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日本映画監督協会 会員名鑑

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2002年度日本映画監督協会新人賞!

2003年04月14日

   2002年度日本映画監督協会新人賞

 

       金守珍監督 「夜を賭けて」

 

 

「関西に住んでいる在日コリアの友人が「あの世界だ。本当にリアルな世界だ。」と激賞していたのを聞き「夜を賭けて」を観にいった。「エネルギーの奔流にまつわる作用、反作用」とでも言うような不思議な感覚にとらわれた。そんな記憶が生々しいなか、昨年の新人賞の受賞者が今年の受賞者にインタビューするという趣旨のもと、インタビューをさせてもらうことになった。

あのテント芝居で有名な「新宿梁山泊」の金守珍監督へのインタビュー。「夜を賭けて」の登場人物のエネルギッシュさもさることながら長屋のオープンセットを劇団員が自分たちで立てた等スタッフたちの熱い想いが伝わってきた作品。

怖い人ではないかという心配もありながらも、演劇のノウハウと映画が合体したATG映画を髣髴とさせる映画のたたずまいがこちらの好奇心を刺激しまくり、こわおもしろい何とも言いようのない期待を持ってのインタビューとなりました。

事務所にお伺いすると、金監督は笑顔で迎えてくれました。その笑顔にまずはほっと一息。新人賞受賞を素直に喜んでいる様子に、こちらの緊張も少し解け、早速インタビューを始める。私の映画「ペイン」は配給を全く考えずに自主制作で作った作品だったが、「夜を賭けて」もやはり配給のことを考えずに作り始めたと言う言葉に更に親近感を感じてしまう。こちらもカメラを持つ手に力が入り、インタビューだというのに何かファインダーに写った画のことばかりを考えてしまい、オッといけない何やってんだろうというトホホ感で逆に力が抜け、抜けたところで、「夜を賭けての」の中心をなす演劇と映画の出会いについての金監督の熱い語りが始まる。このままでは何のために来たんだとカメラを人物の顔に神経を集中する。おやっ、口元が柔らかいのに目が笑っていない。あれっ、今度は目が笑ってる。あれっ、目の色が変わった・・・語っている内容もさることながら、もちろん役者をやっておられるからかもしれないが顔の変化にとにかく引き込まれる。カメラが撮らされている感覚。その一方で、演劇的虚構の芝居と映画のリアリズムを融合させる事をやってみたかった、演劇人と映画との出会いを作りたかったという金監督の好奇心にこちらも刺激されまくる。表情と内容の波状攻撃。もうこうなってしまってはカメラで金監督の顔を呆けたように撮るしかなく、この作品は在日コリア1世の想いを今の世代に語りたかったという結びの言葉を聞いたときに、猫の目のように変わる表情と熱い想いの一本気さに混乱状態をきたし、撮り終わって始まった静かな金監督の雑談に、さっきのカオスはいったい何だったのだろうという思いにとらわれてしまった。

「夜を賭けて」を観た後の不思議な感覚は、金監督自身が持っている作用、反作用から来ていると撮ったテープを編集しながら今更ながらに思う。

追伸:金監督からカメラの回っていないところで聞いた済州島での四三事件など、まだまだ私のように、近くて遠いコリアのことを余り知らない日本人のためにも、金監督に、日本映画監督協会のHPに文章を寄せていただければと思っています。                                     

                                         石岡正人

 

DSC00245.JPGのサムネール画像 

 

 

 

2002年度日本映画監督協会新人賞

受賞者のことば

 

    無念の魂「恨(ハン)」を解くことができたら

                        金  守珍

 

ほんとうに夢のようです。まさか自分が映画を監督し、しかも名誉ある映画監督協会の新人賞を頂けるなんて・・・。

今は、映画「夜を賭けて」に関わった全ての皆さんと、私を新人監督として認めてくださった選考委員の皆様への感謝の気持ちで一杯です。

資金も配給のメドもたたないまま「撮りたい!」「撮らなければ」「何が何でも撮るぞ!」と後先考えずに始めた素人考えの映画作りでしたから、トラブルのオンパレードは勿論のことで、途中何度も流産しかけました。それにもかかわらず、この作品がこうして日の目を見ることができたのは奇跡に近いと思っています。きっと「映画の神様」が力を貸してくれたに違いありません。

韓国に「(ハン)」という言葉があります。怨念的なニュアンスではなく、この世に心を残して思い続ける魂の言葉と解釈しています。

私達「在日」の多くの人たちは移民ではありません。望んで日本に来たわけではないのです。それならば何故・・・?

何故祖国に帰らないのか?

何故日本に帰化しないで韓国・朝鮮籍を持ち続けるのか?

何故93000名もの人たちが日本を離れ故郷でもない北朝鮮に渡って行ったのか?

何故未だに大半の在日芸能人の人達は本名を隠すのか?

何故・・・?分断の悲劇・・・?差別・・・?逆差別・・・?

日韓の現代史の中で隠され、捨てられ、忘れ去られたもの達が多く眠っています。それらを呼び覚まし、しっかりと向き合うことで、少しでも無念の魂「(ハン)」を解くことができたらと思います。真の日韓新時代を迎えるためにも、「在日」問題は避けて通れない事だと思います。

映画「夜を賭けて」は原作の半分しかやり遂げていません。後半第二部は「大村収容所」「済州島4.3事件」が背景になり、「祖国統一・ワンコリア」を夢見る純愛ストーリーです。今回の第一部が「陽」であるならば第二部は「陰」の世界を目指し、女性の視点で描きたいと思っています。「陰」と「陽」が合わさった時初めて梁石日原作・「夜を賭けて」の大車輪が回ることと思います。

この度の新人賞受賞は第二部という荒波に向けて船出するのに「勇気」という武器を頂いた思いです。日本とコリアを愛する者として、この賞に恥じないようにこれからも精進していきますので何卒よろしくお願い致します。

 

DSC00248.JPGのサムネール画像 

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