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特集

日本映画監督協会 会員名鑑

エッセー

第3回 『表現の自由』

三池崇史 「秋の都を血に染めて...」

三池崇史.jpg今、私は東映京都にて撮影を進めています。「IZO」という映画です。


世間で言うところのバイオレンス映画。映倫的には成人指定が当然と思われる血とセックスと殺戮の物語です。今日もロケ先の流れ橋で12人の男と、東映京都第4ステージで6人の裸の女を殺しました。

髪を鷲掴みにして振り回し、ブチブチ刺して血の海に沈めてしまいました。「あわせて18人・・・」 あの鬼畜、宅間でも息が切れたことでしょう。

かの麻原でも果たせなかった夢。

しかし、私は楽しみました。どうやったら痛快に殺せるかと知恵を絞り、その場のくだらない思いつきにスタッフや役者は嬉々として汗を流してくれました。そして夕食前に、ちゃっちゃと撮影を終えました。

「安全第一省エネ撮影」が最近の私のモットーです。だから、ケガをする役者などいません。

「あ~楽しかった。また呼んで下さいね」てな感じで血糊を拭い、裸の女たちは日常に帰っていきました。

「やれやれ、明日は何人殺せばいいの?」 「え~とですねぇ。サラリーマンを8人ほどと、坊主を3人ほどです」「あ、そう。お疲れさま。じゃまた明日・・・」 

独りホテルの部屋に戻り、ビールをあおる。2本目は「氷結」だ。この酒の切れ味に酔う。だからペースが上がり、2本、3本・・・。「て、風呂入って寝よ」  これが今日この頃の私の日常です。

今日この頃に限らず、ここ何年かこんな感じの暮らしです。  

実際のところ暴力シーンとは、出来上がる映像とは裏腹に相手の体とプライドを尊重し合い、持てる身体的能力ギリギリのところで営む愛の行為なのです。その瞬間を逃すまいとスタッフは緊張し、より痛く、より醜くとアングルを絞り込み、明かりを探るのです。

不思議なことに、愛を語り合うシーンより、それが壊れる瞬間を捉えることに、多くの映画人は燃えるようです。破壊を好むのです。

あ、ちなみに「IZO」っていう映画の主役は中山一也です。知ってますか?

20年ぐらい前に高橋三千綱を刺し、松竹に突っ込み、自らの腹を切った男。にもかかわらず、どっこい生きて役者を続けてきた男。いや、不器用な彼にはそれしか道が無かったのかも知れません。

48歳にして初の主演映画。誰が彼の生き方を否定できようか。ワケも解らず参加してくれる超豪華な共演者たちに支えられ、間もなくクランクアップを迎えようとしています。ね、暴力映画も捨てたもんじゃないでしょ。でもまた叩かれるんだろな。映倫やらなにやらの人たちのリアクションを考えるとウンザリします。

それでもってまた問いかけられる、「あなたはなぜ暴力を生き生きと描くのですか?」って。

「違うんだよ。これは愛なんだよ」



三池崇史(みいけ たかし)


1960年生まれ、大阪府出身。

横浜放送専門学校在学中から今村昌平監督の現場などに就く。91年OV作品『突風!ミニパト隊 アイキャッチ・ジャンクション』で監督デビュー。95『新宿黒社会』で劇場映画デビュー。主な映画作品に97『岸和田少年愚連隊 血縁純情編』『アンドロメディア』98『中国の鳥人』99『DEAD OR ALIVE 犯罪者』00『オーディション』01『殺し屋1』『カタクリ屋の幸福』02『荒ぶる魂たち』『新・仁義の墓場』03「牛頭」。04「着信アリ」「ゼブラーマン」が公開待機中。