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特集

日本映画監督協会 会員名鑑

エッセー

第13回 エッセー『出る・撮る』

石川 均 「安物の時計」

石川均.jpg高校の時スライド(!)映画の助演&監督をやったがこれは自薦だし絵が動かないのでダメだ。自慢すべきは学生時代プラプラしてたらアンタかっこいいからボクの映画に出てくれとスカウトされたこと。
野村クンという自主映画の人だった(野村元気か!)。初主演。不良で強くてカッコイイ役を演じたので以来ボクは皆から不良で強くてカッコイイと思われた。気分が悪いことではないので実生活もみんなのイメージ通りに生きた。そうしてるとホントに不良で強くカッコよく(?!)なるもので、いや実は違って自分が実はケンカが弱いと四十過ぎて気づいたが。ええと何を書こうか。その頃(十九才)私は決してマジメではなかったがストイックなところがありひとりではジョンコルトレーンを聴いていた。でも皆のイメージでは矢沢永吉だったので永ちゃんも好きだからよく聴いた。ゴールドラッシュ以前なら全曲歌える。十八番は「安物の時計」で、スナックのバーテンのバイトしてたのだが、客に「チーフもなんか歌えや」と言われるとそれをよく歌ったものだ。店にはYOKOさんという美人ホステスがいて「チョワヨー」という言葉を教えてもらった。惚れたのだが旦那様が塀の中で待機してるというのでビビッた。男にとって一番大事なものは何かとYOKOさんに聞いたら、それは「力」だと教えてくれた。ケンカに強いことかと聞いたら、バカね、と言われた。バーテン業はバイトながらチーフと呼ばれるくらいで時給はよく、中古だがカローラスプリンターを買いワインレッドに塗装しタランチュラという太くてちっちゃいハンドル付けタイヤも太くして、普通に乗っててもお巡りさんに停められるという感じで駐車場は彼女と自分のとことふたつ借りたりして元気だった。でも肝心のエンジン改造までは金はまわらず、というかそこはストイックに自分で撮る自主映画の製作費に残りは使った。はじめての八ミリ映画監督作はアミちゃんという長野の暴走族の女性リーダーに主演してもらったが「好きだよ」と言っても「ありがと」しか言わないコだった。記憶違いで「男は力」と教えてくれたのはアミちゃんだっけか。
 映画は完成せず男の主役のヒロシという奴が東横線とケンカしぶつかり死んでしまったのでそいつが映ってて動くフィルムが何コマかまだ自分の部屋に、今もあり、時折胸が痛い。で、私の撮ったものにはいつもヒロシというのが登場するんだ。・・役者としてのエッセイとか言われるとなんだか初主演作の役作りのノリで書いてしまった。すいません。
 こないだテレビで矢沢を見たがこんなノスタルジックな話など吹き飛ばす、今もなお未来に突き進む超絶現役パワーだった。見習う!


 

石川 均


本職もちろん監督だが、望月六郎監督作品「スキンレスナイト」に主演し好評を得る。嬉しいことだが、以来作中の人物と同じ性格だと長年周囲に誤解され「俺はあんな奴じゃない」と弁明してまわるのに疲れる。しかし実際その役柄が取り憑き人格の一部になってしまった感じもありこれを打開するには新たな主演作を必要としている、かも。監督最新作は「かぼちゃワイン」(近日発売)