
大澤豊 「映像のバリアフリーが求められている中で」
こうしたろう者たちの強い要望を受けて映画はつくられた。「ろう者をごく当たり前の存在として、在りのままの姿を描く」
言うのは簡単だが、いざシナリオに具現するとなると、おいそれとはいかない。一行のト書き、台詞の一言にも、それは偏見だ、これは差別につながるとろう者側からクレームがつく。当方には、そんな意識は毛頭ないから腹が立つ。
「なぜ、これが偏見なんだ。どうして差別用語なんだ!」
激しい応酬が数日続いたこともあった。
全編に日本語字幕を入れる時も、音声と手話を併用する場面は省いていいと思ったが、手話を解せないろう者の存在を知って納得した。
馴れない映画づくりに試行錯誤を繰り返しながら、結局のところ、ろう者と聴者が対等な立場でホンネをぶつけ合い、共同協力して創りあげる以外にないことを改めて悟った。
この一連の映画づくりを通して、ろう者たちの、音声に勝るとも劣らない「手話」という素晴らしい言語を再認識し、又、大勢のろう者のスタッフ・キャストに接する中で、われわれ聴者とは異なるろう文化の一端に触れることが出来たように思う。
シリーズ3本目の新作「アイ・ラブ・ピース」では、副音声(日本語ガイド)も並行して製作した。従来はボランティアなどの手によって、必要に応じてつくられていたようだが、本来は、プロの手で質の高いものをつくるべきである、と思ったからだ。解説の文言も、どう表現したら映像を正しくイメージしてもらえるか、盲人の人たちと一緒になって頭を捻った。
全国には映画好きの盲人が沢山いる。
テープで聞くより、映画館に行って、大勢の観客と共に感動を共有したいという。
当然の要求である。
「すべての国民は、等しく文化を享受する権利を有する」
を謳い文句に終わらせないために、障害者も健常者も共に楽しめる映画をめざして、まだまだやれることがありそうだ。
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大澤豊(おおさわ ゆたか)
35・11・15生 群馬県 58群馬大学卒。美術監督久保一雄氏を頼り映画界へ。主に山本薩夫、今井正、勅使河原宏監督に学ぶ。81こぶしプロダクション設立。78(映)「ガキ大将行進曲」で監督。(映)85「ボクちゃんの戦場」90「遥かなる甲子園」96「GAMA-月桃の花」99「アイ・ラヴ・ユー」など。(賞)82第3回藤本賞奨励賞。97、96年度日本映画ペンクラブ賞。
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