
渡邊孝好 オッサンの「10年」?
「俺、あんたと一生つきあうことに決めた!どんなにしょうもないと思うても、どんなにみすぼらしいことになったとしても・・」とガキの頃に一方的に男の約束を契ってしまったので、今もずっと義理欠くことなく一方的に約束を守り続け、つき合い続けているのである。このオッサン、ソロアルバムを40枚ほど出しているし、他にもいろいろあったりするから、この男の契りを持続するのも結構しんどいのである。けど・・スマン!実は懺悔告白すると、一枚だけ義理を欠いている。映画のサントラ、ジム・ジャームッシュの「Dead Man」というやつである。これは買わなかった。映画はすぐに見た。ジャームッシュは嫌いじゃなかったし、ジョニー・デップも贔屓の俳優だったし、でもサントラは買わなかった。オイラのオッサンの音楽じゃなかった・・映画の音だった。このオッサンは案外映画に関わりがある。そもそもの出会いは映画だった。「いちご白書」の中で2曲ほど使われていた。曲はめっちゃカッコ良かったが、映画での使われ方がいまいちよく分からなかった。それより映画のラストで学生たちが歌ったジョン・レノンのGive piece a chance にすっかりはまってしまった。映画の中で歌われる歌が、心に残ったのだ。だけど、ユーミンの「いちご白書をもう一度」が世間でヒットした瞬間に映画への思い入れがいっぺんに消えた。ユーミンよりもバンバンが歌ったのを聞いて反吐が出たのだ。残ったのはオッサンのソロアルバムだ。古い思い出である。「小さな恋のメロディ」ではグループアルバムの曲が使われている。これは死ぬほど見た。
ニールのオッサンは自分で「Journey Through The Past」という映画を作っているが、ワーナーが出来を見て手をひいたとかで公開されなかった。幻の映画である。いま、すごく見たいと思う。どうにかならないのだろうか?・・ある時しばらくご無沙汰だななどと思った頃にある映画を見ていたら、ちょい役の通りすがりのトラック運転手がオッサンだったので、思わず席で転けた。そういえばその監督のジョナサン・デミの「フィラデルフィア」ではエンディングだったかオープニングの曲を歌っていた。これは名曲だった。主題歌と言われたスプリングスティーンの曲よりずっと良かった。それからしばらくしてジャームッシュがオッサンのツアードキュメント映画の「Year Of The Horse」を作って、これは立派に渋谷で公開されたので、その時は嬉しかったのだけれど、ジャームッシュに嫉妬した。最近になってオッサンは再び監督したとかで、グリーンデイルという物語になったアルバムのツアー内容を映画にしていたものらしいのだが、実はこれも見逃してしまった。二度目の不義理である。だけど、そのコンサートにはきちんと出掛けたのだから許して欲しい。
ところで、「10年」というお題をいただいて、なんでこんなにニール・ヤングの話をしているかと言うと、最初に思い浮かんだのがDecade(10年間)という言葉で、オッサンのずっと昔のベストアルバムDecadeというタイトルだったのだ。3枚組のレコードで購入するのにあんなに経済的な打撃を与えてくれた代物は珍しかった。こんな迷惑が強い記憶になってしまう。映画もしかり、か・・ちなみに「Dead Man」を録音した年が1995年である。この録音は、送られてきたラッシュフィルムをスタジオの倉庫であちらこちらに映写しながら数日間で即興で演奏して「気に入ったところを使ってくれ」と一本のテープにして渡したという話だ。ちょっと乱暴でいい話である。他にジャームッシュといえば、トム・ウェイツ旦那となるのだが、これもまた契りはないが、大のお気に入りである。映画の趣向は違うがミュージシャンの好みは同じようだ。
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渡邊 孝好(わたなべ たかよし)
5・4・10生 京都市
74愛知県東海高校卒。77神田美学校で鈴木清順監督に師事する。(映)89「君は僕をスキになる」で監督。
(映)94「居酒屋ゆうれい」でアカデミー優秀監督賞等各映画賞を受賞。最近作に97「香港大夜総会」98「ショムニ」(T)00「喪服のランデヴー」等がある。
最新作「ヒナゴン Dear HINAGON」は7月下旬よりシアター・イメージフォーラムにて公開。
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