言える...あの、態度とか」
緒方 「へー、そうなんだ」

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阪本 「贈呈式の後のパーティーで、よし子役の野嵜さんに、どういう言葉で監督は演出してたの?って聞いたら、やって見せてくれたって言ってたんだけど(笑)、それやっぱり、主人公に半身重ねるどころじゃなくて、あなた自身の中に、動いてみせれるものがあったっていう事だよねぇ」
横浜 「そうなんです...シナリオ書いてる時点から大体、よし子はこうだっていうのがありすぎるくらいあって、スタッフも前の作品からやってる人は、よし子は、あ、私、ヨコチンて呼ばれてるんですけど、よし子はヨコチン、なんだよ、みたいな事が頭の中にあったみたいで、なので(そんなスタッフは)撮影入ってから野嵜さんのお芝居見てて、やっぱちょっと、(ヨコチンとは違うなという)違和感みたいなのを感じてたみたいなんですけど...んー、自分の芝居を見せる...感情を見せるっていうのは、あんまりやりたくなくて...あそこでやるべきじゃなかったなぁと思ってますけど、今は」
阪本 「どこのシーンの彼女のパフォーマンスが一番、自分のやった通りやってもらったっていうか」
横浜 「えーっ、全部やったわけじゃないんですけど、ドイツ人が家に来て...一連の、麦茶を出して、怪我を手当させるっていうシーンをやったんですけど...そこだけです。それやったの」
緒方 「それは俳優にやってみてくれって言われたの?」
横浜 「テストを何回もやったんですけど、なんか分からなくて、何かが違うと思ってたら、突然カメラマンが、よし子はヨコチンなんだよって、皆の前で言い始めて...」
一同 「(笑)」
横浜 「それでやったって流れなんですけど...いやぁ、野嵜さん的には...どう思ったんでしょうねぇ。分かんないですけどねぇ」
緒方 「そういうの阪本さんもやりますよね」
横浜 「やられますか」
阪本 「うん、やってしまうよね」
緒方 「俺もやる時あるなあ」
阪本 「それは撮影のどれぐらい?」
横浜 「...三日目くらいです」
小林 「全体は?二週間ぐらい...」
横浜 「全体二週間で、まだ始まりの時ですね。まだ一日目二日目って掴めないじゃないですか。なかなか。三日目は更に掴めなくて(笑)」
阪本 「ていうことは、撮影はあの家の中から始まったっていうこと?」
横浜 「はい。そうですね。結構、撮影前に読み合わせを、野嵜さんと二人きりでしていて、よし子の台詞を全部私が読んだりとか、こういう風にやるっていうのを、見せてはいたんですけど、実際、撮影現場でやったのはそこぐらい...ちゃんとやったのはそこぐらいです」
阪本 「読み合わせで台詞を監督が全部言ってみるっていうことは、あんまりない事だと思うんだけど」
横浜 「あ、そうですか」
阪本 「要するに語り口とか、声色とか、台本読ましてもらうと、その、びっくりマークがついてる台詞とか、色々あるじゃないですか」
横浜 「はい」
阪本 「その、感情的なものも全部、あなたがお手本を示したっていう...」
横浜 「そうですね、やりました。二人きりで」
阪本 「どんな反応だったのかな、野嵜さんは。目の前で見せられて」
横浜 「野嵜さんは...そんなに反応を表に出さない方なんで、あぁなるほどみたいなリアクションはしてくれましたけど...特に悩む、ウーンって考えちゃうわけでもなく...はい。さっぱりしてる方なんで」
緒方 「贈呈式で初めてお会いしたけど...シャイな人ですよね」
横浜 「シャイ...シャイ、な人だと思います」
阪本 「でも会うと、心の中で何思ってるのかすごく怖い...よね、あの方」
横浜 「(笑)そうですね。ほんとに」
小林 「今のに付け加えると、こないだ、助監督の奥定君にもちょっと聞いたんだけど、やって見せるという事で言うと、なんかヒットラーの真似をして『滅亡じゃー』とか横浜さんがなんか自分でこう...ナチスの敬礼をしてたとか」
横浜 「ああ、そうでした。思い出した」
阪本 「え?公園のとこ?」
横浜 「はい」
小林 「『滅亡じゃー』っていうのを自分でやって見せたっていうのを聞いてて」
横浜 「公園のその...よし子と友達が暴れるところも、やったんでした。全部」
緒方 「あそこよかったなあ」
小林 「それは一回やってもらって、何か違った」
横浜 「何か違うと思って、本当はその滑り台の上に、よし子が登って、それで、さっきおっしゃったみたいに、手上げて『戦争終り』みたいな、『滅亡じゃー』みたいなことをやって欲しかったんですけど、ちょっと違ったみたいで、実際やってもらったら、あ、なんか違う...」
緒方 「どなたが?」
横浜 「私が」
緒方 「あ、私がか(笑)」
横浜 「ああいうことにしたんですけど...」
小林 「砂場で悶えるところは」
横浜 「砂場はやってないかもしれません。すいません」
阪本 「短期間の撮影でも、最初は何かお手本とか、ここはこういう風なイメージですということ示していったとしても、徐々に役者に委ねていくってことあると思うんですけど、最後の最後までやっぱりあなたのイメージの中で、イメージ通りに台詞の語り口も含めてずっと見せ続けた」
横浜 「その公園のシーンは自分でやったりしましたけど、途中からは野嵜さんのよし子に任せようと思って、何も言わなくなりまして、撮影終わったあと夜も同じ部屋だったんですけど」
緒方 「えっ、監督と主演女優が同じ部屋なの?(笑)」
横浜 「二人きりじゃないんですけど、他のスタッフもいて。まぁ何も話さなくなって、話してもちょっと埒があかなくなって来て、なんとなく」
緒方 「埒があかないってことは両者の意思の齟齬や衝突があったんですか」
横浜 「いやぁ、表面には出てないですけど、多分私がなんとなく野嵜さんに、ズレを感じてるっていうことを野嵜さんは感じ取ってたとは思いますけどね。野嵜さんから何か言って来るっていうことはないですけど」
緒方 「なかなかスリリングな主演女優との関係ですね(笑)」
横浜 「そんなネチネチした感じじゃないですけど。はい」
緒方 「スケジュールの関係で納得してないのにOKにしちゃったこともあるんですか」
横浜 「納得してないというか、これはOKなのか、OKじゃないのかどっちなんだろうということでOKにしたことはあります」
緒方 「それは時間の問題で?」
横浜 「時間もあるし、これ以上やってもちょっと、どうしたらOKに近づけるのか分からない時とか。まぁよくあるんですけど」
緒方 「ここに前年に新人賞貰った小林聖太郎君がいるんだけどさ。小林監督は去年僕がインタビューした時、未だにアタタタタタ〜みたいな、見てて痛いシーンがあるって言ってたよね」
小林 「まぁ、ありましたねぇ。ありましたねぇ。ええ」
緒方 「そういうのは自分で観直してあったりしますか」
横浜 「未だに...アタタタタ〜ていうか、ここはどうすれば良かったんだろうとか未だに解んないとことかあります...はい」
阪本 「まぁ逆に言えばそれのない監督っているのかなぁと思うけど」
横浜 「OKじゃない。もう一回って言うんですけど、そのもう一回でどこを直して貰うかっていう指摘ができない。ただもう一回って言い続けてるだけの時とか...何も変わらないんですよ。やってみて...」
緒方 「そりゃそうだ。なにか言わないと変わってかないよねぇ」
横浜 「はい。そういう時って皆さんどうされるのかなあと思って。監督の方々は」
緒方 「聞いた話によると阪本監督はテイク50ぐらいやるそうですよ」
阪本 「一回あったくらいの事をそんな大げさに...」
緒方 「そういう風に岸部一徳さんから聞いた」
阪本 「俺の話はいいです」
緒方 「(笑)でもすごくよくわかります。横浜さんの気持ち、皆どうしてるんだろうって思いますよね、分からない時」
横浜 「はい」
緒方 「で、一度、岸部一徳さんに聞いたことある。みんなどうしてるんだろうと思って。そしたら、崔洋一さんはそういう時撮影やめますって言ってた(笑)誰だってわからない時はあるよね」
小林 「だらけですけどねぇ、はい」

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阪本 「...ご免なさい、前の作品(『ちえみちゃんとこっくんぱっちょ』)って観てないんですけど、前の作品もそういう風に主人公とおつきあいをしたんですか」
横浜 「素人の、大学生の子をスカウトして、出てもらったんですけど」
小林 「どこでですか」
横浜 「青森で、買物してるところを」
一同 「(笑)」
横浜 「その子はなんかもう、思った通りに、私が言った通りに、ホントに素直に受け入れて、それを画面の前で出してくれる、不思議な人で、すごくいい子で。役者やらしても、結構...なので、その子とは役について、小難しい事も全然話さなかったですね」
小林 「じゃあ、その時は全部自分で、一回、こんな感じ、ハイやってって、一回見せたんですか」
横浜 「見せましたね。全部じゃないですけど。結構...」
緒方 「横浜さん、自分で出演するっていう発想はないんですか」
横浜 「ないです。その辺は、全く別物なんで」
緒方 「いよいよ役者がいなかったら自分がよし子をやるっていう発想はなかった?」
横浜 「ホントにいなかったらやるしかないのかなって、もしかしてスタッフは思ってたかもしれませんが...でも、幸い、見つかったので、野嵜さんが」
緒方 「自分で出るのはイヤなの?」
横浜 「それはさすがに無理です。そのぉどっちも、監督と...」
緒方 「俳優だけだったら良かったりするの?」
横浜 「いやいや、それも、カメラの前に立つっていうのがちょっとどうしても」
緒方 「歌手はまだ成りたいの?」
横浜 「歌手、今バンドやってます」
一同 「(笑)」
緒方 「映画監督と歌手、どっちかの道歩きなさいって言われたらどっち選びますか(笑)」
横浜 「どっちですかねぇ。やっぱ監督ですね、今は。歌は趣味で」

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阪本 「映画の中で、横浜さんの実際をそのまま描いてるとこってあるんですか」
横浜 「オーディション受けたとか...ボットン便所に落ちたっていうのはありましたけど...父親との関係がああで、こうなったとか、そういうのは全くなくって...ホントに自分の体験はちっちゃな小ネタでしかない...ですね」
緒方 「さっき野嵜さんに違和感持ったって言いましたけど、逆にその野嵜さんが作ってくれたシーンはないんですか。俳優の芝居から監督がインスパイア受けたってことは」
横浜 「えー、そうだなぁ......家に女子高生のマキが初めて遊びに来て、やる一連の流れ...あれも撮影の最初の方で、まだちょっと戸惑ってる時だったんですけど、あの時になんか野嵜さんが、思いがけない所でニヤッと笑ったり、してて、私はその時はそうして笑って欲しくなかったんですけれども、いきなりニヤッと台詞の最後で笑った時があって、それにNGを出しちゃったんですよ。頭が私こうなっちゃってて。...そのニヤッと笑ったことで、よし子は、ただ怒ってるだけじゃないっていうことが、分かったんです。後で」
阪本 「怒っているだけじゃない?」
横浜 「私のただの演出だったらホントに怒ってるだけ、何か、解らない怒りに常に陥っているよし子だっていう、そのままで最後まで行っちゃてたかもしれないんですけど...ええ」
小林 「それに気付いたのは編集の時?」
横浜 「撮影の途中で」
小林 「撮影の途中で、NG出したものの、あれはいけるんじゃないかと」
横浜 「いけるというか、あれを生かすべきだったと...野嵜さんはホントに可愛らしさを持った人で、私が見抜けなかった」
阪本 「映画を観てて、いい意味でっていう言い方になるけど、非常に感情移入を拒まれているような気がしたのね。自分と林よし子のお付き合いの仕方で言うと、簡単に感情移入しないでっていう拒絶みたいなものを感じて。なんだけど、リサイクルショップに行く場面で、一瞬敬語を使うんだよね、林よし子が」
横浜 「えーと、セーラー服を売りに行った時...」
阪本 「売りに行ってさ、すごい細かい事言ってますけど、よし子が『え、なんでそんなしかならないの。おかしいです』って言ってるんです。その『おかしいです』という敬語聞いた時に俺すごくホッとしたの」
横浜 「(笑)」
阪本 「お付き合い出来るかもしれない(笑)」
横浜 「アハハハハ...」
阪本 「それは二回見て、二回とも思ったんですよ、ええ」
横浜 「社会性、をよし子に垣間みたというか」
阪本 「そうです。あのぉ、僕結構普通なんですよ(笑)」
一同 「(爆笑)」

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阪本 「このよし子さんってほとんどのシーンが人と関わってるとこばっかりなんですよね。子供たちが落書きをした玄関口に行った時だけ、一人になっている彼女を見つけられるんだけど、彼女があの家で、一人で生活している、寝ている、あのカーテンの開け閉めも含めて、見たかったっていうか、どうなんだろうって、観終わってすごく思ったんだけど」
横浜 「そうなんですか」
阪本 「なんて言うか、心の傷とかをテーマにすると、一人で物思いに耽ってる姿とか、よく」
緒方 「一人孤独に食事するシーンとか」
阪本 「人と対面してない時、どんな顔してるんだろうって、それを普通描いちゃったりする訳じゃないですか。その一人でいるシーンっていうのは、あまり、発想としてはなかった」
横浜 「一人でいるシーン、あ、シナリオ上にはなかったんですけども、撮影中に、よし子が、一人でずーっといるっていうのを撮ったんです...ホント、よし子になってもらって、田圃の道を歩くとか、いろいろ、すごい長い時間ずーっとカメラを回してたんですけど、でも、シナリオ通り撮った箇所にそれがハマらなくて、あまりにもシナリオ通りに撮ることしか考えてなかったというのもあって...素材がハマらなくて」
小林 「えー、それはその、一人で歩いてるだけ?家の中でなんかしてるとかじゃなく。えっ、歩いてるだけ」
横浜 「笛吹きながら、歩いてたりとか、鳥追っかけたりとか、自転車でずーっとどっか行ったりとか」
緒方 「ハマらないっていうのはよくわかります。結局よし子を一人にさせたくないんでしょうね」
横浜 「そうかもしれないですね」
小林 「で、......あのドイツ人ですが、彼、すごい、貢献してると思うんですけど、あれはスカウトだってのは読んだんですけど、どこでどうスカウトしたんですか」
横浜 「撮影前に、京都を拠点に、色々ロケ場所を探してたんですが、同志社大学に留学生が多いっていう情報を仕入れて、助監督と一緒に行ってスカウトしたんです」
緒方 「そういう事は、普通に平気で出来るんですね」
横浜 「あ、もう、楽しいです。スカウト(笑)」
小林 「へー、何人ぐらい声をかけたんですか」
横浜 「その一発目が彼」
緒方 「(爆笑)」
横浜 「まずOKしてくれるとは思わないじゃないですか」
緒方 「でもまぁ怪しいですよねぇ(笑)」
横浜 「怪しいと思いますね」
阪本 「これからのことで、参考に聞くけど、話しかけた言葉を教えて」
一同 「(爆笑)」
横浜 「ホントに、忠実に、私たち実は映画を撮ってる者で、あの、企画書も用意して、シナリオも...とりあえずホントに制作的な事を説明するんです。こういう役を探していて、今初めて会って、ちょっと是非気になったので、この企画書を、もし良ければお茶でも、みたいな、ホントに普通の事ですね」
緒方 「相手は日本語喋れたの?」
横浜 「日本語ぺらぺらだったんです」
阪本 「その流れでキャスティングのこと聞きたいんですが、まず野嵜好美さんをどういう風に発見したかっていうのと、あと子役の三人のことを」
横浜 「野嵜さんは、まだ撮影場所が関西になるか東京の近郊になるか決まってない段階で、とりあえずオーディション始めないと間に合わないっていう状況の中で、東京の最初のオーディションに来てくれた方で...一回目に野嵜さんと会った時は、ああこの人がよし子だって確信はまだ持てなくて、他の人ももっと見てみようって事で二ヶ月位やってたんですけど、結局最後、色んな人に会って、やっぱり一回目に会った、あの野嵜さんがすごい気になって、自分を無理におっきく見せないあの態度とか、あの素直な反応が、気になっていて、是非もう一回、会わせて下さいって言って、二人っきりで、公園で会って...」
阪本 「公園?(笑)」
横浜 「場所がなくて」
緒方 「すいません。ドトールとかでもいいんじゃないかと思いますが(笑)。コーヒー200円くらいしかかからないし。なんで公園なんですか」
横浜 「あの、芝居をやってもらおうと思って。動きながら」
緒方 「あぁそういうことか」
阪本 「二人きりで?」
横浜 「あ、マネージャーさんがすごい遠く離れた所から...見てました」
一同 「(爆笑)」
小林 「ちなみにそのオーディションは、どこかのシーンとか、なんか本読み、読んでもらったりしたんですか」
横浜 「よし子が出て来るほとんどのシーンを私が相手役やって」
緒方 「えっ。相手役もやってるんですか」
横浜 「カメラ回しながら、私が相手役を...ちょっと動きを見たかったんで、ちっちゃい公園で人が行き交う中、やってもらいまして」
緒方 「よーいスタートとか言いながら?(笑)」
横浜 「いえ、そんな、おっきい声ではやってないですけど。はい」
ここで、座談会をビデオで記録していた高原秀和監督が思わず、

高原 「それって手持ちでビデオ回しながら、やったの?」
横浜 「そうです」
小林 「『滅亡じゃー』とか言って(笑)」
横浜 「エチュードもやってもらって、小学校の男の子役、ちょっとやって欲しいんですけどって言って。私が先生役やるんでって。で、私がいきなり先生として怒り始めて、野嵜さんが拗ねるって流れになったんですけど、そういうのを色々やって、なんとなく面白かったんで、で野嵜さんになったという...はい」
阪本 「ゴリラーマンっていうのは先に決まってる訳でしょ」
横浜 「はい。ゴリラーマンは」
阪本 「そこに似てる似てないっていうのも...」
横浜 「最初はそればっかりで、そのことで頭の中が一杯で、よし子はブスじゃなきゃいけないという感じで考えてたんですけど、それはちょっと、映画見てる側にとってはどうなんですかねぇみたいな話が他の人からあって」
緒方 「イメージキャストみたいなのはあったの?」
横浜 「イメージキャストは...まぁアジャコングの若い頃みたいな...」
一同 「へー」
横浜 「野嵜さんならちょっと不細工にもなれるし、可愛くもなれるし、見てる方にはあんまり不快感も与えないんじゃないかという。色んな角度から顔を見て、そう思って、はい、野嵜さんにお願いしたんですけど」
阪本 「子供たちは」
横浜 「あのケンをやった本多龍徳君は、一番最初のオーディションに来てくれて、ホントその時は子供っていう感じで、キリッとした顔してるけど...可愛い印象しかなくて、ちょっとこの子はケンをやると、なんか、可愛いだけで終わっちゃいそうな気がしたんですけれども、その後、何人も子供に会って、思い直して、最終的に決めました...あと、ちょっと太めの、みつぐっていう役の子は、もう存在そのものが面白かったんで。もう一人の、あつしっていう男の子は、他の二人とのバランスで決めました」
阪本 「皆、大阪の劇団の子?」
横浜 「大阪の事務所に入ってます...皆」
阪本 「でも、標準語でやらせてますよね、芝居を」
横浜 「そうですね。場所も設定上、ここは何県の何ていう町ですっていう設定は、無くしたかったんで、関西弁喋られるのがやだったんで...あんまり土地性、土着感というか、その土地そのものから自然に出て来ちゃう土着的なものを出来るだけ排除したかったというか、どこかわからない、ホントにあるのかもわからない、そんな土地で生きてる人たちっていうのを描きたかった気がします」
阪本 「その辺は僕とか小林君はよくわかるよね。関西弁でやった時に、地域の特殊性が」
小林 「先入観がね」
緒方 「ロケ場所を滋賀にしたっていうのは?」
横浜 「ロケハンで京都の舞鶴の方とか色々、いっぱい行ったんですけど、やっぱりメインはよし子の家だったんで、誰も住んでない一軒家で、その家の前に、広い土地があるっていうのを、まず探そうってことで、足使って、歩いて。そしたらたまたま滋賀のあそこに、あの一軒家をプロデューサーが見つけて、もうここしかないってことで、そっから周りにバーって広がって...」
緒方 「別に滋賀が良かった訳ではないんですね」
横浜 「特に、滋賀に愛着は無かったんですけど、なんか、変な土地で、全体的に。そんなに地域性も感じさせる場所でもないし、かと言ってなんか無機質過ぎる感じでもなくて、ちょうどいい場所だなっていうのはありました」
緒方 「琵琶湖のほとりが出てきますけど、あれはじゃあ、一軒家をロケハンした後に見つけたっていうことですかね」
横浜 「そうですね。シナリオ上は海だったんですけど...あそこの琵琶湖に変な木が生えててなんか、ハワイに生えてそうな(笑)。その変さ、変な感じが気に入って琵琶湖にしました」
緒方 「例えばコンビニの看板とか、ガソリンスタンドとか、今そういうのすぐ写っちゃうじゃないですか。場所が分かる文字だとかさ、そういうのを巧妙にハズしてる感はありましたね。『どこでもないどこか』みたいなことはこだわったんですか」
横浜 「そうですね。こだわってましたね。はい」
阪本 「またキャスティングについてですが、ひさうちさんについて、冒頭でおっしゃいましたけど」
横浜 「ひさうちさんのことはあまり、あのぉ、お顔とか、どういう声だとか、どういった喋り方されるのか存じ上げなくて、お名前だけその時に初めてプロデューサーから聞いて、その後どんな人なんだろうと思って、利重剛監督の『ベルリン』を観て、ホントにワンカットだけなんですけど。あぁもうこの方でって、すぐ、お願いしました。手紙書いて。そしたら、あっさりいいよと言ってくれたんですけど」
緒方 「喜んでやってくれた」
横浜 「喜んでという感じじゃないですけど。あ、当時その、足を骨折されてて、ちょうど」
緒方 「ホントにそうなの?あれ」
横浜 「はい。骨折、されてた事を、ずっと私に伝えるのを忘れてたみたいで」
小林 「動けない」
横浜 「動けない。いや、走るシーンあるから、やばいと思って、でもここで断られたくなかったんで、とりあえず一度お会いしに行きますので、ちょっとお話させて下さいっていうことで、お宅にお伺いしたら、ホントにあの劇中に出て来るギブスをそのまま付けてらっしゃって、松葉杖で。あ、こりゃやばいと思って、帰ってから、ひさうちさんに、あて書きをしまして」
阪本 「僕も一回仕事した事ありますけど不思議な人で、チャーハンをおかずに白いご飯食べる人」
一同 「(笑)」
阪本 「では、お父さん役の方は」
緒方 「お。問題のキャスティングですね」
阪本 「問題のって?」
緒方 「いや、すみません。問題というと言いすぎなんだけど。一応新人賞選考委員長なんで選考過程の話するとですね。選考委員の中であのお父さんのありようは違うんじゃないかっていう意見が出たんですよ。勿論お父さん役の人に非はないよ。けどあのお父さんのくだりはキャスティングを含めて如何なものかという意見が選考委員の中でも多数あったんですけど...、どうでしょう」
横浜 「制作的な事になっちゃうんですけど、お父さんがなかなかオーディションでも見つからないまま、時間が過ぎてしまって、ヤバいと言いつつも撮影はどんどん進んで行って、結局スタッフがあの方を見つけてきて」
阪本 「脚本では、歩行器で現れることになっていましたね」
横浜 「そうですね。歩行器でリハーサルをやってもらったんですけど、ここはやっぱり、虫、ダンゴ虫というか、地面に這いつくばる、じゃなきゃだめだっていうのがわかって、やって頂いて...はい。...お父さん役の方とはその、当日に初めてお会いして...」
緒方 「なるほど。もうやるしかないと」
横浜 「やって下さる方ですし」
緒方 「じゃぁ当然野嵜さんも現場で初めて会ってるんだ」
横浜 「初めてです」

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阪本 「キャスティングから現場のことに話を戻しますが、...僕自身、初めて監督になった時に、カット割りっていうものは、何が正解なのか、全くわからないまま、延々線を引き直したりしてたんだけど、カット割りとかはどうでした」
横浜 「カメラマンが、万田(邦敏)監督の『接吻』ていう現場をやってから、こっちに来たんですけど、万田さんは、テストで役者の芝居を見て、見ながら自分も動いて、それでカット割りを決めるんだっていうのを私に話してくれて、じゃぁ私もそれやってみるって...事になったんですけど、そんな高度な技は出来なくて、芝居の方に気が行っちゃって、カット割りどころじゃなくて、なのでもう、カット割りに関しては、撮影の最初から最後まで、とりあえず芝居を決めて、動いて貰って、スタッフ全員で考えるっていう、とんでもなく時間の掛る事をずっとしてたんです」
緒方 「キャメラは、二台回してるんですか」
横浜 「はい、二台回して、常にではないんですけど。打ち合わせを全然してなかったので、ほとんど何も指示出してないんですけど、Bカメには」
緒方 「二カメでやるっていうのは監督のアイディアですか」
横浜 「私は最初一台で考えてたんですけど、撮影部は二台でって、なんとなく頭にあったみたいで。子供も出て来るし、ガチガチした芝居以外にもなんか面白いものが撮れたり、結構自由のきく、自由さが、出るような作品にしたかったんで」
阪本 「基本的にBって手持ちになってるのかなぁ」
横浜 「そうです。ほとんど手持ちです」
緒方 「まぁドッチボールのとこは二カメだろうなとは思ったけど」
横浜 「あ、あれは」
緒方 「ええっ?あれはワンカメなの?」
横浜 「ドッチボールは」
緒方 「わからなかった。ダメな演出家だなぁ、俺(笑)」
横浜 「演出ありきで、カット割りって決まって行くはずなのにまだそれが出来ないんですけど、皆さんはどうやってお考えになるんでしょうか」
緒方 「小林先輩、『かぞくのひけつ』の時は」
小林 「僕ももう時間が無かったんで、一応軽いコンテは書きました、けど、勿論現場で変わりますし、芝居を見て、そうですねぇ、表情が見えるようなカメラポジションを探って」
阪本 「助監督やってると、朝一番に監督が台本見せて、その線引きを皆が写すっていう習慣が身に付いていて」
横浜 「はい、はい」
阪本 「そういう所で育つと、結局今度は見せる側になって、やっていかなけりゃならない義務として、まず線引きで」
緒方 「最近もやってるの?」
阪本 「やりますよ。ものすごいやりますよ。クランクイン前に全シーンカット割りして、一週間前にやり直して、前日の夜やり直して当日の朝やり直して。で、現場でドッカーン」
緒方 「(笑)」
阪本 「基本的にはやっぱ芝居見てからやりたいんだけど、自信がないんだよね。その、時間との闘いの中で」
横浜 「はい...そうですね」
緒方 「俺は最近どんどんやらない方向に向かってるなあ。最初のころは怖かったから一応マメにやってたけど、このごろはなんかやっていくのがイヤになってきて...」
小林 「白紙で現場ですか」
緒方 「なんとなくは決めていくけどね。これで成立するかなぁみたいな事をキャメラマンや助監督や記録さんに聞いたりして。カット割りで悩みたくないんだろうね」
阪本 「手元に『ジャーマン+雨』の撮影台本があるんですが、映画と見比べると、あまり変わってないなって印象があるんですけど、こっから外れると怖いっていう思いは、あったんですか」
横浜 「そうですね、シナリオの、この字面に書いている事しか出来なかったっていうのが、正直なところで...実際に芝居をやってもらって、あ、ここは、これ足した方がいいから足しちゃおうみたいな、そういうことが出来なかったんですね」
阪本 「じゃあ現場の発想とか、あんまりそういう事は考えないで、忠実にこなして行く」
横浜 「忠実と言えば忠実ですし、キチキチと言えばキチキチ...です」
阪本 「ここに至るまでは、何稿くらい重ねていった?」
横浜 「三稿くらい、です。シナリオ書いて二ヶ月後に撮影だったんです、確か」
緒方 「その三稿というのは、誰かにダメ出し受けたりしたんですか」
横浜 「プラネットの富岡さんに、一度見て頂いて、それでちょっとダメ出しというか、シナリオ会議をして、それでこれに至ったんですけど、そんなに大きくは変わってないです」
阪本 「横浜さんの、性格を知らない人がこの脚本を読んだ時に、このよし子の、キャラクターとか描き方っていうのは、理解されました?」
緒方 「あぁ、いい質問。そこだよね」
横浜 「いやー...これは、あまりにも、脚本として読む分には、いいけれども、実際、映画の現場で実物が動いてやったら、ホントにひどい事になるぞというのは言われた事がありますね。これをどうやって撮るのって...私もシナリオ書いてる時あんまり、撮る事を考えて書かなかったんで。このキャラクターは難しいぞっていう事は、言われて、初めて気付きました」
阪本 「人の意見は聞く方ですか?」
横浜 「人の意見、結構聞きます。耳は貸します...けど、それを実行するかは、また別なんですけど」
緒方 「現場での演出部やカメラマンとのスタッフワークってどうですか。大変じゃないですか。特に新人の時は」
横浜 「はい。うーん...ボロボロですね、スタッフワークは。あんまりコミュニケーションを...とれないというか...大変だと思います、周りの人は。なので、贈呈式のパーティーで、阪本監督にちょっとお話聞いて、スタッフと関係を築くのにすごい時間をかけるって聞いて、あぁと思いました」
阪本 「まぁ演出以外の仕事でね、人間関係っていうのはね、まぁ監督業の一つ...」
小林 「その、映画というよりは、横浜さん自身のことですけど、美学校を選んだっていうのはなんかあるんですか。映画美学校で勉強しようと...一回会社に、普通の会社に入ったんですよね」
横浜 「はい。他の所は授業料が高くて。それに、一応働かなきゃいけなかったので夜間の学校を」
小林 「あ、じゃまだ会社は入ったまんま」
横浜 「会社はやめたんですけど、ま、バイト、フリーターです」
緒方 「それだけ映画やりたかったっていう...」
横浜 「はい、映画を作りたかったんです。どういう風に作るのか分からなかったので」
緒方 「なんで映画作りたいと思ったの?」
横浜 「えー、大学の頃から映画を観始めるようになりまして、段々と。で、文章を書くのちょっと好きだったので、シナリオのスクールに通ったり、してたんですけれども、やっぱ書くだけじゃ足りないと思って、現場行ってみたいなっていうのがあって、それで学校に入ったんです」
小林 「ゼミとか...誰に教えてもらったんですか」
横浜 「ゼミは最初万田さんのゼミに入りました」
阪本 「プロフィールに一念発起って書いてあるけど、なんか一個きっかけがあったっていう風に、も読み取れるんですけど」
横浜 「いや、特に何もなくて、会社に入った時点で、あ、なんでこんなことやってるんだろうっていう風に...映画をやりたいのに間違ってるっていうのがズーッとあったので、やめるタイミングを見計らって...」
阪本 「ちなみに、何の仕事、会社」
横浜 「それは、アミューズメント会社で、飲食とか、パチンコとか、アパレルとか色々やってるんですけど、最初ラフォーレで店員をやってました」
緒方 「へえ。洋服売ってたんですか」
横浜 「洋服売ってました(笑)」
緒方 「それはもう、最初から、気持ち半分でやってた訳ですよね」
横浜 「気持ち半分...半分どころじゃなくて、ほぼ無かったです」
緒方 「(笑)自分は映画に行くんだみたいなことは...強い意志はあった」
横浜 「ありましたね。何もしていない割には。気持ちだけは。ありました」
緒方 「映画監督になるっていうこと?」
横浜 「よく分からないけど、なんか映画にたずさわりたいという...監督になりたいと、まだその時は思ってなかった...です」
緒方 「万田さんからは、何を学びましたか」
横浜 「映画の見方、見方みたいなのが、あるんですかねぇ。それを、今まで何も考えずに映画観てたので、それはそれで楽しかったんですけど。何か法則らしき物があるんだっていう...事を学んだんじゃないですかね」
小林 「観た映画で、こういう映画作りたいってなんかそういうの、あります?刺激を受けたっていうか」
横浜 「一番、記憶に残ってるのが...フレディ・M・ムーラーっていう監督の『山の焚火』ってご存知ですか」
緒方 「すいません。知りません」
横浜 「それは、ホントにすごい映画で...未だにそれは記憶に残る一つなんです。皆さんは、どういう映画なんですかね」
阪本 「んー、なんだろうなぁ。昔はヘルツォークとか好きだったよね、普通に」
緒方 「なんか、横浜さんにあわせてない?(笑)」
阪本 「そういえば、『ジャーマン+雨』を観ながら、全然違うんだけど、ヘルツォークの『カスパー・ハウザーの謎』っていう映画を思い出した」
横浜 「へー」
阪本 「16歳までね、監禁されて...言葉は『私のお父さんは白い馬に乗っていた』って言葉しか知らなくて、で、最後、殺されて、解剖される。この林よし子も、この後、殺されて、解剖される...」
一同 「(爆笑)」
阪本 「そんな気がしたんだ」
緒方 「小林さんは」
小林 「そうですねぇ、いやどうでしょうね、はぁ(ため息)」
阪本 「なんか、単なるファンの時よ」
小林 「いや僕はそんなに、ちっちゃい頃、映画マニアではなかったんで、テレビでこう日曜洋画劇場とか見るじゃないですか。それで、割と好きだったもの、脱獄物が好きでしたね。『アルカトラズ(からの脱出)』すごい好きなんで」
緒方 「僕は分かりやすいですよ。アメリカンニューシネマと、『仁義なき戦い』とロマンポルノという、この三本柱」
横浜 「それはもう、お若い時から、というか小さい頃から、ご覧になって」
緒方 「そうですね。親父が映画好きだったんで子供の頃から一緒に戦争映画や西部劇しょっちゅう見てた。活劇が好きだったんですよ。思春期に見た映画ってやっぱり影響受けてますよね。だから今、映画撮ってる時に昔観た映画のショットを無意識になぞってる気がしますよね」
横浜 「へー」

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阪本 「映画を作る職業があるっていうのを自覚したのはいつ頃ですか...」
横浜 「ホントに...美学校入ってからかもしれないですね。なにを、具体的に、作業としてどういうことをやる...やってる人がいっぱいいるっていうのを知ったのは」
阪本 「映画監督っていう職業をいつ頃、言葉として知りましたか」
横浜 「職業...職業、ですか」
阪本 「僕だと、テレビに出てる大島渚監督だったり、テレビで見て、あっこういう人が映画監督って言うんだ...」
横浜 「ちっちゃい時にドラマ色々見てたんですけど、鈴木清順さんが、結構俳優さんでいっぱい出てらっしゃって。『セーラー服通り』とか、の校長先生とか。あの方はずっと俳優なんだと、思い込んでたら、ある日テレビかなんかで、監督だっていう事を知って、えっ、この人が映画監督だったんだっていうのをすごい、びっくりした、てのがありましたね。それは結構ちっちゃい頃でしたけど」
阪本 「質問をちょっと戻しますが、冒頭でおっしゃった、野嵜さんと公園行って、カメラ回してオーディションをして、芝居させてっていう、僕はそんな、度胸って言うのかな...そういう発想ができないんですが。その時に、世間の目ってどういう風に感じてるの?」
横浜 「世間っていうのは...」
緒方 「横を通る人とか」
阪本 「それは子供時代に遡ってもいいんですけど、こういう作品に至る、なんか一番、正直なポイントを見つけたいなぁと」
横浜 「正直どうでもいい、というか...色々やってもらわないと、やってもらわない方が不安なので...やってもらう事でなんか自分も、野嵜さんのことも分かるし、自分も、なんか自信がつくというかそういう意味もあってやってるんですけど。周りの目は...」
阪本 「ま、どういう子供だったか、みたいな事なんですけど(笑)」
横浜 「そうか、そういう事ですね」
小林 「対世間、社会」
横浜 「...ちっちゃい頃ホントに人見知りで、全然喋らなかったみたいなんですけど、手の掛らない子で、全然泣かなかったし、一人で、ほっといても遊んでるし。そういう子だったんですけど、ま、小学校の頃も特に悪い事するわけじゃなくて、でも、なんか高学年頃からちょっと、段々と爆発し始めたというか」
緒方 「ほう」
横浜 「友達の間でですけど。ホントにごく親しい人の間で、割と活発になり始めて、でも、表ではおとなしくしてるというか...」
緒方 「友達いたんですか」
横浜 「はい、友達います」
緒方 「友達いたかどうかは大事なポイントですよね」
阪本 「その活発になったっていうのは...」
横浜 「なんですかねぇ...活発...すいませんちょっと、分かんなくなりました」
一同 「(笑)」
横浜 「あんまりあの、女同士の付き合いは苦手なタイプだったんで。休み時間はトイレに一緒に行かないとかそういう、子ではあったですけど、そんなに和を乱す、ほど一人ぼっちな、タイプではなくて...なんか暑苦しい関係を避け続けた、感じはありますけど...同性同士の、人間同士というか、同性に限らず...そうなんです...あんまり本音で語り合うという習慣が無いかもしれないです」
緒方 「未だに?」
横浜 「未だに。はい」

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阪本 「映画撮ってる時のOKとかNGの境目って、その基準って、自分が思春期の時にすでに出来上がってたり、するってあるじゃないですか。好むものと好まざるもの、避けたいものと受け入れられるものっていうのは、過去にもうすでに出来上がってるんだなぁと思う時僕あるんですけど」
緒方 「思う思う。最終的には本能だからね。OKNGの差っていうのは」
横浜 「はい」
阪本 「どうですかって変な言い方だけど、映画との関係で、自分の思春期とか、その頃の実生活とか、なんか、リンクしてるなみたいな、なんかない?ですか、なんかそういう瞬間」
緒方 「阪本さん無茶苦茶難しい質問してるよ。まず自分の場合を言って下さいよ(笑)」
阪本 「いやいや、僕はそういう事あるんでね」
緒方 「例えばどういう事?阪本さんが言ったら話しやすいと思いますよ」
阪本 「うん、あのね、えーと、俺がガキの頃の記憶で、ものすごく覚えてるのは、先生が組合活動でデモに行ったかして、自習時間になった時」
緒方 「うん(笑)」
阪本 「その後、先生が戻って来て、『あの、どうでしたか、自習時間は』って。俺、学級委員長だったんだな、多分な」
小林 「へー」
阪本 「その時に、『あの(・・)村田君が勉強してました』っていう言い方したの」
緒方 「誰が」
阪本 「俺が。で、休み時間に女生徒たちに囲まれて、弾劾されたのね」
一同 「(爆笑)」
阪本 「まぁ言えば差別感っぽいことだよな、差別だよな、『あの』って言い方。その時の自分っていうか、それを言っちゃった自分がとっても嫌いでね、それを、多分どっかに、持ち続けてんじゃないかって思う時がある。どんな企画をこれから立てようかと思う時、やっぱそこを挽回したいっていう気持ちがあったりする...」
緒方 「穴を埋めたいと」
阪本 「うん。そういうのって、無いですか。自分の言った発言ですごく、引き摺ってる事」
緒方 「めちゃめちゃありますよ、そんなの。うん、あの、僕は割とあの...いいんですか、僕の話して」
小林 「どうぞ」
緒方 「僕は昔からその、文化祭とか体育祭でお祭り男だったから、必ずお祭りの真ん中に居たいわけですよ。で、その延長が多分自分の中で映画だったんだけど、お祭りって結局寂しいじゃない」
阪本 「はあ」
緒方 「さらにお祭りのために誰かを傷つけてる自分がいつもいてさ」
阪本 「告白タイムになってきたな」
緒方 「お祭りは必ず何時か終わるでしょ。で、まずその終わる事が寂しい、寂しいからどんどんハイになって行くんだけれども、結局その寂しさは纏わりついて取れないっていうのが一つ。もう一つはその、お祭りを産み出して行くには、多少個人を犠牲にしなきゃいけない部分があったりするじゃないですか。で、それは自分ですごい心苦しいんですね。だったらお祭りなんかやらなきゃいいのにという、思いの葛藤が未だにあってさ」
横浜 「はい」
緒方 「だから、映画の現場っていまだに寂しい。打ち上げとかクランクアップって大嫌いだもんね。もう、ずっと撮影やっていたい(笑)」
横浜 「へー」
緒方 「初号のあとのパーティーが一番苦手かな...うん...寂しいよね。だから俺の作る映画は寂しいのかって最近分かった。で、今も新作の準備してて、娯楽映画だから明るくしたいんだけど駄目。寂しくしなきゃ、寂しくしなきゃという方向に行っちゃう。自分が寂しいから皆寂しくならなきゃって(笑)」
阪本 「あっ、そう」
緒方 「すいませんでした。はい小林君、どうぞ」
小林 「いや難しいですねぇ」
横浜 「難しいですね」
小林 「何を話していいものか。えぇその物作りと、その、思春期、小さい頃何がリンクしてるんでしょう」
阪本 「いや、俺とか緒方さんに『お前ら馬鹿だ』って言ってもらってもいいんで(笑)」
小林 「うーん、なんでしょうね...何が繋がってんのかなぁ、んー、自分の、出し方って言うんですか、自分を表に出したいのか出したくないのか、すごい自分の中で矛盾してる子でしたね。何て言うか...」
緒方 「あぁでもそれって『かぞくのひけつ』と通じてるよ」
小林 「出たいんだけど、出たくなく。うーん、で、隠れてたいのかっていうと、なんか見つけてくれ、どっちやねん、なんか自分でどうにも出来ないのが続いて。でもそれは打ち破りたいとはずっと思っててってことはあるんじゃないですかねぇ」
緒方 「じゃぁあんまり、バーンと前に...目立ちたくない」
小林 「そうですね」
阪本 「なんかこう、愛されたいんだけど、簡単に愛してほしくない、みたいな」
小林 「で、そんなはずはないみたいなね、ええ。またまたウソばっかりみたいな、ええ」
緒方 「いや、それ、小林聖太郎の作品にリンクしてるよ。職人性と作家性の狭間みたいな事になってくると思うんだよそれ。助監督経験豊かな聖太郎君が、人間の捌き方、スケジュールのこなし方も含めて映画を完成させた、それと横浜さんの映画は対極にあると思うんだよね」
阪本 「対極?」
緒方 「あのー、選考の時にも言ったんだけど、この『ジャーマン』は詩であると。要するに、小説とか評論とか散文ではなくて、一種の詩であるってことは、良い悪い別にしてね、言ってたんですよ」
阪本 「で、どうですか、作品との繋がり」
横浜 「いや、何だろう...やっぱよし子、なんだとは自分では思っているけれども、よし子になれてない、フラストレーションみたいな...」
小林 「願望」
横浜 「願望...願望ですね」
緒方 「よし子に対する憧れってあるんですか」
横浜 「憧れ...憧れるって言うんですかね...あります」
緒方 「あの後、よし子どうするんだろうね」
横浜 「...お父さんの病院に初めて行った時に、医者が、お父さんは死ぬか死なないかのどちらかです、生きることはもう無いでしょうって、言っていて、最後によし子が病院で寝てる時、友達のマキは、死ぬか生きるかのどっちかだって、言ってるんですよ...多分生きるんじゃないですかね、よし子は、あの後。生き、目を覚まし...はい」
緒方 「お金使っちゃったけどね。植木屋も辞めちゃったんでしょ、あれ。植木は続いてるのか」
横浜 「植木屋は、辞めてはないです」
緒方 「辞めてはいないんですか」
横浜 「バックレただけです」
緒方 「オーディションはどうするの」
横浜 「オーディションも行くと思いますけどね」
緒方 「おー...あの、トラウマの縦笛は」
横浜 「それはどうですかね、もう飽きちゃったのかもしれないですね」
緒方 「あれ、ノート一回破っちゃったのがちょっと気にはなった...破っていいのかと」
横浜 「その都度その都度、物事に反応してしまう、ので、よし子は、後先考えずに...」
阪本 「ラストで、マキ、が『なんか笑ってる』って言った時に、アップが映るじゃないですか」
横浜 「はい」
阪本 「笑ってるっていう風にも見えるんだけど、その、微妙な、芝居をさして、るよね」
横浜 「はい」
阪本 「『笑ってる』って言う台詞あったからそうなんだろうけど、僕にとっては、違う印象も受けたんだな...あの顔に」
緒方 「個人的な感想で言うとさ、よし子のトラウマは最後に結局解決したのかってことなんですよ。正直言うと俺は、最初映画館で観た時に、ラストがどうだったか全く記憶に残らなかった。それはラストシーンがあんまり自分に届かなかったっていう事だと思うんだけど。で、二回目選考のため、観た時も、あれ、こんなラストだったっけって思って今思い出してもあんまり印象に無いんですよね。それはよし子の生き様を「親との確執」や、「トラウマ」という中に閉じ込めたくないと自分が思ってるんだろうね。ボットン便所のエピソードの後、最後親と一種精神的な和解のような形でよし子の中の何かが解決するのは、やだなという風に僕は思ったんですよ。だから、さっき、その後どうなったかってしつこく訊いたのは、よし子の生活は今後どうなるのかという興味なんです。それはどういうつもりで描きました?今のラストだと一種の成長ものになってると思うんですけど」
横浜 「そういう意図を持って、成長させようとかはなかったんで、あくまでも、切り取った部分というか、一連の長い人生の本当に通過、ちょっとした点というか、そのつもりで考えていたので...そーか...」
緒方 「意地の悪いこと言わせてもらうと、作者がどうしていいか分かんなくなったんじゃないかっていう意見も選考会では出たのね。ラストに関しては。...すいません。失礼なことを言ってます」
横浜 「いえいえ」
緒方 「じゃもうあれ、あれしかないという感じですか」
横浜 「よし子だけじゃなくて、周りの子供たちと、親父と、マキと、という関係性も含めて考えていて、うーん、そーですね......すいません、分かんなくなりました」
緒方 「じゃあ分かりやすく言うと、俺がもしプロデューサーだったら、このラストの翌日を書いてくれないかって絶対言うと思う。命が助かった後のよし子がどういう表情で日常を紡いで行くのかは見たかった。それ、考えませんでした?割と重要な事だと思うんですよ、この映画語る上で」
横浜 「よし子は、その瞬間その瞬間、の人なので、今後も変わるか変わらないのかというのも、わからないというか...」
緒方 「そうか。なるほどね」
横浜 「ええ。多分、あの後目を覚ますけれども、だからと言って何か覚醒した訳ではなくて、子供たちもよし子に対して、何か変わった、変化した対応を示すわけでもなくて、目を覚ましたよし子に、あ、目覚めたっていう、だけ、だ、とは思ってるんですけれども。...はい」
阪本 「まぁ見たいって思わせ、て終わるっていうことも、あるとは思うんです。だから、僕がさっき言ったある、決着としてね、主人公のアップが、あまり意味付けが多いと、それ以前は一体何だったの、っていう事に、なるのかなっていう...」
緒方 「(横浜氏に)じゃぁラストに関しては悩んでないと」
横浜 「あれはあれで、もう、シナリオ書いた時に、スッと出て、そのまま撮るしかないっていう...」
緒方 「へー。それは意外だったな...失礼しました(笑)分かんなくなったんじゃないかとか言って」
横浜 「いえいえ。撮影中はちょっと悩みましたけど」
阪本 「あの、黒味が2ブロック続けて出て来るじゃないですか」
横浜 「はい」
阪本 「2ブロック、使い方が全く、違う、と思ったんですけど、2ブロック目の黒味っていうのは、よし子の主観的なもの、という意味でいいんですか」
横浜 「そういう意味もありましたし、ていうか、試してみたいっていうのがあって、絵の見えない映画をやってみたいっていう、実験じゃないですけど、そういう気持ちの方が強くて、音だけで、映画を作っていけるのかどうか、やってみたかったんです多分...はい。ま、声だけじゃなく実際撮った方が良かった、見たかったていう意見、の方が多いんですけど」
緒方 「新人の特権ですよね(笑)」
横浜 「しかもあの黒味は黒味ではなくて、ホントに暗闇を撮るべきだったと、反省してるんですけど...」
緒方 「それはいい。素晴らしいですね。あの黒味はぼくも少し抵抗あった。あ、やってるやってるって感じで。こういう事やりたがるよなぁと(笑)思いながら...」
横浜 「そうです」
緒方 「でも実際の暗闇を撮るってすごい素敵だなぁ」
横浜 「ええ。後で考えついた事です」

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阪本 「さて、聖太郎君はどう見たの、この作品」
小林 「あの、僕出来ない、と思いましたね、初見でまず。これは」
緒方 「あぁ、ま、皆思うよね」
小林 「羨ましいなぁと思いました。共通のものを、あんまり感じないといいますか、だからホント、僕も初見は詩だなと思ったんですよね。で、詩だとすれば、もうちょっと後半こうグッっと出来るんじゃないかなとは思い...」
緒方 「グッととは?」
小林 「あのぉ短く。ちょっと後半、ドッチボールとか以降がなんか物語に向かおうとしてるみたいな、感じ受けて、それは、もっと、もっと大胆でも、良かったかなと僕は思いました」
緒方 「詩って言われる事はどうですか」
横浜 「あぁ、言われて初めて気付く事なんですけど、撮影中も、ちょっと皆さんがおっしゃってる詩とは違うかもしれないんですけど、ドイツ人がよし子に自分の告白をするシーンがありまして、その時私はいつもと同じく対面で、撮影を考えてたんですよ。そしたらスタッフの一人が、突然、声を上げ始めて、ここは詩なんだよっていうことを言い出して、カーテンが揺れるんだよみたいな。なんのこと言ってるのかさっぱり分からなくて」
一同 「(爆笑)」
横浜 「さっぱり分からなくて、今になって、考えれば、ちょっと分かるんですけど、詩を意識して撮るべきだという事を言ってですね、それで、その時考えてた照明のセットも全部変えて、カメラも部屋の中でドリーを組み立てて、私分からないままやろうとしたんですけども、やっぱり分からなくて、その言ってる事が...もうやっぱり詩止めますって言って、いつもの、前の意識に戻ったっていうのがありましたけど...」
緒方 「でも、それはいいスタッフですね」
横浜 「はい。ホントに」
緒方 「ホントに素晴らしいスタッフだなあ。そう言わせてしまうのも監督の演出ですよね。スタッフがここは詩なんだよっていう事を言える環境があったのは素晴らしいですね」
横浜 「そうですね」
小林 「なんか他ので読んだんですけど、タイトルから、思いつくっていう事があるって、どっかで書いてた、と思うんですけど...」
横浜 「感じ、というか...言葉の持ってる実感、質感というか、あと音ですかね」
阪本 「よし子がドイツ人を前に歌う歌の曲名とこの映画のタイトルは一緒ですけど、曲名は映画のタイトルを受けてっていう事なんですかね。どっちが先みたいな話...」
横浜 「そうです。タイトルが最初にあって、ここは最後に『ジャーマン+雨』を歌うべきだと考えて詩を考えました」
阪本 「じゃあ、歌手になりたいっていうのはああいう、歌を歌いたい...」
一同 「(爆笑)」
横浜 「結構歌謡曲とかそっちの方は、歌いたいですけどね」
高原 「ちょっと訊きたかったのは、俺、歌が基準にあるような気がする。高校の時とか、皆だいたい歌とか、まぁ音楽に影響されるじゃないですか。それで、何に影響されたのか、バンドやってて、どんな歌歌ってるのかなってのがすごい興味あるの」
横浜 「私はアイドルに影響を受けてまして、ちっちゃい頃から、あの、ジャニーズが好きで、その、小学校の頃、当時居た、アイドルは、CoCoとかribbonなんですけど」
緒方 「(笑)うん、うん」
横浜 「おニャン子の後の。その人達がすごい好きというかライバル心というか、人に言えないライバル心を...」
一同 「(笑)」
横浜 「あと、観月ありささんとか、当時歌われてたし、今もですけど、勝手にライバルに...」
緒方 「CoCoとかribbonになろうと思った時期もあるわけですね」
横浜 「ああいう風に、成れると思ってたんです」
一同 「(笑)」
高原 「バンドは、どのくらい」
横浜 「まだ始めたばっかりで、もう既に10年くらいやってるバンドに後から、ポーンて入ったもんで、まだその音楽に馴染んでないんですけど」
緒方 「ボーカルですか」
横浜 「ボーカルです。あの、楽器出来ないんで、ボーカルだけ、はい」
高原 「どんな」
横浜 「それはなんだろう、ロックと言えばロックです。ちょっとポップなロック」
阪本 「え、詩も任されてると...」
横浜 「詩はもう既にあるんですけど、ちょっと自分じゃ歌いづらいんで、変えようと思ってます。」
緒方 「それも横浜さんにとって表現活動ですか」
横浜 「そうですね」
緒方 「え、じゃ、これから、たまにライブとかやっていくんですか」
横浜 「ライブやってます、はい」
緒方 「どういうとこで」
横浜 「新宿の、JAMという所で」
高原 「昔ね、ハードパンクだったんですよ、JAMは...なにを指向してんのかな、そこら辺にヒントがあるのかな」
横浜 「あんまりないです。その、多分...これっていうものは」
阪本 「その歌ってる自分がないと、なんか保てないものってある...」
一同 「(笑)」
横浜 「なんだろう。映画作るの、すごい頭使わなきゃいけないから、ちょっと苦手なんですけど、そんなちっちゃい頃から映画に馴れ親しんでるわけじゃないし、歌、歌ってる時は運動と似てて、その瞬間瞬間の発散というか、持久力じゃなくて、瞬発力というか、短距離みたいな、短距離ですね。そういう解消はしているかもしれないですね」
阪本 「うん」
緒方 「これから先、映画を覚えようと思います?」
横浜 「思います。覚えたいです」
緒方 「その、知らない強さって相当あったと思うんですよ、正直言って。映画をね」
阪本 「うん」
緒方 「それでまぁ、詩と言っちゃったんだけど、言ってみれば本能で撮ってるみたいなとこが評価されたとこでもあるとは思うんですけど。最終選考に残った『国道20号線』の富田(克也)さんや『腑抜け(ども、悲しみの愛を見せろ)』の吉田(大八)さんていうのは、やっぱりちょっと映画を知ってるんですね。で、最後一人選ぶ時に『映画を知らないってことは魅力的なことなんじゃないか』みたいな事を選考委員が皆思ったんですよ。で、映画を知るって一体なんなのかって言うと、例えばエキストラの動かし方であったりね、イマジナリーラインであったり、そういうテクニカルな事ですよね。そういうのはどうなんですか。これから勉強したい?」
横浜 「そういう事に関しては全く、どうでもいいと言うか、寧ろ無視するくらいで、作っていきたいとは思っています」
緒方 「じゃあ何を覚えたいですか」
横浜 「演出と、撮影であったり照明であったり、色んな周りのものとの相互関係というか、技術的な事もあるんでしょうけど、何か自分の中で法則、ちょっとしたものでもいいから、取っ掛かりを常に、持っていたいなっていうのはありますけどね...」
緒方 「人のホンで撮ろうとは思わない?」
横浜 「人のホンで撮ろうとは思わないです、はい」
緒方 「原作もの、コミック原作で、ホンがあって、横浜さんやって下さいみたいな話が来ると思うよ。そしたらどうする?」
横浜 「うーん、はい」
緒方 「そしたらそれは、お断りしますか」
小林 「『まことちゃん』実写化とか」
緒方 「そうそう(笑)」
横浜 「うーん、自分で面白く出来そうな、余地というか、なんか隙間があったら、考えてみるのも、楽しそうだなとは思いますけど、『ジャーマン+雨』も前の作品もそうですけど、自分が書いたシナリオで、ある程度、色んな評価を頂けたっていうのがあるんで、そこは、割と大事にしていきたい、とは思ってますけど」
緒方 「贈呈式の時に、これからも映画を作り続けますって言ったけど職業欄に自分は『映画監督』ですって、もう書ける?」
横浜 「もう最近言ってます。怪しまれるんですけど...言ってはいます。言ってます、はい」
緒方 「職業映画監督として、自分じゃもう腹をくくったようなとこあるんですか」
横浜 「職業映画監督というのは」
緒方 「要するに映画監督で食って行くということ」
横浜 「はい」
緒方 「あぁ、力強いなあ」
高原 「CD出したい?」
横浜 「ええ、何か、いいお話があれば」
阪本 「えっ、何?あぁ音楽の事?」
一同 「(笑)」

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阪本 「批評されるってことについては、どうですか」
横浜 「それは、もう『ジャーマン+雨』公開されて、ネットをちょこちょこ調べてたりしてて、ホントにその都度その都度傷ついてますけど」
一同 「(笑)」
横浜 「まぁでも、その、批評以前にやっぱ自分は作る事に対してまだ未熟な部分が多くて、その問題の悩みの方が、そっちをまず、やらなきゃっていう気持ちの方が大きいので、批評される事は別に怖いとか、そんなまだ、嫌じゃないですけど、はい」
緒方 「これから何を覚えたいですか。こだわるけど」
横浜 「覚えたいっていうのは何でしょうか」
緒方 「未熟って言ったけど」
横浜 「いやホントに、制作の一からの事なんですけど、人とのやり取りとか、役者さんのどこを見るかとか、どうすれば引き出せるかとか、そういう...」
緒方 「それはもう出来てるんじゃないですか」
横浜 「いやいやいや。やっぱり自分なりの課題っていうのが、ズーッとあって...」
阪本 「では、最後に、次回作について、聞かせて下さい。次、何をやろうとしているのかを」
横浜 「次、のテーマというのがあって、色々まぁテーマは分散してるんですけど、『ジャーマン+雨』では、子供になるっていうのが、なんとなくのテーマだったんですけど、次は動物になるというテーマを考えて...」
緒方 「(笑)」
小林 「文字通り動物?」
横浜 「いや、違います」
小林 「動物として、生きてる...なのか」
横浜 「それです」
緒方 「動物の何に惹かれるんですかねぇ」
横浜 「うーん、その、断続性というか、人間だったらまぁ、先の事、過去の事、色々考えて想像も出来る訳ですけど、動物は、目の前にある、そのものだけに反応することしか出来ない...」
緒方 「動物になりたいの?」
横浜 「動物に、虫になってみたいなって、この前、なんとなく思いましたけど」
緒方 「ああ。それは素敵ですね」
横浜 「いやいや」
阪本 「なんか、分かりませんが...楽しみです。じゃあとりあえず、座談会はこんな感じで。では、(協会への)入会申込書にサインして頂いて、終わります」
一同 「(爆笑)」
横浜 「えーっ」
阪本 「オチで」
緒方 「そうですね。」
阪本 「横浜さん、長い時間ありがとうございました」
一同 「ありがとうございました」
横浜 「ありがとうございました」
緒方 「じゃ、申込書!」