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特集

日本映画監督協会 会員名鑑

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時代劇の未来を語る

2009年01月22日

 座談会『時代劇の未来を語る』
 

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  2008年11月2日 
  
  京都市右京区・東映太秦映像・会議室に於いて


参加者

司会 井上泰治
1954年生まれ。監督協会員。「水戸黄門」などのTV作品。「ヒョンジェ」などの劇場映画作品などが ある。

 

原田徹
1955年生まれ。監督協会員。「御家人斬九郎」などのTV作品。「新・キタの帝王」などのVシネマ作品を監督してきた。

 

林海象
1957年生まれ。監督協会員。「夢見るように眠りたい」などの監督作品だけでなく、企画・プロデュースも多く手掛けている。

 

上野隆三(殺陣師・東映剣会)

1937年生まれ。殺陣師(東映剣会)。「仁義なき戦い」シリーズなどの劇場映画を始め、「水戸黄門」などのテレビ作品の殺陣・擬闘を40年以上担当。

 

鳥居清一(メーク・東和美粧)
メーク担当者。東和美粧に所属し、50年以上、東映京都撮影所で製作された映画、テレビの数多くの作品に携わってきた。

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司会  今日は、京都の時代劇について、皆さんにいろいろとご意見を伺いたいと思っております。まず、時代劇の継承と言う事ですが、一旦スタッフと言う人材が途絶えてしまいすと、それを守っていこう、又一から作ると言う事はなかなか大変な事で、その為にも京都の時代劇を守りたいし、その動きはいろんな方面であるんですけど、具体的にはなかなかテレビ時代劇の本数が増えなかったり、劇場映画でも時代劇が出てきたとは言うものの、さほど時代劇が世の中に浸透しているかと言うとそれほどでもないし、でも時代劇をこれから発展させていくために、我々特に京都の撮影所で培ってきた時代劇をどう継承していったらいいか、ご意見考えを伺っていきたいと思います。

上野  そうね、テレビの時代劇に関して一番気になるのは、放映時間帯。この時間帯が8時から7時に移行する傾向があるでしょう。この早い時間帯では、時代劇を見る年代の方には負担があるような気がする落着いて観れない、家族の食事の用意をして、さあ、ゆっくり観ようと言うのがせいぜい8時だよね。

司会  テレビの場合は即時性が一番強い。スポーツとかニュースとか...そして、今バラエィ番組が多くなってドラマが減ってきてるんですね。
 
上野  安く作れるとの一言です。

司会  ドラマの中でも時代劇は予算がかかりますからね。

鳥井  時代劇には金がかかるけど、若い人に継続して欲しいですよ。

司会  時代劇がずっと京都で、撮影所と言うシステムの中で作られてきましたね。海象さんは撮影所ではないインディーズからご出発されて、今、撮影所どう思いますか。

   僕が知ってる撮影所ってのは、夢の中なんですよ。やっぱり面白い。昔の時代劇は映画でもやってたしテレビでもやってましたよね。映画の短いのがテレビ時代劇でやってて、その頃は良く観ててめちゃめちゃ面白かった。僕は東映の時代劇から育ったんですよ。僕は一回だけ十何年も前に「ナンチャッテ時代劇」を撮ったんですけど、これは東映の流れなんですよ。もう何でも有りだよね。ものすごく面白かったですよ。その自由さって言うのがね、赤影もそうでしたし、ナンだこりゃって言うイマジネーションがすごいわけです。縛られて無いこと、とにかく面白かったですね。時代劇イコール暗いと言うのを払拭したのは東映だと思うんですよ。大映とかになると本格的じゃないですか、あれはあれでいいんですよ。大人になって観た時ものすごくカッコイイ。でも東映のってずいぶん明るくて、キンキラキンで、それが子供心にドキドキしたんですよ、時代劇がちょっと低迷してるのはフィルムの時代劇が無い。僕が観てて思うのはビデオに切替わったじゃないですか。ビデオで時代劇観たらナンかやってられないですね。
時代劇は時代を撮るから、ビデオでは現代性がすごく出ちゃうじゃないですか。フィルムでそれを撮ったら落着きがいいですね。NHKの大河ドラマは、昔は嫌いでね。ビデオで撮ったやつ、ナンか嫌な感じするんですね。今は慣れたけど、他の東映とか松竹で撮ったやつはフィルムじゃないですか。刀もキラッとライト当ててシャキッとシャープですよね。その辺りがいいなと思うんですよ。今もフィルムで撮ってるのはあるんですかね? 
   
上野  とうとう終わりましたね。

司会  テレビ時代劇はどれもビデオ作品になってしまいました。

   ビデオ撮りと言うのは、何もかも見えちゃうんです。カツラのスジとかすごくハッキリ映ってるんです。

上野  ビデオ撮りでは、遠近感で苦労しましたよ。アクションて言うのは、かかって行くまでに何歩か歩数がいるんですよ。それなのに囲む為に近づいて来るわけですよ。離れろと言うと今度は遅れる。これには苦労したね。十人が全部左右に並んでも、平行に並んだように見える。それをちゃんと取り囲んでいるように見せる為に円形にしたり、いろいろ工夫するけど、やはり遅れるンです。

 

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司会  ビデオの持つシャープさ、リアル感は時代劇は特に辛いものがありますね。時代劇というのは基本全部作り物なんですよね、フィクション。カツラそして美術もそうなんですよね。それがビデオでは全部露出しまう。

鳥井  NHKは先行してやってるから結構良いんじゃないですか。

司会  たしかに今の大河ドラマなんか上手く撮ってますね。

上野  でも、やっぱりドラマの面白みって言うのは、人間心理を追っかける。ビデオだから、いろんな疑問が出てくるというより、今の時代劇は話が面白くないのかもしれない。

鳥井  「相棒」なんか面白いですね、現代劇やけどね。ああ言う時代劇は出来ないものですかね。

   若い人は書くんですかね、脚本を。

司会  今も助監督さんたちにその話をするんです。書け、書けって。

上野  それは大事なことだね、但し時代劇を若い人に書いてもらうのに、一番気をつけてもらいたいのは、嘘を書いたらあかんね。思いつきで簡単に歴史を覆すようなね、そう言うことをちゃんとやらないと。

鳥井  歴史を覆すような物では駄目ですね。

上野  昔、任侠映画の台本読んですごく気に入ってね。プロデューサーこれやらせてほしいと言った事あるよ。それが今は無いね。これやらしてって本が、映画の頃はあったんだよね。本読んで泣いたよ。山下耕作さんが撮った任侠もので「総長賭博」ってあるんですよ。台本読んでオレ泣いたもん。

鳥井  「次郎長三国志」あれ面白かったっですよ。羽二重が出てなかったでんすよ、網も全然出てないの。そう言うとこを見ると、僕らは井の中の蛙的な仕事してるのかなと思いますね。技術的なとこは勉強しなアカンなと思う。

 

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上野  それと時代劇でもうひとつ大事なのは言葉、その時代の言葉ってあるでしょ。今の若い人は時代劇の言葉を知らない。ある作品、あんな言葉遣い絶対しないような言葉、現代調でやってる。それをOKするのはオレは許せないな。格調が無くなっている、時代劇しかりヤクザ物でもそうだと思うよ。

   最近、お歯黒は見ないですよね。

上野  ああ 見なくなったね。見事に無くなったね。

原田  あれは浮世絵の中にお歯黒の絵が殆どないと言う事があって、皆知ってるんだけど、あえて映画には使わない。一部にはそれを再現する監督もいたんだけど、今はなくなりました。

上野  たまには観たいね、本格的なものを。

   それと眉毛もそうですよね。

原田  監督によって採用する人もいますよ。眉毛を剃らせてね。

 

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   話を戻しますけど、あの頃の映画は今見ても面白い。本が面白い。痛快だし,今でも通用する筈ですよ。
          
司会  映画全盛の時代、エキストラ一人一人見てても面白いじゃないですか,みんなサマになってるんですよね。

原田  それはエキストラでもみな大部屋の俳優さんがやってた。学生アルバイトじゃなしにね。

上野  でも、東映の場合は学生が多かったね。五百・六百出す場合はね。僕らも衣装着せたり、わらじを履かせたり、スタッフも役者もみんな協力してた。

司会  あの時代は、大部屋の俳優さんだけでなく、スターさん達も京都在住でしたね。

上野  監督もほとんど京都だしね。

司会  それが今はもう映画、テレビだけに関わらず、全てが一極集中で東京になってきてますね。でも、それでも今も京都で撮影所が維持出来ているのは、ナンと言っても時代劇があるからですね。

上野  東京で時代劇のテレビがすごく流行った頃、本数が無茶無茶多かったでしょ。東京で乱作し過ぎた。「ちょと匕首持ってきて」と言っても匕首が分からない。そんな所で時代劇撮ってるんだから、匕首取りに行くのに40分かかる。分からないんだから。

   撮影所と言うのは人材が要るわけで、人がいないと映画が作れないじゃないですか。今が最後のチャンスなんですよ。皆さん現役でバリバリしてらして、物も有ってね。大雑把に言うとただみたいなもんで、全てあって、ここで何か面白い本を作って、映画なのか,テレビなのか、もう一発今しか作れない何かやってね、20年30年後にはもっとチャランポランになって、作れないですかね。

 

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原田  大映の場合、現場がね作りで...たとえば、助監督が「わらじの紐が切れました」と小道具へ持っていくと「ちょっと待ってくれ」といって藁を口に銜えて編むとこから始る。芋の煮ころがしが欲しいと言うので、それを持って行って飾りますね。すると「もうチョト右、もっと右」おかしいなと思って「映ってますか?」と聞くと「その匂いがええねん」そんな現場でしょ、それも分かるんやけど。そうやってテレビでも作ってたんですわ、だから僕らはやってて面白かったし、怒られて楽しかったんだけど、どんどん時間が無くなり、お金が無くなり結局苦しくなっていく訳です。そう言うテレビの作り方が、そう言う意味では教えられたけれども残せ無かった。

   昔の立ち回りは、服が斬れてないじゃないですか、途中からそれはそんな風に観るもんだと思うようになる。それも無茶苦茶楽しいし、変なリアリズムがない分、立ちまわりが早い。

原田  刀をキラット抜くのも昔は全部ライト当ててました。今は簡単やからCGでやってるけど、あれ手作りでやってたらもっといい。

上野  テレビを作り始めた当時と今は時間のかけ方が違う。昔は映画並にしてましたよ。

鳥井  これからどうなるんでしょうね、時代劇は?

上野  時代劇の良さは夢が作れる、現代劇ではそんなバカなと言われることでも、時代劇ではそうではない。時代劇のベースは全部じゃないけど、ある程度落語じゃないですか。落語のネタでいくつかやって、その中でカッコイイ主人公を作ってみてね。面白いんじゃないかな。

   うちの学生でゲームばっかりやってる子がいて、次郎長が何かもしらない。その時代劇も殆ど観ない子に「次郎長三国志」を観せたら最後まで観たんですよ。面白かったって言うんです。その子のキーワードは、古臭くないと言うんです。展開も早いし。この前、ある俳優さんと話したんですが、これから娯楽映画の復活は悪役をどれだけ作れるかって。今いないじゃないですか、悪役が物凄く立ったら、これ斬ってもいい殺陣が成立する訳なんですよ。中途半端な悪役だったら斬れない。昔は悪かったですよ。悪役はみんな。

原田  僕、悩んでいるのは、現実的な事で言うと、悪そうに見えて良い人がいたり、良い人に見えて凄い悪い奴がいる世の中で、昔のように勧善懲悪で作っててそれでいいのか凄く悩んでいる。相当悪い奴が出てこないと、これから作るものは観てくれないんじゃないかとか、不安になる。

 

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司会  現代劇で完全単純な悪を描くと、客の方が引いてしまいますが、時代劇はテーマ性を追っかけるので、悪は悪と言うような勧善懲悪を作れるのが時代劇かもしれない。

原田  僕は、果たしてそれでいいのかなってのはあります。

司会  前回撮った作品、話の結末が大物政治家同士の対決になって、つまり永田町みたいな政争で終って、果たして悪人が罰を受けたのか、ハッキリしなかった。ところが時代劇を観る人にとっては、溜飲が下げたいって思いで観てる訳だから、結局、ハッキリ結末がつくようにしたんです。もちろん、作品によって違う話ですけどもね。

上野  テレビ時代劇は観終わってスッキリさせないと、蟠りを持たせたら、お客さんは次観てくれない。

鳥井  いい時代劇を作るために、若い人の脚本全部見て、いい物は採用していってはどうですかね?

司会  助監督さん達には本を書いてほしいとアピールしていますが。

上野  しかし、助監督さん育ってないな。昔は映画が一番の娯楽やったでしょ。だから映画にあこがれた。今の若い者にはいろんな物があるからかな。

原田  監督にはなりたいけど助監督にはなりたくないという学生が多いですね。

鳥井  助監督も監督やがな。

原田  僕らはそうやったけど、でも今はすぐ監督になりたい。

   私は、まずバカを作ろうと思います。腰の軽い奴、行くで~言うとすぐ立つ奴。次は、とにかく映画を見せる、映画を観ないと不安なぐらいまで。そういう子を育てたい、そういう子が育ってくると現場に出ても大丈夫だと思うんですよ。まず観とかないと話にもならない。

司会  私は監督協会に入ってつくづく思うのは、みんな映画が好きなんや。それを確認出来た事ですよ。今風に言うと映画オタクですね。

上野  それで無かったら、安い金で長く辛抱しませんよ。

司会  そろそろこの座談会も終りにしたいと思いますが。

上野  小人数でも集まって、時代劇を良くしようとするこれが大事なんだ。そう言う集まりが今かけている。監督協会は特にこういう話し合いの場を持つべきだと思うな。

   僕も最近、京都の撮影所の方たちとお付き合いさせて貰ってるんですが、同じ話でも時代劇にしたらどうかなという思考になってるんですよ。やってみたいですね。素晴らしいスタッフの方もいらっしゃるしね。

司会  今、時代劇だけでなく、邦画全体でも原作物となってきている。オリジナルの時代劇がなかなか出てこない。
         
上野  でも時代劇は原作物より、オリジナルでね。寄ってたかって作ったヤツが面白いんだよね。お客さんを喜ばす作品をね。
         
鳥井  戦国ものは暗いですね。

上野  暗いし、精神的にしんどい。

司会  基本、生きるか殺すかという世界ですからね。
 
上野  僕は個人的には幕末物が好きなんだよ。明治維新までのネ。

鳥井  僕は単純で分かりやすい物が好きですね。戦国ものは兜を被っているから誰か分からない。分かり易い映画で、明るくて、観たら体感できる。そういう映画を追いかけて欲しい。

 

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   時代劇は、現代劇には絶対出ないようなキャラクターが出るじゃないですか。丹下左膳とか座頭市とか、シビレるわけです。一観客としてこれぞ時代劇というのを観たいですね。

司会  と言う事で、終わりたいと思います。皆さん、有り難うございました。

 

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    編集後記  協会員でない殺陣師の上野隆三氏、メークの鳥居清三氏を招いての時代劇を語る座談会でしたが、お二人が口を揃えて楽しかったと言って下さったことが、嬉しくもあり、印象的でした。文化を継承していくという視点からも語り継ぐ機会をこれからも持ち続けたいと強く思ったところです。 井上泰治