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特集

日本映画監督協会 会員名鑑

こんな映画祭に行ってきました

こんな映画祭に行ってきました〟最終回 

この文章は監督協会会報「映画監督」2015年7月号に掲載されたものです。

座談会・監督にとっての映画祭って!?
出席者 金田敬 佐々部清 高瀬将嗣 高原秀和 浜野佐知 森川圭 
 
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シリーズ〝こんな映画祭に行ってきました〟の最終回ということで、そもそも映画祭って監督にとって何なんだろう...そんな座談会を企画してみました。出席者はこのシリーズを起ち上げた浜野さん、今年の「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」のオフシアターコンペティション部門でグランプリを獲得した森川さん、ここ10年くらい毎年3~つは地方の小さな映画祭に参加している佐々部、さらにチャチャ入れ要員として、広報委員会の金田編集長、高原さん、高瀬さんにも参加していただきました。
(文責・佐々部清)

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浜野 佐知
 浜野「私にとっての映画祭は、上映される自分の作品がリアルタイムで観客たちの反応を感じられるってことかな、映画監督になってよかったなぁって思える瞬間なんですね。三年前から始まったこの『シリーズ こんな映画祭に行ってきました』ですけど、改めて思う事は世界には実にいろいろな映画祭があって、スタイルもスケールも違う事を感じるんですね。カンヌやヴェネチアみたいな大きなのからマイノリティな人達を扱った小さな映画祭まで。で、こちらは大きな映画祭が大嫌いな佐々部さん(笑)」
佐々部「〝国際〟って付く映画祭は嫌いです。僕は地域の草の根的映画祭を支援したいっていつも思ってます」
浜野「森川さんはどんな映画祭に行ったんですか?」
森川「僕は映画祭なんてものには縁がないって思ってたんですね。ところが、ノミネートされたのも〝ゆうばり〟が初めてだったんですが、そこでグランプリを受賞した事はホントに意外でした。で、最高齢での受賞って言われて...」
浜野「最高齢?」
森川「あ、これまでの受賞者で、最年長ってことです(笑)」
浜野「私は〝ゆうばり〟は行ったことがないけど、佐々部さんは?」
佐々部「〝ゆうばり〟って何もない町が、映画祭の期間は映画一色になるのがいいです。森川さんのグランプリはインディーズの作品の部門だと思いますが、メジャーの新作招待もあって...」
森川「そうです」
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佐々部 清
佐々部「映画祭って2つあると思うんです。1つは最初に浜野さんが言った、地域の映画ファンとの交流みたいなもの。で、もう1つは、今の森川さんみたいに、まさに新人監督が世に出るための、監督自身のプロモーションかな。まあ、新人監督ばかりじゃなくて、そればっかり狙ってる監督さんもいますけど...。で、僕が好きなのは、前者の映画ファンに寄り添った映画祭。賞が絡む世界的な映画祭って何だか気持ち悪いでしょ、日本映画は毎回同じ監督さんの作品だし...」
浜野「裏もあれば、政治的な駆け引きもいっぱいあるでしょうしね」
佐々部「でも、森川さんが今回〝ゆうばり〟でグランプリを獲ったってことは、森川圭って監督がこれからもっと世に出て行くためには意味のあったことだと思います」
浜野「少し話しは変わりますが、私はたくさんの映画祭に行っていて、どうやったらそんなに映画祭に行けるんですか?ってよく聞かれるんだけど、それは私の作品は自主制作で私が著作権を持っているから。みんな、どんどん出品したいんだけど、監督に著作権がないってことで制約があるみたいなんですよね」
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高原 秀和
高原「ありますよ! 今公開している『がむしゃら』、海外の映画祭に出そうよって言ったんだけど、セールス的に難しそうだから無理しないって。リスク回避をしたいのが映画会社の本音だと思う」
佐々部「森川さんのグランプリ作『メイクルーム』は自分の意志での出品ですか?」
森川「ちなみに自分の作品は2日間で撮った予算30万ですから...。プロデューサーの劇団で作った映画なので役者もタダだし、とにかく、ダメで元々、損は何もしないのでいろいろなところに出品しました」
浜野「でも、映画祭ってエントリーしてもダメなときありますよね」
森川「ええ、もう、みんなダメだったんですけど(笑)、〝ゆうばり〟だけ連絡が来て...。だからもう一年くらいずっと出し続けてたんです」
佐々部「で、決まった〝ゆうばり〟の招待は監督と主演女優とかですか?」
森川「招待は監督だけです。旅費と宿泊費」
浜野「私は五大陸全部の映画祭に行ってますけど、映画祭なんて行けば行くほど貧乏になりますから(笑)。特に海外だと、私の作品は35㎜のフィルムなのでその運送費だけで片道10万円くらい掛かる、戻しは映画祭が払ってくれるけど送るのはこちら持ち。あと、行けば泊まる所とご飯は食べさせてくれるけど、飛行機代も自腹」
 佐々部「えっ、そうなの!?」
浜野「そうですよ、佐々部さんみたいにビジネスでご招待なんてあり得ませんよ!」
一同「はははっ(笑)」
佐々部「はあ、そうなんだぁ...、旅費も...?」
浜野「出ないですねぇ、アジアとか近距離だと出るところもありますけど、アメリカやヨーロッパなんかはほとんど出ないですね」
 高原「(森川さんに・・・)イタリアはどうだったの?」
森川「ああ、僕だけは...」
浜野「イタリア、どこに行ったの?」
森川「ウーディネってとこです」
浜野「さっきと同じ作品?」
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森川 圭
森川「そうです。で、僕と一緒に女優も行くことになったんですが、旅費が掛かるんですよ、何十万円も。で、その女優がスポンサーの指定したコスチュームを着て登壇することを条件に、そこの社長さんが旅費を出してくれることになったんです」
浜野「じゃ、〝ゆうばり〟とその、ウーディネ? それもやっぱりインディペンデントの映画祭?」
森川「そうです、小さな町の映画祭です。けど、劇場はオペラハウスみたいな劇場で1200席くらいあるんです。もうビックリで!」
浜野「1200!?  凄いねぇ。で、映画祭自体は?」
森川「〝ゆうばり〟がアマチュア運営だとすると、プロの映画祭って感じでした。プログラムもそうですが、アテンドなどすべてが完璧で...」
浜野「字幕は英語字幕?」
森川「はい。〝ゆうばり〟で英語字幕版を上映していましたから」
浜野「字幕もお金掛かるでしょ?」
森川「いえいえ、英語が出来る知り合いに頼んで、自分達で作って...。だからお金は掛かってないです。ただ、プロが作ってないので、向こうに持っていくときに修正を入れました」
高原「お客さんは? 入ったの?」
森川「はい、ソウルドアウト」
 高原「日本の全動員より多いじゃん!(笑)」
森川「(笑いながら)そうなんですよ! 日本は全然ダメなんですよ」
一同「はははっ!(大笑い)」
佐々部「この座談会やるのに、昨日、ザッとこれまで行った映画祭を書き抜いてみたんです。20くらい行ってるんですが、見事に○○国際映画祭って、コンペだの賞だのって映画祭に行ってない。行政がちょこっと援助して、あとはその地域の映画好きがボランティアで協賛金を集めて開催している、映画ファン同士の交流がテーマの映画祭でした」
浜野「そっちのほうがいいですよね。コンペって絡むとその年の作品じゃないとダメってことになるでしょ」
佐々部「気持ち悪いですね、あのワールドプレミアとかアジアプレミアとか...。これはもう映画ファンが相手じゃなくて、自分達の映画祭のプライド勝負みたいな。10年くらい前に故郷の下関で『カーテンコール』って作品を作ったんですね。で、東京国際映画祭のある視点だったか、そんな部門のコンペに入ったんです。で、下関の映画祭でお披露目をしたくて、それはエキストラなんかに協力してくれた人達にも観てもらいたくて。その映画祭が東京国際の2週間前だったんだけど、ダメだって言うんですよ、国内プレミアとかって。じゃあ、東京国際を断ればいいじゃんって。監督協会は共催みたいな感じでやってるけど、僕はまったく関心のない映画祭になっちゃった」
浜野「あいち国際女性映画祭ともう無くなっちゃったけど東京国際女性映画祭もあいちが9月、東京が10月でどちらかにしか出せない。日本に二つしかない女性映画祭なんだから、女性監督を応援するとか言うならもう少し融通きかせてよっ!と思いますね」
佐々部「世界4大映画祭って言っても、カンヌもヴェネチアも毎回、特定の日本人監督しか知らないのかなって選考ですよね。だったら、その監督たちにその映画祭は任せておけばいいんじゃないかって。逆に、この国の地方都市や映画をスクリーンで観ることも出来ない地域の人達への草の根的映画祭を応援したいなぁと思うんです」
 浜野「私が大好きな映画祭に、〝クィア映画祭〟とか?LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)映画祭〟っていうのがあって、セクシュアルマイノリティの人達が中心になってやっている映画祭なんですけど、普段、差別されて生きにくい思いをしている人達が、ホントに生き生きとその映画祭の中だけはいられるんですよ。上映される作品もレズビアンやゲイがテーマの作品が多いんですが、映画と一緒になって拍手したり、笑ったり、そういう映画の観方っていいじゃないですか」
 一同「(頷いて)...」
浜野「映画って作ってるときは1つのところに向かっているんだけど、完成して公開されて、ひとり歩きを始めるとばらける感じがするじゃないですか。でもね、喩えると、映画祭って港じゃないかな、って。映画が船だとすると、世界中の港、港に立ち寄って、たくさんの人達に観てもらって、作品も監督である自分自身も新しい力を貰える気がするんですよ」
高原「......ウマい!!!!」
佐々部「何だか、もう締めが出来ちゃった!終わる?」
浜野「何それぇ!(笑)」
佐々部「あと、高瀬さんが『アクション・アワード』をやりましたよね」
高瀬「ええ」
佐々部「映画祭と銘打ってはいませんが映画祭の範疇かもしれない...。最後に階段落ちなんかも見せてもらって楽しいお祭りでした。アワードというからには賞はあったのですが、ベストは決めないとか、ある種の映画祭だったように思うんですが...」
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高瀬 将嗣
高瀬「映画の中のアクションを顕彰するってことがテーマです。今年が3回目だったんですけど、予算がなく原資も乏しいのが実情で、受賞者、特に俳優関係を呼べる条件が厳しかったですね。また、それぞれの製作会社や事務所の立場もあって...。シーンって言うか、映像を対象にした賞なので、そのシーンは会場で上映したいのですが、中々許可が出ない...。これが一番のネックでした」
一同「(聞き入る)...」
高瀬「俳優さんが一番大変だったというか...。きっと事務所だと思うのですが、受賞を知らせて招待しようといたのですが、フンッて、木で鼻を括られました」
高原「ええ、どうして?」
 高瀬「『最優秀をくれなきゃ行かない』『他の受賞者の格が劣るので行かない』という事があまりに多いので、次回は順位を決めないお祭りに徹しようかと思っています。先ほどの上映の件でも製作会社や配給会社がもっと協力して欲しいのですが...課題は山積みです」
佐々部「製作会社といえば、自分のある作品では上映はフィルムのみでブルーレイはダメと言われたんです。小さな映画祭では映写機からすべての用意は出来ない、渋々作品を諦めました。僕が直接映画会社に交渉したんですけど、会社の規約だとかで...。自分に著作権があればなぁって...。やっぱり小さな陽の当たらない映画祭を応援したいなぁ」

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森川「先ほど出た映画祭出品の話なんですけど、配給会社がネックになってしまうって。本栖湖で行われる『湖畔の映画祭』という企画に自作を出そうとしたところ、配給会社からメリットがない、利益が出ないからダメって却下されたんです。たった6万円にしかならないって」
高原「1回上映で6万円って御の字だよ!」
一同「はははっ!(大笑い)」
森川「結果、出品出来る事になって感謝しています」
浜野「一人でも多くの人にスクリーンで観てもらえることが一番なんだから、配給宣伝の一環として考えればなんの問題もないのにね。それに、そこで出会った人たちとはそれっきりじゃない」
 佐々部「そうなんですよ」
浜野「それが楽しくて、また来年新作持って来ようって思っちゃう!」
 高原「浜野さん、頑張るね...俺だったら死んじゃう」
一同「はははっ!(大笑い)」
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金田 敬
 金田「僕はたった1つしか映画祭って行ったことないけど、忘れちゃった。けど、映画祭って行けば、DVDとかにいっぱい王冠みたいの載っけて箔が付くじゃないですか、だったらいっぱい行けばいいのにって単純に思う。その行き方が分からないけど」
浜野「私の『百合祭』って映画は43カ国58都市の映画祭で上映されたんだけど、映画祭には違う映画祭のディレクターが必ず来ているから、その人が気にいってくれて声がかかったり、一度参加した映画祭から新作の情報を求められたりして、広がっていったりすることが多いですね」
佐々部「プレミア、プレミアって、言われないんだ? あ、国際って付かない小さな映画祭ってことか」
 金田「ちょっと聞きたいんだけど、国内に映画祭っていくつあるんだろう?」
浜野「200!」
佐々部「国内だけで、浜野さん言うところの〝港〟は200あるってことで、自分の〝船〟で、その〝港〟を訪ねましょう」
高原「映画祭は港、映画は船...今日はこれだね!」
 一同「はははッ!(笑)」

end
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注)アクションアワード=日本俳優連合・アクション部会が主宰する各年度の活劇映画の祭典。


(会報編集部より)
2012年9月号からスタートした「こんな映画祭に行ってきました」ですが、3年間で17本のご寄稿を協会員の皆さまからいただきました。珍道中あり、志あり、映画祭を身近に感じていただけたと思います。ご寄稿いただいた皆さま、本当にありがとうございました!