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特集

日本映画監督協会 会員名鑑

こんな映画祭に行ってきました

アジアフォーカス・福岡国際映画祭       竹林 紀雄

(この文章は、監督協会会報「映画監督」2014年12月号に掲載されたものです。)

150213ajia.jpg                               筆者と梁木靖弘ディレクター
  

毎年、福岡市でアジア映画に特化した映画祭が開催されている。今年で24回目を迎えたアジアフォーカス・福岡国際映画祭(2014年9月12日~9月21日)である。私自身、9年前からほぼ毎年、この映画祭から招かれる訳ではなく、"自前"で足を運んでいる。親しくさせていただいている映画批評家で日本大学大学院教授の村山匡一郎さんに誘われたことがキッカケだが、東京から福岡まで通う最大の理由は、ここで上映される映画が本当に面白いからに他ならない。もう一つの理由は、玄界灘の海の幸、水炊き、もつ焼き、極めつけは臭くて美味い本物の豚骨ラーメン...、なんといっても博多には超絶の旨かもんが多いからである。
今年は、この映画祭に文教大学竹林ゼミナールの夏季合宿として、ゼミ生20名を引率し、朝から夜までアジア映画三昧の三日間を過ごしたが、学生たちと深夜まで博多グルメを堪能したことは言うまでもない。
このアジアフォーカス福岡国際映画祭に限らず、福岡市では福岡アジア美術トリエンナーレという国際美術展も開催されている。また、福岡アジア美術館などもあり、福岡市はアジアの各国、地域との国際文化交流が盛んである。なぜ、福岡市はアジアなのか。古代からアジア文化の玄関口であったという地政学的な理由もあるが、おそらくは、戦後、マッカーサーによって解散させられた玄洋社の大アジア主義思想の流れを、良い意味でくんでいるのだろう。まあ、中洲に並ぶ屋台を見れば、アジア文化がこの地に息づいていることを理屈抜きに実感できる。
さて、今年、アジアフォーカス・福岡国際映画祭に公式招待された作品は15本。そのなかで11本を鑑賞したが、それぞれが面白く個性的であった。なかでも、面白かったのは、ドキュメンタリー的手法で視覚障害者たちの葛藤を描いた中国の『ブラインド・マッサージ』(監督:ロウ・イエ)だ。繊細かつ刺激的な映像表現で見事な群像劇に仕上げている。トルコの『私は彼ではない』(監督:タイフン・ピルセリムオウル)も瓜二つの他人になりすますなかで希薄となるアイデンティティーの行方をスリリングに描いた面白い作品だった。独創的だったのがイランの『予兆の森で』(監督:シャーラム・モクリ)だ。134分間、全編ワンカットという大胆な手法で、不気味な映画的世界を描きだしていた。
この映画祭で上映されるアジア映画が日本で劇場公開されることはほとんどないが、エンターテインメント性が高く日本でも大ヒットしそうな映画もあった。タイの『タイムライン』(監督:ノンスィー・ニミブット)だ。タイの若手人気俳優ジユラ・タンスィースックが主演したせつないラブストーリーは、私のゼミ生の全員の心に響いたようだ。
この映画祭でディレクターを担当されている梁木靖弘(九州大谷短期大学主任教授)さんによれば、来日したゲスト同士の交流が他の映画祭とは比較にならないほど盛んとのこと。グランプリなどの優秀作品への賞を出さないことが、来日したゲストがリラックスして滞在することにつながり、ゲストの監督同士が屋台で一献傾けるなど、親交を深めているとのことだった。そして、アジアフォーカス・福岡国際映画祭が場となって、コラボで映画を作る等、ゲストの監督たちの次の作品に発展していく場になれば嬉しいと話されていた。
今回の福岡への旅で、自分がさらに一回り大きくなったことを実感している。私の"人間"が...、ではない。"体"がである。福岡に滞在すると一泊あたり約⒈㎏太る。今回は三泊四日、しめて3㎏の体重増加となった。