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日本映画監督協会 会員名鑑

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2011年東京国際映画祭レポート~シンポジウム

2012年02月02日

 

film1.gifのサムネール画像シンポジウム
神なき国の巡礼

 

「ケンタとジュンゃんの国」上映後、大森立嗣監督と、コンペティション作品出品監督であるアルトゥーロ・ポンス監督、シルヴァン・エステバル監督を迎えてのシンポジウムが行われた。劇場参加者約150名。
「監督とは何ぞや」というテーマであったが、「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」に関する話題を中心に抜粋要約させていただいた。
敬称略。()内は注釈、補足。

 

002.jpg大森立嗣監督(日本)1970年生まれ。41才。
「ゲルマニウムの夜」(2005)監督
「ケンタとジュンゃんの国」(2010)脚本/監督
「まほろ駅前多田便利軒」(2011)脚本/監督

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 「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」上映後3監督がスクリーン下に並ぶ。
司会 「(アルトゥーロとシルヴァンに)ただいま上映されました大森監督の作品についてお願いします」
アルトゥーロ「コンニチハ(日本語)・・大森さんの映画を拝見しほんとにびっくりしました。私たちは同じような年齢ですが、まるで双子のような感じがしました」
大森、笑う。
アルトゥーロ「物語の構成、カメラの使い方、リズム。私の映画との同一点が多いと深く感じました」
シルヴァン「私たちをどこに誘っていくのか、わからないような。西洋人の私たちにはよりどころの無いような。物語が突然カーブしたり。非常に驚かされました」
司会 「大森監督は海外でのこの作品の評価をどうとらえていますか」
大森 「多くの日本人の感想も(シルヴァンと?)わりと似てますよね。ふたり(アルトゥーロとシルヴァン)の映画を見たんですけど、ふたつとも信仰というものに関して描かれてるんですが。実はこの映画も日本における自然崇拝、アニミズム的なものがあるんです。僕としてはそういうところにこっそり心の中でゆだねているというか、そういうものを作ったってのがあるので。わかりにくいのかな、というのはあります」

 

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アルトゥーロ・ポンス監督(メキシコ) 1973年生まれ38才。
「羅針盤は死者の手に」今回が一本目の長篇作。


司会 「大森監督は一本目が原作もの。二作目のこれはオリジナルとなったわけですが」
大森 「ゲルマニウムの夜って映画を撮ったあとしばらく撮れなくなりましてね、それはやっぱり内容もハードだったし、もちろんお客さんもね、そういう監督に次を撮らせようとはなかなか思ってもらえなかった。だから3,4年ずっと脚本書いてたんですよ。そのうちの一本がね(成立した)。脚本書くのはお金かからないんで」
司会 「本を書かれてる時、観客のことは頭にありますか。観客を想定しますか」
大森 「まずは自分が楽しめるか、俺は今ノッて書けてるかというところが大事ですね。あとバジェット。撮れないものは書けないから。プロデューサーのことは考えます」
司会 「(アルトゥーロとシルヴァンに)おふたりは?」
アルトゥーロ「私が撮りたいと思ってるのは従来のストーリー性があるというものではなくて、なにか刺激的な、なにか引き起こすという感情というか、アルゴリズム、そういうものに入っていきたいのです。大事なのはリズムだと思います。作品の中に熱い思いを入れたい。観客の視点はあまり考えていません。作品は私にとっても実験的なものです」
シルヴァン「私は自分が考えていることを真摯にあらわしたい。何も禁じること無く映画の中にすべてをあらわしたい。映画の中ですべてを語ることが出来るように考えています。観客のことを考えるより、自分が観客だったら何が見たいかと考えます」
司会 「大森作品のどこに日本特有のものを感じましたか。またどこに普遍的なものを感じましたか」
アルトゥーロ「大森さんは小津、黒澤、宮崎など伝統的なことをしっかり勉強されたのだろう。でもこの作品は非常に現代的な映画だと思う。モチロン(日本語で)」
シルヴァン「難しいですが。ケンタの話がどこに向かっているのか全然想像つかないところが日本的というか。シーンごとにどこに行くのかわからない。フラッシュバックは西洋的な手法ですが」
大森 「もちろん(シルヴァンの)言ってることはわかります。シーンごとに俳優さんに演じてもらってると、(僕が)言わなければ彼らは感情がどこに向かっていくかわからなくなるんですね。そうするとストーリーを語る上での必要な方向に向かわなくなるんだけど、僕はそれでもよいと(思う)、俳優がその瞬間をちゃんと息をしてそこにいるという部分を大事にしてるので、そういうことはあると思います。・・アルトゥーロの映画を見た時はうらやましいと思って。信仰、ひとつのものをみんなが思えるというところにパワーがあってね。僕ら(日本人は)は頑張ろうしか言えないみたいなね、俺達の寂しさがあって、もちろん頑張らなきゃいけないんですけど。みんなで危機を乗り越えなきゃいけない時には、なんかやっぱり信仰があった方が復活する力が強いのかな、うらやましいなと思いますね」

 

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シルヴァン・エステバル監督(フランス) 1967年生まれ。44才。
「ガザを飛ぶブタ」初長篇監督作。


司会 「原作とオリジナルということに対してどのようなお考えをお持ちですか。それに対し監督としてどうやっていくかとか」
大森 「原作ものじゃないとお客が入らないということでこういう状況(原作ものの方が企画が成立しやすい)が出来てきてると思うんですね。だから映画祭やってる人はね、やっぱりお客さんを育てていくというようなことをやらないと、そういうのを、機会があった時に、わかんない映画でも、僕も最初映画見てわかんないのあったし。わかんないものがあるんだということも伝えてほしい、子供達にもね。
映画作んなきゃいけないし自分の思いもあるし、両方考えながらね、若い人達は小さい映画でもやってるし、先輩方は撮影所出身もいるし。僕はその間のキャリアでね。やっていこうと」
アルトゥーロ「監督を続けていきたい。でもいつまで出来るかはわからない。現在スペインでやっているけどドイツに行きたいとも思ってるし。企画はあるけど、・・どうなっていくんでしょう。(日本語で)ニホン好き!」
シルヴァン「次回作の方向性はあるけど、どうなっていくかはわからない」
司会 「(大森に)現在、映画監督として(やっていけると)の手応えは」
大森 「・・映画監督は一回失敗したら終わりみたいなことを感じてるのでね。今はさらに映画減ってますので。いちおう来年準備してますけど、ほんと撮れるのかみたいな(笑い)」



005.jpg

アルトゥーロ監督は大森作品の印象を問われ「私と双子のようだ」と語ったが・・
ふたりのキャップがまったく同じであることに気づきビックリ!偶然??

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大森監督が、二度、宗教を話題にしたことが気になった。
「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」は、ケンタとジュンが、網走にいる「神」の元に向かう巡礼の旅の話と捉えることも出来るだろうか・・。


 

 

film1.gifのサムネール画像