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特集

日本映画監督協会 会員名鑑

エッセー

第9回 『カット』

工藤雅典 「不確かな線」

工藤雅典.jpg 日活に入社し助監督をおよそ10年つとめた。実に、色々なタイプの監督についた。


 カチンコの頃の日課は、朝一番に監督の台本をあずかり、そこに書かれているカット割を自分の台本に写す。

現場は、そのカット割通りに流れるように進んでいく。

 一方で、台本に何も書いていない監督、台本を現場に持って来ない監督もいた。そんな、監督の現場は時間がかかる、混乱も起きる。しかし、私はどちらかというとそんな監督たちの現場が好きだった。


 お恥ずかしい話だが、私は監督になり立ての頃、カット割が恐かった。現場で、シーンをどう撮ってよいか分からず立ち往生し、撮影がストップすることもしばしば。そんな自分の姿を夢に見て、夜中にうなされ、飛び起きたこともあった。
撮影の前夜は、使いものになるかどうか分からないような線を、台本に引いては消しているうちに夜が明けて、結局どうしたら良いか分からぬまま、現場に向かうことになる。「そのうち、カットなんて割れるようになるさ」との先輩スタッフの言葉に励まされ、同時に落ち込んだ。


 それから、数年。下手なカット割と格闘し、撮影前は眠れない夜を過ごし続けていた。そんなある日、カット割が間に合わず、ノーコンテで迎えた現場があった。その時、その場で妙にすらすらカット割ができる自分に気がついた。赤ん坊が、ある日突然に言葉を話し始めるように、カット割もある日突然できるようになるものなのかもしれない。


 ただし、言葉を話すことと面白い物語を語ることは全く別の次元だ。 カット割に恐怖感もなくなり、眠れない夜からも解放された。しかし、自分のカット割がそのシーンに対してベストなのかは極めておぼつかない。また、事前のカット割にとらわれ過ぎると、俳優の自発的な芝居を台無しにしてしまう。


 今は、事前のカット割を一旦忘れ、まず現場で芝居を見るようなこともしている。計算され尽くした撮影プランと、俳優の自由な演技を引き出す臨機応変さ。そんな縦横無尽のカット割を駆使してシーンを撮る、そんな日を夢見て、今日も台本に不確かな線を引いたり、消したりしている。



工藤 雅典(くどう まさのり)


58・7・6生
北海道 83法政大学法学部卒。にっかつ入社。にっかつ撮影所で助監督となり、91(T)「世にも奇妙な物語~ボタン」で監督。
(V)95「女教師2」「ラブホテルの夜~ツキのない夜」「女教師3」「女教師4」(映)99「人妻発情期 不倫まみれ」00「ハイヒールの女赤い欲情」01「和服の熟女 三十路のさかり」02「家庭教師 不倫の代償」05「寝とられた人妻・夕樹舞子 私に股がして !」4月2日よりネットシネマ「あなたがそこにいてほしい」配信開始 他