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日本映画監督協会 会員名鑑

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CGの来世~山崎貴監督編~

2009年10月14日

      「CGの来世~山崎貴監督編~」

 

topyou.jpgSF映画が好きな少年でしたが、中学の時に登場した「スター・ウォーズ」が一番衝撃的でした。「2001年宇宙の旅」を除き、それまでのSF映画には無かった見事な特撮映像にもハマり、何度も観たものです。
当時はデジタル技術がまだ発展途上だったので、フィルムによる撮影・合成が主体でした。モーションコントロールカメラというコンピューター制御のカメラですが、撮影するのはミニチュアであり、合成もフィルムとフィルムを重ねるオプチカルプリンター。しかし、現在の合成はほとんどがコンピューターによるデジタル合成で、PCレベルでもかなりな事が出来るようになりました。 
CG、デジタル技術を先頭になって発展させて来たのは、やはり「スター・ウォーズ」のルーカス監督の特撮工房ILMです。特にCGの発展における記念碑的な映画は全てILMによるものです。まず、1989年の「アビス」での水の表現、1991年の「ターミネーター2」での液体金属の表現、そして、1993年の「ジュラシックパーク」での恐竜の表現で決定的なものとなりました。ティム・バートン監督のように、好きでモデル(コマ撮り)アニメをやる人もいますが、「ジュラシックパーク」では当初予定していたモデルアニメより、ILMが試作したCGアニメが素晴らしく、CGに変更になった経緯があり、CGの記念碑的な作品となりました。
「ジュラシックパーク」でモデルアニメを準備していたフィル・ティペットさんは、かなりガックリしたものの、CGに転身し、会社にスーパーコンピューターを導入して「スターシップ・トゥルーパーズ」というCG映画を作るという根性を見せてます。
デジタル技術の進化に貢献して来たのはジョージ・ルーカスさんであり、原点となった作品は「スター・ウォーズ」です。自分は地元の松本の映画館でこの作品を観て、強い衝撃を受け、頭の中は銀河状態になってましたが、同じ松本の劇場で「スター・ウォーズ」を観て衝撃を受けた有名監督がいました。歳も1歳違いだけで、ほぼ同年代です。日本アカデミー賞を総ナメにした「ALWAYS 三丁目の夕日」の山崎貴監督です。
監督であり自らVFXもこなしてしまう多才な監督です。 自分は上京して調布の日活撮影所で学んだり働いてましたが、近所に白組という特撮の会社がありました。その白組は今や日本を代表する特撮工房となり、工房も調布だけでなく、都内にいくつか存在します。
山崎監督はこの白組に所属してます。そして、また大作を作り上げました。9月5日公開の、「BALLAD 名もなき恋のうた」です。山崎監督から聞いて驚いたのですが、自分の高校の後輩で同じ映研にいた水島努君が演出をした「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦」が元ネタとなり、この「BALLAD 名もなき恋のうた」が創られたそうです。 
コンピューターの進化で計算時間など、次第に手間が縮小しているものの、まだCGというのは大変な作業で、多くの人材も必要です。しかし、観客は目が慣れてしまうと、苦労した映像にも感動しなくなりますし、大切なのはストーリーだと思います。でも、CGがあるからこそ、表現の幅が広がったのは事実ですし、今後、なくてはならない技術ですので、今回はその分野で日本の第一人者であり、監督側からも意見を聞ける山崎さんを通し、CGについて語ってもらいたいと思います。
 また、協会員で、同じ広報委員である舞原賢三監督が石井良和監督を誘って応援に駆け付けてくれました。舞原さんが現在監督している「レスキューファイヤー」は特撮ヒーローのテレビ番組で、そのVFXを山崎監督が所属する白組が担当しています。(編集長・竹内英孝)


 

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prof01.jpg 【山崎貴監督プロフィール】1964年生、長野県出身。「スター・ウォーズ」に衝撃を受けて、特撮の道を目指す。1986年、株式会社白組に入社。CMや映画などのミニチュア制作から始め、1993年の「大病人」(伊丹十三監督作品)ではデジタル合成などを担当。2000年に自ら企画した「ジュブナイル」で監督デビュー。「リターナー」「ALWAYS 三丁目の夕日」「ALWAYS 続・三丁目の夕日」「BALLAD 名もなき恋のうた」へと続く。

 

 

 

prof02.jpg    【舞原賢三監督プロフィール】1961年生、東京都出身。映画監督・鈴木則文氏に師事。1994年、深夜ドラマ「マエストロ」で監督デビュー。「エコエコアザラク」「アナザヘブン」「百獣戦隊ガオレンジャー」「美少女戦士セーラームーン」「仮面ライダー電王」など、特撮がらみの作品を多数手掛け、現在は白組がVFXを担当する「レスキューファイヤー」を監督中。

 

 

 

 

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  【石井良和監督プロフィール】 1965年生、東京都出身。脚本家・柏原寛司氏の紹介で、現場につく。鈴木則文、柏原寛司、飯田譲治、大川俊道、川北紘一、神谷誠、押井守、西村潔、大塚恭司監督に師事。映画・テレビだけでなく、DVD特典映像・ゲーム映像・CMなども手がける。映画では「クール・ディメンション」(2006年公開)、テレビでは「奇跡の生還スペシャル 芸能人特別編 ゴジラ編」(NTV)、CMではゲームボーイアドバンスソフト「ゴジラ怪獣大乱闘」などを監督。

 

 

 

  

prof04.jpg【竹内英孝監督プロフィール】1963年生、長野県出身。1983年にっかつ芸術学院卒業。国際放映にて「時代劇スペシャル~半七捕物帳」で助監督デビュー。その後、東映東京撮影所に移り、「てれもんじゃ」「スケバン刑事」シリーズ「仮面ライダー」シリーズ「巨獣特捜ジャスピオン」「エイトマン」「真・仮面ライダー」などの助監督を務める。撮影所を離れ、パソコンソフト「一太郎ver.4」のマニュアルビデオで監督デビュー。現在まで、アイドルイメージビデオ、企業PV、音楽PV、CM、Vシネ、ライブ用映像など、幅広い分野で監督・撮影・編集などを担当。

 

 

 

 《前半戦

西暦2009年8月24日、白組にて

 

 

 

bal01.jpg 最新作「BALLAD 名もなき恋のうた

 

竹内「映画『BALLAD 名もなき恋のうた』が公開前でお忙しいのに、時間をさいて頂き、ありがとうございます。せっかくですから、この映画をアピールしてください」

山崎「...いい感じに仕上がってます。オリジナルが凄い好きだったんですよ」

竹内「後輩・水島努君が演出した『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』(2002年度作品)ですね」

山崎「そうです。それと、『ラストサムライ』(2003年度作品)という映画の撮影を見学する機会があったんですが、日本を舞台にしてるのに、ハリウッドの人達が作ってるので、凄いセットとか良かったんですね。そういう点で、悔しく思ってて、時代劇で一回戦ってみたいと思ってたんですが、その時たまたま水島の関わった『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』を見たら、凄いストーリーも良かったので、これ実写にしたら戦えるんじゃないかと思いまして...」

竹内「最近、レンタルビデオ屋でチェックしてますが、いつもレンタル中ですね」

山崎「予習で借りてるようですね。とにかく、名作です。...それから『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』には山城が出て来るんですよ。そういうのがちゃんと描けてたり、ヤリで戦う所も忠実に表現してます。よく戦国時代のドラマで刀で戦ってますが、あれはウソで、当時はヤリで戦ってたんです。

兵士のほとんどは農民で、難しい技術を要する刀は持っていなくて、ヤリで叩き合うというのが基本的な戦い方でした。そういうのを『しんちゃん』の方でちゃんとやってたので、今回は実写でちゃんとやろうと思いました」

竹内「水島君のブログ読んだんですが、『BALLAD 名もなき恋のうた』のセットは凄いと書いてありましたよ」

山崎「そうですかあ(笑)。...でもセットは一部しかないんで、自分らのやりたい事を表現するには、いろいろな所でロケしたり、デジタルで貼り合わせたりして、オリジナルの『しんちゃん』の世界と近いものを作り出すようにしました」

竹内「建物はCGで作られたんですか?」

山崎「お城はミニチュアで作ったりとか、『三丁目の夕日』の時からの技法なんですが、一旦ミニチュアで作っちゃうと、コンピューターに取り込むんですよ。三次元的に。それをコンピューターの中で再レンダリング(計算)して、カメラワークが自由に出来るミニチュアみたいなものを作って、それを実写と合成するとか、山城がある山並みみたいなものは全部デジタル(CG)で作ってます」

竹内「このカットが一番大変だったとかあります?」

山崎「物凄いカメラワークをするシーンがあって、アキラクレーンという21メートル位ある長いクレーンがあるんですけど、それを戦の時にブン回しちゃったんです。広い絵から寄った絵になって、また広い絵になる長いワンカットで撮ったんですけど、当然、エキストラの人達は全然足りないし、城も一部しかないのでバレバレなんですね。

それを全てデジタルで補完していかなければいけなかったので、そのカットは大変でしたね」

竹内「群衆とかですね。『ロード・オブ・ザ・リング』とかで使われたソフトですか?」

山崎「そうです。マッシブ(Massive)というモノで、人間を設定してやると、そいつらが人工知能を持ってて、命令を与えてやると、その通り動くんです」

竹内「予算的な苦労話とかあります?」

山崎「そうですね。エキストラ300人いると、当然、移動費や食費が掛かりますし、一人一人に甲冑(かっちゅう)を用意しなければいけないので、一番、甲冑にお金掛かりましたね。あと、野外セットにしても、土木工事ですからね。山を切り崩したり、金掛かりますよね。

建物自体に掛かる金額よりも、地面をどうにかするって金額の方が凄い大変でしたね」

竹内「そういう所はCGでは出来ないのでしょうか?」

山崎「いや、CGでも出来るんですが、100%CGにしてしまうと凄くチンケなものになってしまうんですよ。結局、基準点がなくなっちゃうんで...」

竹内「基準点とは?」

山崎「つまり僕らは実写っぽいものを作りたい訳で、その時、画面に何%の実写が写ってるというのが非常に勝負所なんですよね。

出来ればそれは80%以上実写にしたというのが自分の考えです。例えば戦のシーンでは塀周りが大きなウエイトを占めてて、かなりそこが写される訳ですよ。その時に(塀などを)全部デジタル(CG)でやりましょうと言うと、実写の部分が少なくなる訳ですよ。

セットを一つ作ってしまえば、ほとんどのカットが撮れてしまって、デジタルはその補完で済む訳ですよ。バレちゃった所をフォローするだけでという感じです。

予算が許される限り、セットを作ったり、実写で撮ったりするという事を出来るだけ多くやって行き、デジタルは補助で入るという考え方を僕自身は貫いて来たし、これからもやって行きたいです。

今回は大手門の建設が予算的に可能だったので、そこにお金を掛けましたが、もう少し予算が削られてたら、その一部だけになってましたし、同じ事やるならデジタルの方が安いですから、予算がなければCGのウエイトが高まって行く訳です。

でも、そのバランスは出来るだけ実写にウエイトを掛けておきたいというのが僕の基本的な考えです」

竹内「予算の金額は、これだけ必要だからと提示するのか、この金額で作れという形なのか、どうだったのでしょう?」

山崎「自由に、これだけやりたいから、これだけくれって形ではなくて、まず最初に企画がありますよね。その中で、このスタッフで、どれだけ掛かるかという事から始まりますが、例えば、『BALLAD』が現場5億でやれって言われても現実感がないので、それは止める訳ですよ。それがトータルで20億という話になれば、何とかなるんじゃないのと言う事で動き出します。でも、20億というのは宣伝費込みの総予算ですが、出資者は20億の絵を要求する訳ですよね。ですから、あってもあっても足りないという感じで、知恵を絞って...。ですから、デジタルとのせめぎ合いですよね。どこまでデジタルでやるのかって言う」

竹内「CGでも、凝ったモノは高額になるのでは?」

山崎「んん、これがまた社内でやってる事、痛し痒しの部分なんですが、CGにも読みがあって、大体これ位って予算が最初に決められる訳ですね。やれるやれないと言う議論はあるんですが、グロスの予算が決まったら、その中で力を入れる配分はこちらで自由なんですよ、裁量が。

だから、この部分は非常にシンプルにしてしまって、簡単な方法で流しちゃって、重要な所にウエイトを置いて、頑張ろうとか、セットの人と話し合って、『ここまでCGでやりましょうか』と言うようなやりとりはありますね。ま、出来る事プラスアルファぐらいの事を毎回挑戦はしてるんですけど、社内で全部やってるので、凝ったから凄いお金掛かっちゃったという事はないですね。凝るとしたら、凝る事を前提に予算取りをしているんですよ。プロデューサーが『こんなに凝っても、この映画の役に立たないよ』と言う話になったら、やらない訳です」

竹内「自社でCGなどの処理をしている強みがあるようですね?」

山崎「それは凄いありますよね。...ただ、同時に、ウチのスタッフを死なしちゃう訳にはいかないんで、やりたいからと言って僕が我を通すのも、通しずらくはなりますね。スタッフの健康状態を考えながら、続けて行かないといけないですから」

竹内「睡眠時間を削ってやるような事はよくあるのですか?」

山崎「睡眠時間を削るというのは、あまりいい事ではないですね。ウチのチームの場合、10~15人位で長い期間やるんですよ。6ヶ月とか。睡眠時間削るのは、末期の頃、締め切り直前の頃は多少効果はあるんですけど、途中、睡眠時間削っても、翌日、使いものにならなくなるので、長期戦の時、睡眠時間削るのは良くないですね」

 

 

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                                     (C)東宝株式会社

 

 監督に欲しい知識

竹内「山崎さんは、ご自身でCGは作られるんですか?」

山崎「ある程度やりますよ。ただ、それはあくまで、自分がCGクリエイターになるのではなく、CGの人達とコミュニケーション取るためには、基本的な知識が必要なんですよね。

それは、本を読んだだけでは絶対手に入らない知識で、実際に自分でソフトウエアをいじってみて苦労しないと分からない部分だったり、例えば、あるCGクリエイターが『この部分が難しいので、なかなか出来ないんです』と言った場合、言い訳かもしれないし、本当にそうかもしれないので、その判断が出来たり、新しい技術が次々に入って来る世界なので、それがどの程度の事が出来るのかは、自分である程度試してみないと分からないんですよね。

...で、僕は特に作業を効率化したいんですよ。簡単な方法で、より良いモノを作って行きたいですね。簡単になるための努力は惜しまないと言うか、そこで手に入れたノウハウとか、実際に作業してみて肌感覚で分かる苦労というものは、後で色んな事が、楽になるための、正しい道を見つけるための手掛かりになるので、そのためにCGのソフトウエアを触ってみるというのは凄くしてますね。その中で面白い技法があったら、最後まで自分が手を出してしまう事もありますが、あまり自分が前に出過ぎると、CGクリエイターがやりずらいでしょうし...」

舞原「そういうのは知っておきたいですねえ。打ち合わせの時、この人は本当に大変なんだろうかとか、ありますよねえ」

山崎「ええ、それが分かってると思われちゃえば、後は正直にやるしかなく、駆け引きがなくなって来るんで」

舞原「僕は(CGを)やらない方なんで、今までやってもらったモノに対して、『これくらい出来るんじゃないの?』って、経験で言ったりしてますが、やった方がいいですね」

山崎「でも、まあ、僕の場合、デジタルに特化してるという事になってるんで、基本的にそこの所を外す訳にはいかないと言うか、特にそれには詳しく言えなければいけないというのもあるんで、丁寧にやってますね」

 

 

 

yamazakitan.jpgVFXスーパーバイザーとは?

竹内「VFXスーパーバイザーと言う肩書きがありますが、具体的にどんな事をなさるのでしょう?」

山崎「僕の場合、設計が一番大きいですね」

竹内「設計とは?」

山崎「まず最初に絵コンテを作って、更に説明の難しいカットなんかは、ラフなCGモデルを作って、カメラワークなり、一度作って見せるんですよ」

竹内「プレビズ(ミニチュアやCGを使った動く絵コンテ)の事ですか?」

山崎「そうです、プレビズです。プレビズを作って、この部分はセットでやるとか、CGにするとか、マット画(背景用の絵)にするとかを振り分けたり、何を発注したりとかを決めるのが設計ですね。この設計が大事でして、これを間違っちゃうと、大抵、ろくな事にならなくて、不必要な所で労力を使う事になったりします。例えば、大してカメラワークがない所で3次元モデル(背景CG)作るより、(マット画として)絵に描いちゃった方が早い訳じゃないですか。あるいは、ヨリの絵でディテールがハッキリしている所をCGで発注したばかりに、物凄くCGのクオリティー上げるのが大変で、ミニチュアなら一発で終わったのにと言う場合もある訳だし、設計の段階で何をどうするって事をキッチリしておく事って、凄く大事なんですね。

...後は、各々CGクリエイターから出来上がって来たモノをコンポジット(合成担当)がまとめる訳ですが、その時に色々ディレクションするって事がありますね。このCGじゃまだダメだとか、あの要素を足してみてくれとか。

...だから、入口と出口の所で何だかんだ言ってるのが、スーパーバイザーの仕事です。...僕の場合、設計の段階が一番ウエイトが大きいんですが」

竹内「山崎さんは元々デジタルの技術が豊富で、そこから監督を始められてますが、全くそういう知識がない人がCGを扱う映画を監督する場合、学んでおきたい事ってありますか?」

舞原「それ俺の事だよ(笑)」

竹内「いや、舞原さんはかなり経験あるじゃないですか(笑)」

舞原「助監督の時、全くCGいじった事なかったので、監督になってから使うようになって、本当、大変でした。これ出来るの?と言う感じで...」

山崎「逆に、知らないのに知ったかぶりするのが一番嫌われるって言うか、学ぶという姿勢を持つのが一番大事じゃないですかねえ。だから僕も知らないジャンルに関しては、その筋の人を捕まえて一生懸命聞けば、そんなに意地悪しないで教えてくれるんで、そういう事が大事だと思いますよ。頼ればだいたい教えてくれます。よっぽど意地の悪い人は生き残ってませんし(笑)」

 

ブルーバックでの演出

竹内「CGを扱う仕事で、こういう事を知ってれば良かったとか、何か具体的にありますかね?」

舞原「一番感じたのが、バックを全てCGにして、ブルーバックで芝居だけ撮る事があったんですけど、その時の役者のテンションのあり方が難しかったですね。

...最近、役者以外フルCGでやるって映画があるじゃないですか。あれ、どうやってるんだろうと思いますね」

山崎「基本的に僕はそれやらないですね、おっかなくて。何か拠り所があって欲しいですよねえ」

舞原「ブルーバックの前で、役者に『ここ凄い所なんです』と言っても難しいと思いますよ」

竹内「もしやるとしたら、どうします?」

山崎「気合い入れるしかないでしょう(笑)。でも、プレビズが凄く役立つと思いますよ。これは役者さんだけでなく、スタッフにも役立ちますよね。ライティングなんかも、何も言わなかったら、ただ人を照らすだけの普通のライティングになってしまうし、(光の方向など)ビジュアルで具体的に表示出来れば、だいぶ変わって来ると思いますね」

 プレビズの重要性

竹内「プレビズの作成は大変じゃないでしょうか?」

山崎「本番に比べれば楽ですよね。ラフな事で出来ちゃうんで。と言うか、逆に言うと、プレビズなんか簡単だから、作っておかない方が、気が知れないと言う感じですね。だっで、現場に行って、『さてどうしよう?』なんて悩む事になったら、物凄く、おっかないじゃないですか。だけど、プレビズ作っておけば、物凄く複雑なシーンでも、役者さんも分かるし、カメラマンも分かるですから。...凄いラフなモノでいいんですよ。『BALLAD』でも凄いラフですよ。兵隊さんなんてヤリ持ってるだけですから」

竹内「細かい動きは必要ないと言う事ですね」

山崎「必要ないです。ムードが分かればいいんですから」

竹内「レンダリング(計算)時間は短いんですか?」

山崎「一瞬です。大抵のソフトに動きを確認するためのラフなレンダリング機能がありますし、それはもうほとんどリアルタイムに近いですね。光とかマッピング(モデルの表面に張り付ける柄や色など)のないグレーレンダリングですから。逆に凝って(プレビズを)作っても、皆、訳が分からなくなっちゃうみたいです。中途半端なモノが一番良くないですね。だから僕はグレーレンダリングの方がいいと思います」

石井「まず、絵コンテを書かれて、プレビズを作られると言う事ですね」

山崎「ま、プレビズを先やっちゃう事もありますけどね。たまにプレビズから絵コンテを書き移すなんて事も。妙に絵コンテが出来上がりの絵に近くなったりして(笑)」

石井「先程、ミニチュアの話が出ましたが、大きなモノを作られるんですか?ちょっと聞いた話ですが『三丁目の夕日』のミニチュアはそんなに大きくないと聞いてますが」

山崎「そうですね」

石井「それを取り込む時はどうするんですか?」

山崎「普通にデジカメで撮るだけですよ。それで、同じ形状のモノをコンピューターの中にも作って、後は丁寧にマッピング(貼り付け)して行くだけですよ。

...結局、挙動という事とは全く関係なくなる訳じゃないですか、デジタルにしてしまうという事で。だから、壊したりもしないし、重力に左右されたりもしないし、て言う事は、手作業だけで、本物に見えればいい訳ですよ。そうすると、24分の1で、充分、狙い通りのモノになるので。これがまた人が絡んで来るとか、壊さなければいけないとなって来ると、サイズが変わって来ると思うし、様々だと思いますね。日本人、手先が器用なんで。アメリカ人は4分の1とか、6分の1とかで作りますけど、日本人は24分の1とかで。作業量は減るじゃないですか」

石井「じゃ、基本的に作れるモノに関しては、会社に発注してミニチュアを作る訳ですね」

山崎「そうです」

竹内「テレビの場合、プレビズは作られるのですか?」

舞原「ないです。絵コンテですね。『レスキューファイヤー』では白組さんと組んでやってるんですが、凄いCGの量なんです。寝てないんじゃないかと思うくらい...」

山崎「おかしいですよね、あれ(笑)」

舞原「ここまで出来るんだあって所まで行ってるんですね」

山崎「ここまでやれてるから、予算が下がって行っちゃうような(苦笑)。それが基準点になっちゃうと、ちょっとヤバイんじゃないかと...」

舞原「新しいヒーローものなので、どんな事で頑張ろうと考えた時に、CGだったんですよね。...最後のバトルなんか、フルCGだったりするんですよ。クライマックスを自分で撮影しないなんて変な感じがしましたね(笑)」

山崎「CGショーになりますね、最後がね」

舞原「カメラポジションが何とでも出来るんですが。...今の子供達は喜んでるんじゃないでしょうかね」 山崎「ハハハ(大笑)」

舞原「でも、これ見て育たれたら、ちょっと困っちゃうなあって...」

竹内「先程、プレビズは楽に作れると言う事でしたが、テレビのスケジュールでは作れないレベルなんですか?」

山崎「どうなんだろう。本当言うと、プレビズを作成した方が効率が凄く良くなると思うんですけど、色々な考え方もありますし、状況がありますからねえ。でも、プレビズ、作れたら作った方がいいと思いますよ」

舞原「前例がないですからねえ。前例がない事にお金出す事が本当イヤなんですよ、皆さん。でも、やっちゃって、効率が良くなって、スケジュールが納まる事になったら、多分、そっちになると思いますね」

山崎「...プレビズは何もCGだけとは限りませんが、僕はCGが一番簡単だし、誰の手も借りずに出来るんで。だいたい、僕がプレビズを作る頃は、周りの人達はまだ別のプロジェクトをやってる事が多いんですよ。誰も頼りに出来ないんで、デジタルが一番手軽でいいと言う事ですね。いろんなカメラワークも試せるんで。

...アキラクレーンとか、コンピューターの中にも同じクレーンを作ってやって、『こういうカメラワークだったら出来るから、これでやりたい』と言ってますね。フルCGじゃないんで、自由にカメラを動かせる訳ではなく、可能な中から、一番いいカメラワークを探してます」

竹内「...自分はVUEと言うソフトをよく使ってますが、重いソフトのようで、10秒計算するのに2週間以上掛かった事があります」

山崎「VUEはメチャメチャ重いですよ。ファイナルを作るためのソフトなので。僕らの基準になるのは、MAYAってソフトか、3ds Max ってソフトで、どこのプロダクションでも使ってるソフトで、スタンダードソフトだと思うんですが、MAYAだと、僕らは1コマ15分以上(の計算時間)となると、ちょっと悩みますね。スペシャルカットで、『これはしょうがない』と言う時は『よし』としますけど、そうでない場合は15分になるように、いろいろチューニングしますね。見えてない所を削ったりとか、ポリゴン(物体を構成するブロック)数を削ったりとか、ライティングのレベルをもう少し抑えるとか、とにかく15分以内で計算出来るようにしますね。そうでなきゃ、現実的でなくなって来ちゃうんで。

...ある段階から、ちょっと上がるだけで、凄いお金掛かるようになっちゃうんですよ、レンダリングコストが。結構、シビアですよ」

 

                        《お昼タイム

 

※正午、「予約してあるので行きましょう」と、山崎監督は我々を近所の料亭へ。 政治家が使うような凄い所で、我々全員に、うな重を御馳走してくれました。 とても恐縮で、頭が下がるばかりです。 また、山崎監督のスタミナ源を知った感じでした。

 

 

 

unagi.jpg ※山崎さんの監督デビューはテレビドラマ「七瀬ふたたび」(1998年)。 実は、同席していた舞原監督も同じ「七瀬ふたたび」で監督をしていました。 (舞原さんを呼んだ自分は、この繋がりを知りませんでした)。 ウナギを食べながら、当時の様子を語ってくれました。

 

舞原「...監督デビューが『七瀬~』なんですか?」

山崎「そうです。...あの時、一本企画が動いてて、僕、監督やった事なかったんで、監督経験積んでおかないと現場でウロウロするかと思って、『CG全部やるから監督させてくれ』ってお願いしたんです」

舞原「当時、VFXと言う言葉がなかったので、『CGの人が撮る』と、『これはメチャクチャになるぞ』と言われてましたが、上がったモノを見ると、僕らより、ちゃんとドラマしてたので、ビックリしました!」

山崎「(喜)でも、『真っ当過ぎるよ』と言われましたよ。ちゃんとし過ぎちゃってるから、もっと破たんした方がいいと言われましたよ」

舞原「実はそっちを期待したんですよ。僕らにない感性がドーンと出るのかと。そしたら物凄く良くドラマが出来てて、他の監督に『お前らもっと頑張れよ』と、思わず言っちゃった位ですよ...」

 

                      《後半戦》

 ※「白組ふたたび」 

白組に戻って、この歴史的な対談は再開されました。

 

 3DCG映画

竹内「...ジェームズ・キャメロン監督の『アバター』(2009年12月公開予定)を期待してますが、これは3D(立体)映画で、今後、注目を呼びそうな技術ですが、CGの場合、右目と左目の2枚の絵をレンダリング(計算)して作って行く訳ですか?」

山崎「ええ、3Dステレオレンダリングと言うのがソフトにありますよ。右目と左目の位置からレンダリングすればいいだけですから。デジタル(CG)の中の構造というのは、三次元の物体を作って、CGのカメラで撮影してるだけですから。ですから、カメラ2つ用意して、目と同じ幅にして、レンダリングするという事です」

竹内「立体映画用の特別な動画のフォーマットがあるのですか?」

山崎「いや、それってのは結局2枚の絵ですね。で、それの交ぜ合せ方というのは、リアル3Dとか、ドルビーの3Dとか、色んな方式によって、どう交ぜ合せるかは、そのまた先の話しなんですよ。だから、僕らの段階で作らなければいけないのは2枚の絵なんですよ」

竹内「ちなみに、映画の場合はどんなサイズで作られてるんですか?」

山崎「2Kと言うサイズですね。2048×1080ピクセルです。日本ではこれが標準ですね」

CGの相場

竹内「ところで、CGに関わった事ない人がCGを映画で発注する場合、いくら位掛かるんだろうと思うと思いますが、白組さんの場合は、1秒いくらとか、基準となる相場のようなものはあるのでしょうか?」

山崎「ないですね。映画次第ですよ。ケースバイケースで、要求されるクオリティーにもよりますし、監督がCGをよく分からない人だったら何回も何回もテストされるだろうから当然値段も上がって行くだろうし...」

竹内「相談と言う事なんですね。例えば、予算はこれだけだけど、こういうCGは作ってもらえるか?と言う事なんですね」

山崎「そうですね。...それは安い所もあるし、高い所もある(笑)。高い所でも、絡み方では安くなる事もあるし、製作委員会に入れちゃうとか、安くするための手段は色々ある訳ですし...」

人間のCG

竹内「少し前に『ベオウルフ/呪われし勇者』(2007年)と言う、リアルな人間のCGを目指した映画がありました。でも、どうしても違和感があり、人間のCGはまだだなあと思いましたが、今後の課題は人間のCGでしょうか?」

山崎「いやあ、そんなにデジタル人間を作りたいと言う欲求はあまりないですね。

...でも、今一番凄いのはあれじゃないですか、『ベンジャミン・バトン/数奇な人生』(2008年)」

竹内「まだ見てなかったですが、CGとは分からないレベルなんですか?」

山崎「分からないですね。...初めてじゃないですか、デジタルの人間で」

竹内「顔に貼り付けてるんですか?」

山崎「いや、首から上全部作り直しちゃってるんですけど、スタンドインが演技だけやってて、首から上をフルCGのお爺さんブラッド・ピッドに取り換えちゃってるんです。凄いですよ。どこかで違和感を探そうとするんですけど、まず分からないです」

竹内「人間も出来るようになったんですね」

山崎「出来ましたね。出来たけど、それは、出来るプロダクションがあるってだけの話であって、出来る人もいるって事です」

舞原「(CGに)する必要性があるかって事ですよね」

山崎「だから本当にそこに掛かる労力とか色々考えると、まだ今はそこまで必要なプロジェクトってないんじゃないかなあと思いますけどねえ...何かそういう事で夢のように言われる事あるじゃないですか、もう死んじゃった役者さんをそこで復活させる事が出来るとか、本当、そんな事お客さん求めてるの?って不思議なんだけど」

竹内「昔、テレビ番組で、映像技術の進歩により、ブルース・リーとジャッキー・チェンの闘いが見れるようになるかもしれないと言ってたのを思い出しました」

山崎「『出落ち』と呼んでますけど、出て来た瞬間が面白いというのは、あまりロクなもんじゃないですよ。それ以降は、だから何?ってなっちゃうので。

...2時間の作品を引っ張って行く力って絶対にないし、人間のCGが出来るようになって、あんな事も出来る、こんな事も出来ると言われてた項目って、何一つとして、いいモノはなかったですね。だから、人間のCGが出来るようになるって事に関しては、そんなに目的であったりはしないですけどね。

...便利ですけどね、使えれば」

竹内「『死亡の塔』(1980年)と言う映画で、ブルース・リーが死んでしまっていないので、未撮影の部分はブルース・リーのそっくりさんが演じたり、生前のブルース・リーの顔を貼り付けたりしてましたが、今度はCGで出来ると言う事ですね」

山崎「そうですね。あんなケースの時は一番助かるかもしれないですね(笑)。主演が撮影中に死んじゃったけど、物凄いお金も掛かってて、保険会社がこの映画を完成させたいという時に、一番生かされる技術ですね」

一同「(笑)」

山崎「...『ベンジャミン・バトン』の場合、爺さんから子供になって行くという特殊な状況をどうしても表現したかったから使った訳で、あれはまあまあ意味のある使い方なんだけど、映画見るとね、お爺さんから子供になって行くって、だから何なんだ?って感じが凄くしますよ(笑)」

竹内「ストーリーが大切って事ですね」

山崎「やっぱ絶対ストーリーに従属すべきモノだと思うし、もちろん時々『ジュラシックパーク』みたいな新しい技術が紹介される事で映画を引っ張って行く事もあるだろうし、その前の『ターミネーター2』は物語が面白いんですよね。変な物(液体金属殺人マシン)が出て来るんですけど、物語が面白いから映画が面白いのであって、変な物が出て来たから映画が面白い訳ではないんですよね。

...だから常に新しい技術が出て来た時に皆が凄いと思うのは、物語がいいからなんですよね。物語がいいから技術も光る!そう言う感じが物凄くしますね」

 

 

sannin.jpgデジタルはツール

竹内「山崎さんのウィキペディアに『VFXは映画監督としての武器であると語っている』と書いてありました」

山崎「ハハハ、本当に?...ツールですよね。だから例えば今回の『Ballad』に関しても、山城を実写化したいとか、戦で5000人対500人をやりたいとか、現状では不可能なんですよ。予算的に。デジタルがあったから出来たんです。目的のために、必要だったら、デジタルを使う事は非常に正しい事だと思うんですけど、デジタルのために映画を作るというのは間違いだと思う。だから、主従の関係をハッキリさせておかないと。犬と同じで、すぐ勘違いするから。自分の方が主人だと思って。そういう傾向のあるものだから、『お前は手下なんだ!』と言う事を分からせておかないと、勘違いする可能性があります。

...宣伝の方針として、声高に言わなければいけない時もあるんですけど、基本的にデジタルなんてただのツールの一つで、その事が映画を良くも悪くもしてないんだよって事は、ちゃんと頭の芯で理解しておかないといけないなと思ってます」

竹内「今後、CGはどのように発展すると思いますか?」

山崎「物凄い、くだらないツールになって行くと思いますよ。誰でも使えると言うか、普通のモノに。...今、映画で音が出るって事に驚く人って、一人もいないじゃないですか。サウンドトラックに音を焼き付けられるようになってから、全ての映画で当たり前になっちゃってるから。だからデジタルもそれと同じように、デジタル使ってるという事が、何の優位性もなくなって、単なるツールの一つに。ま、上手い下手はありますけど...」

竹内「仕事がなくなっちゃいますかね?」

山崎「?」

竹内「自分は若い頃、カメラマンもたまにやってて、イベントやライブ、結婚式なんかも収録した事もありますが、家庭用のカメラが発達し、今は誰もが動画の撮影が出来るようになって、記録するだけなら、わざわざカメラマンを呼ばなくても社員や身内が撮ってしまうケースがあり、プロの仕事が減った現状があります。CGも誰でもやっちゃうようになって、仕事が減るのではと思いまして」

山崎「うん、誰でもやっちゃうけど...、画家は誰でも絵の具を買える事におびえる必要はない訳じゃないですか。同じだと思いますよ。デジタルのプロフェッショナルも技術が陳腐化して誰でも使える事に関しておびえる必要は一切ないと思います。それはようやくスタートラインに立ってるだけの話であって、プロフェッショナルは自分の技術をどんどん良くして行けばいい訳です。仕事がなくなる事はないと思いますけどね。

絵の具があれば誰でも絵を描ける訳じゃないじゃないですか。ツールと出来あがったモノが距離が近いモノほど危ないんですよ。例えば写真というのは、ツールと出来あがったモノの距離が非常に近いですよね。写真の良し悪しというのは、人は分かりずらいじゃないですか。上手い写真と上手くない写真って、そんなに分からないじゃないですか。もちろん、いい写真というのはあるし、見る人が見れば物凄くいい写真ってあるんだろうけど、ある程度の写真は皆撮れちゃうじゃないですか。でも、絵の具と絵の距離は遠いじゃないですか。だから、絵の具が普及したからと言って、絵描きは皆ビビらない訳ですよ。デジタルはその中間くらいにありますよね。絵ほど特殊な技術は必要ないけど、写真ほど誰でもやれる訳じゃない。人を選ぶという意味においては、そんなにおびえなくてもいい。

...ただ、普通の人もやれそうな事をやってた人は、もちろん仕事なくなると思いますよ。簡単な事をやってた復讐を受ける訳ですよ」

CGクリエイターの卵達へ

竹内「これから、CGを勉強する人達に何かアドバイスを!」

山崎「...先生次第ですよね。どうやって良い先生を見つけるかってのは難しい事なんですけど。

...普通の事は普通に出来るんで、そこから先行くって事が大変ですよね。だから一つの手段として、実写の背景にモノ(CG)を実写のように馴染ませる事なんですけど、それをやろうと努力する事で学べる事って凄くあるんですよ。光の具合だとか、質感とか、挙動のクセであるとか、実写みたいなCGを作るという事ですね。だから、実写が先生なんです。それに向かって、どれだけナチュラルに合成して行くという事で色んな事を勉強するんです。だから、僕もハイクオリティなCGを作る時は実写の上に乗せるようにしてます。何故かと言うと、基準点が出来るから。実写の中に入って行って、変じゃなければOKなんです。フルCGを作るとしても、実写で学んだ事って凄く生かせるんです」

竹内「良いCGクリエイターと悪いCGクリエイターの違いは何ですか?」

山崎「今持ってる技術にこだわって『出来ない』と言う人はあまり良くないですね。挑戦しようと思わない人です」

竹内「CGクリエイターって飽和状態なんですか?」

山崎「優秀なCGクリエイターはいくらでも欲しいですよ。CGクリエイターだけだったら、いくらでもいますけど、優秀なCGクリエイターってそんなにいない。もちろん、底辺が広くなって来たら、ピラミッドは高くなって行くから(現状は)いいんですけど、優秀な人間は常に足りないです」

白組という会社

竹内「白組さんの特徴はどんな点でしょうか?他のCGの会社と比べて」

山崎「ミニチュアもあるし、実写撮るチームもあるし、何でも出来るんで。CGだけの会社だと、CGの中だけで何とかしようとする訳なんですよ。それって、リッチな絵が出来ないと言うか、どうしても大変な事になっちゃうんで。そう言う意味では、色んな技法が取捨選択出来ると言う事が強みだと思いますけどね」

最後の御言葉

竹内「では、そろそろまとめましょうか!」

舞原「...よく仕事をする撮影所の裏に高速道路の入口が出来たんですよ。どこにロケ行くにも物凄く便が良くなって皆大喜びしたんですけど、それまで泊まりだった所が日帰りになっちゃったんですよ(苦笑)。便利になるって、実は大変な事だなあと気づいたんです。それと同じで、CGがどんどん便利になると、逆にアナログ的なセンスが試されるなって思いましたね」

山崎「あと、人に任せられた事が自分でやらなくてはいけなくなったりとか、決して便利イコール楽という事にはならないですね。便利というものが連れて来ちゃう大変さというものもありますね。誰でも使えるツールになる事で、仕事が増える可能性もある訳で、便利なモノって怪しまなければいけないですね」

石井「CGというモノが簡単に思われちゃって、特撮全体がCGで簡単に出来るという解釈をプロデューサーにされがちで、特撮のチームを組まない作品が増えて来たのが現状なんですよ。更にそれが進んで行って(実写の)素材を撮るという重要さを忘れたら絶対にいけないと思うんですよ。飽くまでツールの一つであって、色んなモノが複合されて、CGが引き立って行くという気がするんですけど...」

山崎「CGの来世は、ろくでもない事になって行くと思いますね(笑)。成熟して行けば、してくほど、それは普通の事になって行くんで。今はまだ特殊なモノに思われてるけど、カラーになったとか、トーキーになったとかと同じように、ごく当たり前のモノになってくはずなんですよ。でも、それはその技術にとっては成熟という事だから、悲しい訳でも何でもないし、もっともっと普通の事になって行って欲しいと思いますね」

※時間となり、我々訪問団一行は、山崎貴監督の作業場を見せて頂き、城(白組)を後にしました。 ↑ 

 

 

 

yamazakidesk.jpg

 

 

proj.jpg            愛用のプロジェクター(大画面での確認用?)

 

編集後記  

いくつかの不思議な縁で集まった男達。

「非常に明るく温和な性格」だと、ネットで紹介されてた山崎貴監督ですが、実際、とても気さくで器が大きく、頭も切れる素晴らしい人物でした。

結論として、CGを扱う映画を監督する人はCGの知識があればあるほど有利です。山崎監督はVFXスーパーバイザーも出来る事が特徴ですが、そこまでは無理としても、監督がCGの知識が少なかったり、経験が浅いと、何度もやり直してコストや時間が増えてく恐れもあります。また、プレビズの重要性を強く感じました。プレビズは何もCGだけではありませんが、CGだと一人でも作れますし、分かりやすいでしょう。監督の道具として、プレビズのCGくらい楽に作れるようになりたいと思いました。また、プレビズはCGを使わない映画でも(大掛かりな撮影などで)使えます。     (竹内英孝)

 

スチール撮影/竹内英孝   後藤勝昭