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特集

日本映画監督協会 会員名鑑

こんな映画祭に行ってきました

映画祭の審査員て、何だ?──田辺・弁慶映画祭  大森一樹

(この文章は、監督協会会報「映画監督」2014年2月号に掲載されたものです)

 「映画検定」というのをご存知ですか?「キネマ旬報」が催している映画の知識の検定制度で、1級から4級まであります。試験問題は日本映画と外国映画に関する60問で、マークシートの四択が基本ですが、最上級の1級だけは数問、筆記問題があります。例えば、日本映画では、「『七人の侍』の七人の俳優の名前を全て漢字で書きなさい」とか、「市川崑監督の夫人で脚本家の名前を漢字で書き、その読み方を書きなさい」とか、「『鳴滝組』とは何か、書きなさい」といった日本映画監督協会員なら楽勝(?)で答えられるような問題です。私、08年に映画検定1級にめでたく合格しました。実は先の『鳴滝組』の問題に悪戦苦闘の末一度不合格となり、二度目にして合格したのですが。ちなみに、私以外で協会員に1級合格者はいるでしょうか?
 映画祭の話なのに、映画検定の話が長くなりましたが、昨年の11月で7回目を迎えた田辺・弁慶映画祭の売りの一つは、その映画検定1級合格者20人が、毎年コンペの審査員にあたることです。私も1級に合格した年の第2回より、特別審査員の名前をいただいて、大阪から特急で2時間という距離感もほどよく、毎年出席しています。
 地方のこの規模の映画祭はもう珍しいものではなくなっていますが、この映画祭の独自性は、やはりコンペティションにあるでしょう。全国からエントリーした新人監督による新作の中から、弁慶グランプリ、市民賞、そして映検審査員賞などが選ばれます。コンペとしての認知度はまだ高いとはいえないものの、それでも今回は90を越える応募作があったとのことですから、なかなかのもの。地元の観客はというと、名作、話題作が上映され、知名度のある俳優や監督らをゲストに招いてというのがメインではなく、初めて耳にするタイトルに見知らぬ監督、俳優ということで、私が初めて行った2回目など、開会式で上映作品の関係者全員が壇上に上がると客席はガラガラといった有様でしたが、会を重ねるにつれ、いわゆる<インディーズ映画>への市民の認知度も上がり、今回など予想以上の入り。私自身も、沖田修一、瀬田なつき、加藤行宏、今泉力哉らの若い監督、女優では山田真歩といった才能との出会いはこの映画祭から始まったものでした。
 今年のコンペ上映作品は8本。大学に勤めるようになって、学生たちの映画は随分見慣れたつもりでも、まだまだこんな映画、才能がと思わされる作品はあるものです。本年度、弁慶グランプリと市民賞を受賞した頃安祐良監督『あの娘、早くババァになればいいのに』など、副賞としてテアトル新宿で劇場公開されるので、機会があればご覧下さい。今や2時間超が当たり前となって間延びして退屈な日本映画が多い中、半分の70分でその数倍の中味の濃さと面白さは痛快です。
 映検審査員の話に戻りますが、そういうことで、映検1級合格者が毎年入れ替わりで映画祭に来るのですが、その他にも、これまで審査員をやった、さらには審査員から外れた者も自費で田辺に参集、今や年に一度の映画検定合格者の総会のようにもなっています。それはそれで有意義なのでしょうが、7年も続くといささか見飽きた顔になってしまうのも正直なところ。とはいえ、毎年恒例の夜の飲み会は、コンペ参加作品の監督、俳優たちが総出で、強烈な自己主張あり、神妙に話を聞いたりで、最後は夜明けまで。いささかのマンネリもないのですが、年毎に体力の衰え、年齢を感じずにはいられません。

140718a.jpg               弁慶映画祭シンポジウム

 と同時に──昨年は、監督協会新人賞の選考を始め、大学では卒業制作作品の学長賞の選出、そしてこの映画祭の審査員、他にも人材資格の審査など、審査される側から審査する側の年齢になったことも痛感します。一方で、毎年この時期に発表される映画誌や映画祭のベストテンなど見ながら、審査選考する者によってこんなに違うのかよとぼやきつつ、それでは審査する側として、果たして自分が適切な人物なのかとも思わないわけではありません。本映画祭の案内には、コンペの審査は「映画有識者」がするとありますが、「映画有識者」て何なのでしょう?映画検定合格者は確かにある意味では、「映画有識者」なのでしょうが、私も含めてコンペの審査をする「映画有識者」とは別なのでは、という疑問がどこか残ってしまいます。
 そんなことを考えていると、映画監督が「映画有識者」かどうかはあるにしても、映画監督が映画監督を審査する日本映画監督協会の新人賞こそは、日本で数少ない真っ当な賞ではないかという気がしてきます。映画祭のレポートのはずが思わぬ結論に至りましたが、本年も監督協会新人賞の選考委員の方々が、誇りを持って選考にあたっていただきたいと願う次第です。

140718b.jpg      弁慶映画祭表彰式