このページの先頭です


特集

日本映画監督協会 会員名鑑

エッセー

第5回 『映画青年/少女』

吉村元希

吉村元希.jpg 「私は今でも自分の一部が死んでいると感じる時がある。」
 「青春」というお題を頂いて、この文章を書き出す時にまずこう書いた。いつもなら書き出しが決まれば後はするする自然と出てくる...はずだったけれど。
今回、ココでぱったりと止まってしまった。「青春を振り返る自分」の気分を、まさに言い表している文章であると思ったのだが。そして、今度は「自分の青春っていつからいつまでだったのだろう」と、考え直した。それはきっと中学3年の時に突発的に「映画を撮る!」と言い出した時が私の青春の始まりだったのだろうと思う。今でも何故突然そう思ったのか自分でも謎である。その後、本当に自分が監督するに3年くらい掛かるわけだが、そのころは「映画」イコール「人生」であると本気で思っていた。が、それを今思い出そうとしたとき、苦い思い出が多すぎて、こんな私がこの先も生きていって良いのかと暗澹たる気分になってきた。そして、そもそも青春といわれる時期を私は思い出したくなかったのだと気付く。しかし、こういう機会を頂き、思い出したくない物を振り返るのには、きっと何か意味があるのであろう。

 丁度、今年に入ってから昔自分が関わっていた映画を見る機会が多かった。そこには若い時の自分の姿が映っていたり、名前が出ていたりした。自分がとった8ミリ映画も見直した。不思議な気分だった。 そう、良くも悪くも、私は確かにそこにいたのだ。 それは幽霊になった自分と生きている自分が対峙しているかのようだった。が、どっちが幽霊でどっちが生きている自分なのかが、よく分からない。

 今の私が映画を撮ったら、私の中で分裂している2つのわたしは統合されるだろうか。 出来ることなら、私の中の幽霊を揺り起こして生き返らせてみたいと思う。今でも私は「今年こそは映画を撮る」と毎年年頭に誓っている。 生活に追われ、仕事に追われ、溺れそうになりながら、それでも「いつかは映画を撮る」と思えば、生きていける。にもかかわらず実現されない日々。 本当は、そんな自分が情けなく惨めで嫌気が差している。 だったらさっさとやればいいのに。あがき続ける「私」という複雑な個体。

 そう、私の青春はまだ終わっていない。


吉村元希(よしむら げんき)


東京都出身

85成城大学文芸学部卒。高校時代より8mmフイルムにて自主映画を監督。79「ちいこの遠足」80「凍りついた翼で」等。(映)82「女子大生の下半身・な~んも知らん親」 (賞)80ぴあフィルムフェスティバルに「放課後」(8mm作品)入選。