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特集

日本映画監督協会 会員名鑑

エッセー

第10回 『10年』

天願大介 「十年」

天願大介.jpgのサムネール画像仮に人生が八十まであると考える。その中の十年は二時間の映画に換算すると十五分だ。六十までなら二十分。長いか短いか。


十年前、僕はある福祉施設を追ったドキュメンタリーの撮影を続けながら、短いドラマを量産していた。

前年から撮っているドキュメンタリーは一向に終わりが見えず、ひたすら苦しい。ドラマはジャンルも役者も場所もすべて違うものを十二本撮る約束で、とにかく苦しい。抱えている映画の企画は例によって前へ進まず、毎日やたら忙しいのにちっとも儲からない。

じりじり経済的に追いつめられ、ドラマの残りを台湾で撮ることを決意し、翌年から台湾の北から南まで恐ろしい撮影を強行することになるのである。

しかし不安や焦りは特に感じてはいなかった。滅多に撮らないし、撮ったら借金が更に増えるという性質の映画監督の家に育ったので、そんなものだと思っていたのである。

この世界に入ってすぐ、ある雑誌の記事を読んで映画にしようと思った。車椅子の障害者が古武術を稽古しているという小さな記事だ。どこへ持ち込んでも理解してくれる人はいなかった。障害者の話というだけで断られたこともある。でもいくら無理だと言われても、やりたいのだから仕方ない。育ちが悪いのである。

結局「AIKI」を公開するまで十年かかった。ちなみにキャメラマンは台湾でドラマを撮ったときの相方、李以須。公開までの十年、それはもういろんなことがあったが、映画が完成すれば全部OKだ。
ところで「AIKI」は日活九十周年記念作品になった。実はその十年前、八十周年作品は今村昌平が撮るはずだった。しかしクランクイン直前に日活が倒れてしまい幻の作品となる。脚本の一部は僕が書いていて、それが初めてオヤジとした仕事だ。

十年は長いか短いか。長い。しかし、それが映画なら十年かけて遊んでも悔いはない。育ちの悪い僕の答えである。



天願 大介(てんがん だいすけ)


'59年東京生まれ。'91「妹と油揚げ」がぴあフィルムフェスティバル審査員特別賞を受賞。以後、監督、脚本、ドキュメンタリー演出と幅広く活躍。監督作品に「アジアンビート/アイラブニッポン」('91)「無敵のハンディキャップ」('93)「AIKI」('92)など