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特集

日本映画監督協会 会員名鑑

こんな映画祭に行ってきました

いつまでも続いて欲しい「あいち国際女性映画祭」  宮崎信恵

(この文章は、監督協会会報「映画監督」2013年10月号に掲載されたものです)

日本の国際女性映画祭を代表する「東京国際女性映画祭」が昨年閉幕し、今や、「あいち国際女性映画祭」のみが国内唯一の国際女性映画祭となった。
この映画祭は純粋な民間の運営による映画祭ではなく、「男女共同参画社会の実現」という愛知県の施策の中で1996年にスタートした。その後毎年開催され、18回目となる今年は世界各国の女性監督作品(女性主演映画も含む)36本を9日間に亘って上映するという、内容においても規模においても国内最大級の国際映画祭でもある。  
私は今年、新作の「世界一すてきな僕たち私たちへ」で参加したが、この映画祭に初めて参加したのは2003年。その年に完成した「風の舞」が最初。以後、ほぼ3年ごとに、つまり新作ができる度に呼んでいただいている。「常連」とまではいかないが、私にとってはなじみの深い、ありがたい映画祭でもある。だがその運営は、時代の経済状況がもろに反映し、年々厳しくなってきているように思う。以前は映画祭開催中、ゲストは目の前に名古屋城が聳える高級なシティホテルが宿泊場所で、毎日の上映終了後は主催者招待の食事会や、外国の女性監督との交流会も盛んに行われた。だが今回は、雰囲気がガラッと変わっていた。ホテルに前泊できるのは、翌日の朝10時からの上映に間に合わないゲストの場合のみ。しかも宿はビジネスホテル。午後からの上映では前泊はNG。何ともさもしい話をしているように思われるかもしれないが、かつての熱気に満ちていた映画祭からみると何とも言えない寂しい現実に、私は運営の裏事情を垣間見たように思え、胸をちくちく疼かせて、ありがたく参加させていただいた。ちなみに、観客動員数は昨年より多いとのこと。それを聞いてまずはホッと胸をなで下ろしているのだが。         
そう、ホテルなんてどこでもいい、豪華な食事もいらない。観客が少なかったら、駅前でチラシを配ってでも連れてくる。そんな思いで、私自身も今回初めて愛知県中の知人友人に作品リーフレットを郵送し、チケット購入お願いの手紙を添えた。
本来は映画祭全体の雰囲気や上映作品について書くのが筋だろうが、今回は残念ながら他の女性監督の作品は1本も観ていないし、オープニングのセレモニーにも、テーマごとのトークセッションにも、また、最後のサヨナラパーティにも参加していないので、原稿執筆という貴重な場を与えてくれた編集部には申し訳ないが映画祭のことを詳しく書くことはできない。ただ特筆すべきことは、ドラマにしろ、ドキュメンタリーにしろ、世界各国の若い女性監督の作品が数多く取り上げられているということ(それは今年に限ってのことではないのだろうが)。しかも、脚本、監督、編集を一人でこなし、中には撮影、録音までを監督自身が行い、それぞれに名だたる賞を受けている。長年下積みで苦労し、映画づくりの難しさを骨身にしみて感じている私には、ちょっと想像もでき無い話。だが、今の若い女性監督たちは、それを果敢にやってのけている。そして、多分、こうした若い女性監督たちがこれからの映画界を背負っていくのだろう。それを頼もしく思う反面、映画の世界も日々変わりつつあることを嫌でも実感させられ複雑な気持ちになる。それにしても、若い女性監督の作品が1本も観られなかったことは本当に残念。観ていたら再起不能になるほどの刺激を受けていたかもしれないけれど。
この「あいち国際女性映画祭」では、昨年度から始まったショートフィルム・コンベンションの2回目も実施された。女性監督による30分以内の作品を募集したところ海外も含めて99作品が応募したという。そのうち11作品がノミネートされ上映された。果たしてどの作品がグランプリをとったのか。グランプリには賞金20万円が与えられるという。応募した女性監督作品99本は多いのか少ないのか?それはわからないが、私にはすごい本数だと思う。きっと少人数で頑張ってつくっているものが多いのだろう。
そういえばこのショートフィルム・コンベンションがスタートする前、私は2回目に参加した「無名の人」で第1回観客賞をいただいた。明治の時代の女性の自立と知的障害児の人権擁護に生涯をかけた女性の物語であるが、資料ばかりの地味なドキュメンタリー映画で、まさか賞にあたいするとは考えてもいなかった。だから、発表のある最後の日のパーティの席は私には何とも居心地の悪い場だったのだが...そして3回目に参加した「あした天気になる?」では愛知県興行協会賞をいただいた。その愛知県興行協会賞の受賞の際に私は、「長年頑張って映画づくりをしてきた者へのご褒美と思ってありがたくいただきます」というような挨拶をし、若い女性監督たちを励ます言葉を添えた。
あれから3年たった今回の映画祭では、本当に若い女性監督たちが活躍している。さもしいことをたくさん述べたが、昨今の厳しい財政事情にもめげずに、創意工夫でもって発表の場を提供し、未来に可能性を拓かせる女性映画祭は、私だけではなく、すべての女性監督にとって、やはりとってもありがたい映画祭に違いない。
どうか、いつまでも存続しますように...