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特集

日本映画監督協会 会員名鑑

エッセー

第14回 『映画を学ぶ/映画を教える』

平山秀幸 「映画を教える/映画を学ぶ」

平山秀幸.jpg 映画を人から学んだ事はなかったな。この世界に入って最初の現場で役に立ったのは運転免許証だけだった。映画の知識や能書きはクソの役にも立たず、トラックを運転する事だけを重宝がられて...。
 映画は頭で作るものではなく肉体でつくるものだと「教え」られた。数学なら「1+1=2」と教える事もできよう。ところが映画は「1+1=2」とは限らない世界です。1.3の場合もあれば0.8の場合もある。答えがない時もあるかもしれない。答えが一つでない世界で、誰かが誰かに何かを教えたりできるんだろうか。
 技術的な裏付けは必要でしょう。作品をより良く見せようとするための具体的な方法論もあるのでしょう。光のあて方とか画のつなぎ方とか、現場でスムーズに撮影を進めていく段取りのとり方とか...。でもそんな「テクニック」は場数を踏んでいけば自然と身に付いていくもので、そうじゃない人はそこで映画屋失格でしょうが。今、現場に入る前の映画屋予備軍に「教える事」はそんなテクニックだけなのでしょうか。

 映画を作る事の本質はどうもその先の、答えにならない部分にあるように思えてなりません。「あ、違うんだよなぁ...」、でもどこがどう違うかを言い切るには相当の度胸がいるし、正直に言うと人に教えている余裕なんぞないのです。自分のことで精一杯。先輩としての自覚がないんだな。でも「教える」という事がわからないまま、「もっと上手になりてぇなぁ」とか思ったりする我が儘だけはある。どうやら映画の世界は、一生かかって迷ったり後悔したり、錯覚しつつウロつきまわるしかない世界かよと、ため息をつきながら。
でも「えーい面倒くせぇや、映画の学校はこれまで作られてきた作品そのものの中にこそあるんだ、映画を学ぶには映画からだッ!」「だからアノ作品を見ろ、コノ作品を見ろ」と言ってしまえば、何だか評論家ぽっくて嫌だな。


平山 秀幸(ひらやま ひでゆき)


50年福岡県生まれ。日大芸術学部卒。
90年「マリアの胃袋」で監督デビュー。92年「ザ・中学教師」で日本映画監督協会新人賞受賞。以後「人間交差点 雨」「よい子と遊ぼう」「学校の怪談」「学校の怪談2」「愛を乞うひと」「学校の怪談4」「ターン」「笑う蛙」「OUT」「魔界転生」「レディ・ジョーカー」「しゃべれども しゃべれども」「やじきた道中 てれすこ」など。