第5回 『映画青年/少女』
風間志織 「始まりは、映画館の暗闇からだった。」
あの頃、わたしは汚れた制服に身を包んだ中学生だった。自分のいる世界が嫌いで、 はやく、はやく、遠くに行きたかった。もっともっととおくへ。
映画館は、そんなチビッ子のわたしにっとて、最高の避難所だった。スクリーンに
映し出される、歌を歌いながら暴力をふるうひと、貧乏で犯罪を犯すひと、なんだかよ く わからないことで死ぬほど苦しんでいる大金持ちのひと、うんこを食べるひと、etc・・・
映画は、闇の中でじっと息をひそめているわたしを、ここじゃないどこかへ確実に 連 れて行ってくれた。
そのどこかって、なんなんだろう? と、改めて考えてみる。それはきっと自由という場所、世界観なんだと思う。
そこには、なんにもないけど、なんでもある。
それから程なく、8ミリカメラをぶんぶん振り回して、映画みたいなものをつくり は じめた。なんだかわからない、不安で、確固たる感情が、映画をつくりたいと切望した。
自由ヲ探セ。ワタシタチハ、自由ニナレルノカ? コチコチのフジユウなオンナノコは、カメラを振り回しながら、窮屈で窮屈で仕方が なかったじぶんのせかいを解放しようとしてたんだな、と、おばさんのわたしは、少 女 の頃のわたしについて、考察する。
フジユウなオンナノコは、くるくる回って、空回りする。
青春は苦い。
あの頃には二度と戻りたくないが、もしもあの頃の、無闇に必死で残酷だったわた し に会ったなら、よしよしと、頭ぐらい撫でてやってもいい。もっとも、カノジョは、そ んなことは、鼻で笑って受け付けないだろうけど。
「映画に規則があるとすれば、ただひとつ。それは、裏切ること。」
あの頃見たゴダール映画のセリフ。
心に刻まれて、離れない。
今でも、ここに立ち返り、はっとしたりする。
もっともっととおくへいくこと。
まだ、地道に飽きずにやってます。
でも、ゆっくりゆっくりね。

風間志織(かざま しおり)
1966年埼玉県出身 高校1年生の頃より、友達をたぶらかして、映画を作り始める。1983年PFF入選、スカラシップ受賞。 作品歴 『冬の河童』(1994)、『火星のカノン』(2001)、等。最新作は、『せかいのおわり』(2004)。今年中に、公開に漕ぎ着けるか?!