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特集

日本映画監督協会 会員名鑑

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関西発信の映画

2009年03月08日

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2008年11月8日

大阪商工会議所・会議室に於いて

座談会参加者

大森一樹
1952年生まれ。京都府立医科大学卒。映画「オレンジロード急行」「悲しき天使」など。

白羽弥仁
1964年生まれ。日本大学芸術学部卒。映画「シーズレイン」「能登の花ヨメ」など。

松井良彦
1956年生まれ。映画「錆びた缶空」「どこに行くの?」など。

井上泰治
1954年生まれ。立命館大学法学部卒。TV「水戸黄門」映画「ヒョンジェ」など。

司会:今日のテーマは、関西発信の映画と言う事です。どうしても東京中心の映画の流れがあるわけですけど、その中で関西発信の映画がもっと出てきてもいいんじゃないか言う事で,皆さんにご意見をお伺いしたいと思います。


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大森: ううん、難しいですね。作るとなるとやっぱり東京ですね。関西と言っても、東京に対しては一地方じゃないですか。関西発と言うのがあるとすれば、まあ、撮影所のある京都でしょう。映画というと東京と京都ってのがありますよね。テレビは、東京のキー局に対して大阪のテレビ局ってのはありますよね、そう言う東京・大阪ってのはありますが、映画となると大阪が発信しなければならない謂れはないな。
                       
司会: 関西に特にこだわる必要はないという事ですか?
 
大森: 関西発って、資本とロケ場所が関西であれば、それを関西発と規定をするのであれば可能性はあると思うんですよ、スタッフ・仕上げも東京で、シーンによっては撮影も東京でやらざるを得ない。資本と場所と言う事だけであれば可能性はあると思うんですよ。

司会: でも 関西でもスタッフ集め、仕上げということは可能ですよね。

大森: 作る時に京都ないしは大阪のスタッフを使うのを、果たして、作る側の上の方がどう言うか。具体的にいうとテレビ局だって映画を作るじゃないですか。在阪のテレビ局の人の話で、東京キー局からお前とこも付き合えと言われて付き合いで作ると「私は貝になりたい」とか大作も。だけど本当は自分達でやりたいんだって事を強く言ってたね。そこをどう掘り起こして、その人達が本当に関西発でやりたいのであれば可能でしょうね。

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松井: 僕は、東京・関西というような枠は、もう要らないと思う。映画を創りたい人が創ればいい。それでいいと思いますね。つまりそれは、大森さんが教鞭をとられている大阪芸大。あそこからも優秀な監督が出てきましたよ。でも彼らは学生の時には関西で映画を創っても、いざ出資者を見つけようとなると、ほとんどの人が東京へ行ってしまう。これはもう仕方ないことだと思います。中には関西で頑張っている人がいますがね。そう、大ベテランの高林陽一さん。高林さんは自主ビデオというかたちで映画を撮ってらっしゃるんです。ビデオ作品であれば割と安価な製作費で出来るという事もあるので、あとはキネコにしてフィルムにすればいいわけで。まあ多少のお金が集まれば創れるということです。

司会: 松井さんご自身はどうされていますか?

松井: 僕自身は、これまで独立プロでしたので自分のお金というか借金で創りました。運良く回収出来たんで、今も映画界に住まわせて貰ってますけど。でも、この間撮った映画は東京のビデオ会社からお金を出して貰った。本来なら東京でお金を集める時間がもったいないし、関西でお金が集まれば一番いいんですけどね。関西にも優良企業がいくつも有るんですが、映画は儲からないってのが出回ってますからね。なんとも、です。

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大森: 何が無いって考えたらプロデューサーがいないんですよね、関西には。

松井: そう言うことなのでしょうね。

大森: 辛うじて製作プロダクションあるといっても、それでも東京からの仕事が多いでしょ。だから結局、関西にはプロデューサーがいないんだな。私も神戸に呼ばれて、やりたい、お金もあるって言うんだけど、なんか素人さんで映画のプロデューサーじゃないんですよね。だからいつまで経ってもダメだと思う。

松井: 大阪芸大でプロデューサーを育てるコースはないんですか?

大森: 育ってはいるんですけど、出たらやっぱり東京へ。人材は育ってますよ。人材がいないからって事じゃないと思う。

司会: 監督協会は、東京以外の地方では関西が多い。今、関西在住の協会員が50名以上いるんです。それだけ監督がいるんだけど、関西発ってのが、それほど厳しいって事なんですかね?

大森: 監督なんていくらいたってしょうがない。具体的に作品作るとなると、誰か廻らんといけないわけでしょ。

司会: 白羽さんは主に東京で撮られてるのですか?

白羽: 今回の作品は混成部隊です。資本は東京と石川と大阪も入ってるんです。プロデューサーは一名ですけど大阪から入ってるんですが、ロケーションは石川で、仕上げは日活なんですね。本当にそういう意味では混成部隊で東京ともいえないし、自分の力量からいうと東京だから映画が撮れるという事でもないし、今回は北陸という所から話があったんで、だから資本っていう事で言うと何処でもいいんですよね。関西でも資本があれば何とかなる。資本が何ともならんから、関西の監督も自ら動いてるんだけど成立しないというのは、そこなんですよね。

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司会: 大森さんが仰ったように関西にはプロデューサー不在ということでしょうか?

松井: 東京のプロデューサーでも関西に愛着がある人がいて、その企画に合わせて関西で撮るということはありますよね。

大森: 今日のテーマにケチつける訳やないけど、関西発の映画って発想自体を変えないとね。そういう事やないと思うわ。根本的に映画産業の構造を変えないと、いつまで経っても関西発のああだこうだとなってしまう。

司会: でも構造を変えるっていうのは?

大森: 例えば、東京国際映画祭を京都でやって、日本の国際映画祭は京都でする。まあ神戸でもいいんやけど、あの国際映画祭は東京から外したほうがいいんじゃないかな。この前、韓国へ行って思ったんやけど、あの釜山映画祭ですね。映画作りの中心はソウルにある。だけど映画祭はプサンに持って来て、韓国映画界がプサンに集まる。そうすると何かがあるわけですよ、長い目で見たら。だから東京へ持って行った事が変わらない20年であったんじゃないかな。京都に持って行った方が海外の人達も喜ぶし、映画祭としても盛り上がるん違うかな。持ってきてから10年位かかると思うけど、その辺から始めないと、ちょっとやそっとでは変わらない。

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司会: 大阪の中にはそういう物はないんですかね?

大森: チャンスとしてはUSJ作った時に撮影所を作りたかったという話があるんだな。映画を作るところを見せながらテーマパークになってるという。それが現実にはテレビ局が入ってるだけで、一回、それで逃してると思う。だから、どれだけ本気で関西が映画の中心にしなければいけないかと言うこと。

司会: 映像系の大学は関西にいっぱいあるのに、その割に関西発の映画はありませんね。

大森: 撮影所は京都にある。大学は大阪にいくつもある。しかし、悲観的な見方かもしれんけど、あんまり変わらないんじゃないかな。だから国際映画祭を持って来ようかという最後の手ですね。

松井: それもありですね。東京映画祭を京都に持って来たら、外国から来るゲストにも京都を楽しんでもらえるし。何年も前に一度、しましたよね。ゲストに好評だったと聞いてますが。

081108_7.jpgのサムネール画像 大森: そう 東京に来てもわざわざ新幹線で京都に来て泊ってるからね。関西で映画祭をやる。そうすると 地元の企業も映画に興味を持つ。そこから始めないと。

松井: お金持ってる人に、映画に興味を持たせない限りは、どんなに美味しい言葉を言っても動かないですよ。実際に体感・経験をしてもらうのが一番だと思いますね。

大森: プサンなんか凄いですよ。町を挙げてやってますから。

司会: 白羽さんは、関西での映画作りについてはどう思われていますか?

白羽: 私の一本目は、原作が神戸を舞台にしていました。それでオール神戸ロケだったのですが、題材的にどうしても神戸、京都、大阪で撮らなければならないような作品。大きな事件性があって、テーマ性があってそういう強烈なものがあってモチベーションを高めていって、じゃ人間も資本も関西で無ければダメなんだって事もありますよね。それが無い限り、何処でもいいんじゃないかって事になりかねないですね。ネタの問題もありますよね。

司会: この前京都で座談会やった時は、時代劇を復興させようと言う事で盛り上がったんですよ。いったん時代劇の灯が消えてしまったらもう復興出来ないから、むしろ時代劇で世界に打って出ようじゃないかって位の話になったんです。

大森: そりゃやっぱり有るからね、コアが。でも、時代劇を作ろうというのと関西発の映画を作ろうというのは全然違うんじゃないかな。時代劇は具体的やけど、関西発の映画というのは曖昧な抽象論じゃないかという気がする。この前、田辺弁慶映画祭って、和歌山へ特別審査員で行ったんですけどね。日本映画4本、韓国1本、中国1本で、出てた人みんな来てたし、中国の監督も来てた、ああゆう事を地道にやって行けば。

司会: 関西には、神戸、京都、大阪という大都市がかたまっている。映像関係の大学もあって、映画に携っている我々にとっては、そこで映画が発信されてないというのが不思議ですよね。

大森: だから、それを考えていくと、キーパーソンはプロデューサーやと思うな。

司会: 京都に撮影所があって、そこをベースに発展する可能性もありますよね。

白羽: もう少し時間が掛るかもしれない、大学行って映画を教えるというのはここ数年の事なので、10年位のスパンで考えれば、ようやくそこで結果が出てくるかもしれませんね。

大森: でも、学生たちは卒業しても大阪にいない。みんな東京に行って。だって、こちらで映画を作らへんもんね。

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白羽: じゃ、大学出た後の問題もあるわけですよね、そうすると。

司会: 大阪には製作会社とかいろいろあると聞いてますが?

大森: どうなんですかね。これだって就職難ですよ。

白羽: 会社はあるんですが、仕事が無い。大阪の会社の仕事はこの20年で激減ですよ。

松井: それは大阪の企業自体に元気がないと言う事ですかね?

大森: たとえばホームレス中学生、あれなんか関西で企画して、関西でロケして、関西発になり得る素材やと思うのにな。だけど原作権東京の方で取って、東京の監督で撮って、公開されている。ああいう物が、大阪で企画されて大阪でお金集めて、で、配給は東京でお願いしますって。何でならんのやろう。

白羽: あれもそうですね、「天国はまだ遠く」京都の宮津で撮影していた。あれも京都の中学校の先生ですよね、原作は。

大森: そう言う流れになって来てるのかな。それに、関西の監督を使ったからって、それが別に関西発の映画になるわけでは無いしね。

白羽: 昔、大森さんが吉川晃司の映画を作った時、例えば神戸でロケしたいと言うのは、大森さんの希望でなんですよね?

大森: うん まあそうですけど。

白羽: 結局そう言う事なんですよね,監督が意思を持って大阪でロケしたい,神戸でロケしたいという事で進めていくしかない。

大森: 関西に映画会社を作らんといかんのかね。

松井: そりゃ難しい。

白羽: 宝塚出身のプロデューサーも破産したじゃないですか。

大森: だから野球は日本ハムが北海道へ持っていって、楽天が東北に持って行ったように、大阪が、今度は映画の会社を誘致するみたいな発想をしなくてはいけないのかな。

松井: 監督協会とプロデューサー協会が有りますよね、あそこでそう言う話し合いを持つってのは可能なんですかね?

大森: アカンのと違う。やっぱりクライアントですよ。それか、行政でしょうね。

松井: 行政もどこまで信用していいのか分からん状態ですからね。何本か映画が出来るかも知れないって事でしか、進まない気がしますね。

大森: 継続でないといかん訳やね、継続以外はみな地方ロケの映画や。

司会: まだ、何とかなりそうなのは在阪のテレビ局ですかね?

大森: ほんとそう。しっかりして欲しいと思うんやけど。

白羽: 独自のコンテンツを作らなければいけない危機感は凄くあるみたいですよ。行政で言えば、僕の経験からいうと、石川県は行政は物凄く熱心でしたよ。映画があると町が活性化すると言うトップの意識が有る事が大事ですよ。石川は驚くべき指導力が有りましたね。

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松井: それは継続的になっていきそうですか?

白羽: う~ん、又お願いしますとは言われているんですけどね。

松井: 群馬県もやってましたよね?

白羽: でも、それも一本限りで。

松井: 京都もそうで、一つ二つは続いても、それ以後知事や市長が変わると方向転換をして創らなくなってしまうって聞いてますからね。

白羽: 伊丹市がやっていましたね。補助金で映画祭やって500万位で映画作ってたじゃないですか。あれも無くなりましたね。結構続いてたんですけどね。伊丹映画祭。だから、なんとか捻り出る蛇口と行政の強い意思と。大阪はどう考えても借金まみれで。

松井: 文化面を最初に削っていくと言われてますからね。

大森: やっぱり、関西にしっかりとしたプロデューサーがいないと駄目なんだね。

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司会: 関西発信の映画、今はなかなか難しいという現状なのでしょうが、これからいろいろと模索していきたいと思います。ということで、本日はどうもありがとうございました。

    今回、座談会の会場としてお借りしたのは、大阪商工会議所。大阪ロケーション・サービス協議会のご協力を得てのことでした。  「関西発信の映画」という今回のテーマでしたが、関西という地域性に果たしてどんな意味があるのか、もう一度考え直すこととなりました。司会の私が京都の撮影所育ち。京都以外の関西映画制作の現状をあまり把握していなかったことが、皆さんのお話を引き出し切れなかったと痛く反省しております。  座談会は、コテコテの関西弁で話されているのですが、関西弁そのままでは分かり難いだろうと修正をしました。しかし、ホンマは関西弁の方がオモロイんですけどね。                                  井上泰治